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2022年03月30日

【コラム】自分に向いてる仕事、やりたいことの見つけ方(作:おばけ3号)

おばけ3号 タウンワークマガジン townwork

自分に合う仕事の考え方

コーヒーの湯気の先で、深刻な顔をした女の子が自らの履歴書とにらめっこしている。
目からビームが出そうなくらいに力んだ眉間の両端にあるその目は、その力みが確実に空回りするような泳ぎ方で、履歴書の文中をここ30分ほど忙しく行き来している。

「いやー、まあ…。履歴書もそんな真面目に見てもらえて幸せだと思うよ」
私は少しだけ意地悪な冗談を投げかけた。彼女は私をキッとにらみ、私は湯気をパーテションのようにして隠れる。

「いい?今とっても真剣に私は迷っているの。人生の分岐路なの。この履歴書の提出先企業の面接落ちたら萎える。私本当に病む。心が荒れて、世界を滅ぼすかもしれない」
お手軽に世界を滅ぼそうとする彼女は、何を隠そう私の妹だった。自らの妹が世界を滅ぼしたりしたら世間様になんて言い訳したものか、私は少しだけ妹の相談に真面目に向き合うことにした。

前提を整理する。妹は20代中盤で、新卒で入社した会社を2か月前に退職。理由は「やりたくないことをするのが嫌だった。毎日に変わりばえがなく、それが自分の生活に潤いと張り合いをなくしていると感じたから」という非常にわかりやすいものだった。
恐らく世の中の20代の半数近くは似たようなことを感じた経験があるのではないだろうか。
若ければ若いほど、単純な作業や価値を感じづらい作業が降ってくることが多いこの日本の労働形態は、立派な若者である妹から勤労の意欲を奪うには十分すぎたのかもしれない。

そんな中、あくまで前向きな理由で次の活躍の場を探して旅立った妹が最初に当たった壁は「どうやって次の職を選べばいいかわからない」だった。その壁はどうやら厚く、そして乗り越えるのも困難らしく、そこで妹は私に助けを求めた。

「もうさぁ。なんでこんな職選びって難しいのかな。そもそも私、この企業に合っているかもわかんなくなってきた。何なの?人が欲しいなら企業側から私にオファーくれよ、攻めの姿勢で来いよ」

履歴書とのにらめっこに負けた妹が、ほぼ暴力に近い暴言で毒を吐く。
「お兄ちゃん、どうやって今の職選んだの?どうやって決めたの?自分に合う職をどう考えたの?」

やっと私を呼び出した理由に中(あた)る問いを、妹が繰り出した。
「そうねー。最初にね、整理したんだよ。自分の意思と価値と今やってることを。」
「…どゆこと?」
怪訝な顔に拍車がかかる。このままいくと妹の顔が般若のようになる。世界が滅びる。止めなければ。
私は妹に考えさせようとすることを辞めて、世界平和のために早々に答えを提示した。

「今の自分の仕事の立ち位置を、Will,Can,Doで整理するの。Willはやりたいこと。Canは出来ること、Doはやっていること。」

妹が身を乗り出す。私は続ける。

「例えばさ、前職はDo(やっていること)が、Can(既に出来ること)だったから退屈で辞めたんでしょ?で、次に行くところはまず、Will(自分がやりたいこと)という立ち位置になるはずだよね。」

コクコクと黙ってうなずく妹は私の目を真剣に見つめる。兄弟間でこんな真面目な話をすることは一般的にも少ないだろうから、話題が意外であることも妹の興味をそそる一因なのかもしれない。また、私は続ける。

「でもココで一つ問題がある。次はWillでありCan(やりたかったことで、できること)の位置に行くのか、WillだけどDo(やりたかったけど、できるワケではないこと)の位置なのか?これがどちらなのかによって行先が変わらない?だって、WillでCanなら自分の能力や仕事の経験で価値発揮できるところだから行先の企業は自分の能力や仕事の経験に親和性があるところを探すべきだし。逆にWillだけどDoなら、少なくとも自分の能力や仕事の経験とは全く離れた場所に行くことが前提になるよね」

身振り手振りを添えて説明する私を食い入るように見つめる妹。口元に微笑が浮かんでいる。よし、いいぞ。世界を救うまでもう一歩だ。

「で、だ。前職の仕事があまりに張り合いがなく辞めたなら、次の職が如何にWillな仕事であってもCan(できること)であった場合、また退屈になってしまうかもしれない。つまり、次の職場はWillでありDo(やりたいことだが、できるワケではない)の軸で探せばいいんじゃない?」
「お兄ちゃん。」
妹が食い気味に切れ味よく切り込んでくる。さすがは兄妹、会話の遮りかたも他人より数倍容赦ない。

「ここまではよくわかったの。でもね、いざ面接になったら『やりたいけど、できないです!』って言えなくない?どうすんの?」

負けじと私も切り返す。

「いや、わざわざできないことをいう必要はないよ。例えば志望動機なら、やりたいというwillに重きを置いて、『前職の仕事はマスターしたので、次の挑戦はより難易度が高くやりがいがある仕事に前向きにチャレンジしたくて』みたいな話に持っていく感じがいいと思う。逆にWillでありCan(やりたかったことで、できること)の企業の面接なら『こんなことができます!』ってCanを推すべきだよね。転職先と自分のWill,Can,Doの考えを照らし合わせてアピールポイントは変えてみるといい。」

そもそも若年層ならそこまでCanは期待されない。むしろ前向きな意思や行動を持っていることがベースとして評価されることが多いはずだ。

妹はまだ新しいビジネスバッグからメモを取り出し、私の例示を書き溜めた。般若のような顔ではなく、新しい玩具を見つけた意欲と希望に満ちた子供のような微笑で。

20時を過ぎて、カフェを出る。ビル街の光がキラキラと輝いていた。
この光の中のどの程度の人々がWillとCanとDoが重なったお仕事(やりたい仕事で、自身が貢献できて、実際にやっている)だろうか。もしかしたら、最初からそんな仕事に就いている人もいれば最後まで就けない人もいるのかもしれない。
もしこのコラムを読む人の中で求職中の人々がいたら、是非考えて見てほしい。
今の仕事と、次の仕事はWill,Can,Doのどこにいる?

■Profile:

おばけ3号 タウンワークマガジン townwork
おばけ3号
 @ghost03type

作家、インフルエンサー。
普段はtwitterで日常の愉快な話や、舞い込む相談に対する親身な回答を発信。鋭い分析力とユニークな表現力に富んだ意見で多くのメディアと視聴者の支持を得ている。普段は会社員として都内のコンサルティング会社に所属する、婚活中のアラサー男子。
最新著書『「お話上手さん」が考えていること 会話ストレスがなくなる10のコツ』(KADOKAWA)が発売中。

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