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2019年02月12日

アルバイトにノルマは違法?課されたときはどうする? ケース別に見る対処法

アルバイトのノルマ、そもそも違法?

「ノルマ」という言葉の本来の意味は、「個人に課された仕事の量」を指します。しかし日本では、「ノルマがきつい」「ノルマを達成できない」というように、「達成しなくてはならない目標」という意味で用いられることが一般的になっています。

では、そもそもアルバイトにノルマを課すのは違法なのか、どこまでがOKなのか、法律に照らし合わせながら見ていきましょう。

目標設定はOK、未達成の場合の罰金は違法

アルバイト先から、売上目標や販売数目標などを設定されることがあります。アルバイトであっても、社員と同様に目標を設定することは問題ありません。ただし、目標を達成できなかったら罰金を取られるという場合は、労働基準法16条「賠償予定の禁止」に抵触するため違法となります。

「賠償予定の禁止」とは、労働契約をする際に、契約に違反した場合の違約金の額をあらかじめ決めておくことを禁止しているものです。たとえば、契約の途中で仕事を辞めるときは罰金5万円、ノルマ未達成の場合は罰金として10万円といったペナルティは、賠償予定の禁止に違反する行為です。

したがって、これらのペナルティを設定されていても無効となるため、もしも罰金を取られていたら返還するよう求めることができます。

また、通常の業務内では明らかに達成が難しいノルマを課された場合は、パワハラにあたる可能性があります。

自腹を強要するのは法律違反

ノルマを達成できなかったときに、アルバイト先から残った分を買い取るよう強要された場合は、刑法第223条「強要罪」にあたります。買わなければクビにするといった、強制力を持った発言も違法です。

アルバイトを含む労働者は労働契約を結ぶことによって「会社の指示に従って誠実に働く」という義務を負うことになります(労働契約法第6条)。労働力を提供することが義務であり、成果を出すことは義務付けられていません。つまり、成果に対する責任を負う義務もないわけです。

そもそも売上や販売数は、販売員の仕事だけで成果が決まるわけではありません。広告宣伝や価格設定といった一連の販売戦略があって、結果が出るものです。ノルマに届かないからといって、労働者に責任を押しつけることはできないということです。

また、自腹の強要では、このほかに会計時のミスによる不足金の請求や、破損させてしまった商品の買い取りを求めるといったケースが見られます。いずれの場合も、雇用主側に管理責任があるという考えから、労働者に一方的に責任を取らせることはできません。

一方的な給与天引きは法律違反

ノルマを達成できなかったときに商品の購入を強要し、さらに一方的に給与から天引きした場合は、労働基準法24条「賃金の支払」の原則に違反します。

「賃金の支払」は、労働者に対し給与の全額を支払うことを義務付けている法律です。雇用者側が一方的に給与から天引きする行為は禁止されています。

ケース①売れ残った商品を買い取り

次に、判断に迷いがちなケースを見てみましょう。

店舗のノルマを達成できず、売れ残った商品を社員とアルバイトで買い取ろうという話になったというケースです。目標達成に向けてみんなでがんばろうというムードがあると、断りにくいと感じる場面もあるでしょう。こうしたケースにはどのように対応すべきでしょうか。

対処法

社員でもアルバイトでも、商品の買い取りを強要された場合は労働基準法に違反するため、指示や命令に従う必要はありません。商品代金を給与から勝手に天引きすることも禁じられているので、そうした行為があった場合はアルバイト先に全額支払うよう求めましょう。

迷ってしまうのは、強制とまではいかないものの、買い取ったほうがよいのでは?と思わせるような勧誘行為でしょう。判断のポイントは、自由に選択できる余地があるかどうかという点です。買い取らないと職場にいられない、買い取ることが当たり前といった言動があった場合は、違法の可能性があります。

いずれにしても、自主的に買い取りたい意思がないときは、周囲に流されず、はっきり断るようにしましょう。

断ることで居づらくなるような職場なのであれば、別のアルバイト先を探すのも一つの手段です。

ケース②ノルマを達成できるまで残業

日々の業務のなかで販売数や売上のノルマが決められていて、残業をしてでも達成するよう指示されているというケースです。こうした場合には、どのように対処すべきでしょうか。

対処法

ノルマを決められていたとしても、労働契約をしている時間を超えて働く義務はありません。労働契約法第6条で定められている通り、労働者の義務は労働を提供することであって、成果を確約することではありません。

つまり、未達成であっても時間がきたら帰っても問題はありません。残業が発生したときは、残業代を請求しましょう。

違法なノルマを課されて困ったら?

もしもアルバイト先で違法なノルマを課されたら、一人で抱え込まずに次の方法をとってみてください。

強要してきた上司の上司に相談する

まずは、ノルマを指示・強要してきた上司のさらに上にいる上司に相談してみましょう。チェーン店やフランチャイズなどの場合は、本部に報告・相談するというのも一つの方法です。

指示を出しているのが上の役職者のため相談できる人がいないという場合は、次で紹介する労働基準監督署に相談してみましょう。

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は各地域に設置された厚生労働省の出先機関で、労働法に則り企業を監督する役割を持っています。また、労働者に対し労災補償を行っている行政機関です。

労働基準監督署には「労働基準監督官」と呼ばれる職員が在籍し、司法警察官の権限を持っています。労働基準法違反の可能性がある会社に対し調査や指導を行っているほか、悪質な違法行為が認められたときは強制捜査や逮捕といった措置を取ることも可能です。

労働基準監督署に相談をすると、法律の観点からどのように対処すればよいのか具体的なアドバイスをもらうことができます。また、労働基準法違反が確認できた場合は、会社に対して是正勧告を行ってくれます。

法律に関わるトラブルを一人で解決するのは難しいものです。悩んだときは、専門機関に相談してみることをおすすめします。

労働基準監督署へは、メール、電話、直接訪問のいずれかの方法で相談できます。また、バイト先に知られたくない場合は匿名での相談も可能なので、担当者に伝えておくといいでしょう。
ただし、相談ごとに対して会社の対応を聞かれますので、二度手間を防ぐためにまずは会社に話をして、その回答を持って労働基準監督署に行くようにしましょう。

労働基準監督署の所在地について

職場の仲間とともに対応する

違法行為が慣例的に行われている職場では、「当たり前」という雰囲気ができあがっているため、一人で対応するのが難しい場合があります。たとえば、売れ残った商品の買い取りが当たり前に行われていて、一人だけ断ると角が立ちそう……と悩んでしまうこともあるでしょう。

そのようなときは、職場の仲間に相談してみましょう。同じように断りたい気持ちを持っている人がいるかもしれません。一人では言い出しにくくても、複数名の声であれば、まとまった意見として届けることができます。

バイトを辞める

そもそも法律に違反する行為が見られる職場であれば、辞めたほうが賢明な判断ということもあります。心理的なストレスにくわえ、買い取りや罰金などの金銭的な損害も生じているなら、継続するほうがリスクは高くなります。別のアルバイトを見つけて新しい生活をスタートするという決断も、ときには大切なことです。

悩みを抱えたままにせず適切に対処しよう

そもそもノルマや目標は、目指すべきゴールを明確にしてモチベーションを高めることを目的に設定されるものです。ノルマを課すこと自体は違法ではありませんが、未達成の場合に買い取りを強制したり、従わない場合のペナルティがあったりすれば法律に違反する行為となります。

アルバイトであっても、社員と同様に労働者としての権利を持っています。適切な対処法を知っておくことで、安心して働くことができるようになります。違法行為が見られたら、一人で悩みを抱えたままにせず、しかるべき対応をとるようにしましょう。

記事監修:菅田 芳恵(社会保険労務士)

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