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2015年03月19日

イチロー選手が年間200本安打の記録を10年続けられた理由│岩崎夏海

バッターボックスに立つバッター

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

「運」は作ることができる

これまで生きてきて痛感したのは、「世の中は計画通りにいかない」ということだ。計算は必ず狂う。どこかで頓挫する。そのため、だいじになってくるのは計画が頓挫したときに、それを修正できる「反射神経」だ。上手くいくものというのは、たとえ計画が狂っても、反射神経を発揮できて軌道修正できる。ときには思わぬ効果さえ生み出す。言い換えると、想定外の出来事が思わぬ効果を発揮することこそが、「物事が上手くいく」ということの本質なのかもしれない。

「想定外の出来事が思わぬ効果を発揮すること」を、人は「運」という。そして、「物事が上手くいくためには必ず運が必要だ」という。「運」なしでは上手くいかないという。しかしぼくは、必ずしもそうは思わない。なぜなら、「運」というのはけっして偶然やってくるものではないからだ。それは、こちら呼び込むこともできるのである。自分で作ることができるのだ。

「運」を自分で作れれば、それは必ずしも「運がいい」ということにはならない。その「運を作ろうとした行為」が奏功したという意味で、努力の結果ということができる。

では、「運」というのはどうすれば作れるのか?
「運」を作る方法というのは、実はいくつかある。そのうちの最大のものが、「場面を増やす」ということだ。

チャンスを増やせば、運に恵まれる機会も増える

チャンス
「場面を増やす」というのは、言い方を変えると「機会を増やす」ということでもある。チャンスを増やすことだ。チャンスに恵まれるかどうかは運次第だが、チャンスを増やすことは努力で可能となる。だから、そのことに努力を傾けていくのが、物事を上手く運ぶための一番の近道なのだ。

チャンスを増やすことを、ぼくは「バッターボックスに数多く立つ」と表現している。これは、プロ野球のイチロー選手を例にすると分かりやすいからだ。
イチロー選手は、年間200本安打を10年続けた。これは偉大な記録だが、やがてその記録は途切れてしまった。そうして、昨年などは100本くらいにまでその数字が落ち込んだ。

なぜか?
理由は一つしかなく、それは「バッターボックスに立つ機会が減った」からだ。2014年、イチロー選手は打率はそれほど悪くはなかったが、ヒットの数は全盛期の半数以下に落ち込んだ。それはひとえに、バッターボックスに立つ機会が減ってしまったからである。

これは、裏を返せば全盛期のイチロー選手は、バッターボックスに立つ機会が多かった、ということだ。そのため、全盛期のイチロー選手を見ていくと、どうすれば数多くバッターボックスに立てるか、そのヒントや解決方法がいろいろ見えてくるのである。

周囲からの信頼を得ることで、バッターボックスに多く立つ

全盛期のイチロー選手が数多くバッターボックスに立てていた理由のうち、最大のものは「周囲からの信頼」である。イチロー選手は、周囲――特に首脳陣から絶大な信頼を受けていた。だから、たくさんバッターボックスに立てた。

では、イチロー選手はどうして信頼を得ることができていたのか?
それは、ヒットをたくさん打っていたから……と考えがちだが、実はそれだけではない。イチロー選手は、ヒットを打つ以前に、周囲から絶大な信頼をすでに勝ち取っていた。

例えば、イチロー選手は誰よりも練習熱心だった。彼が勤勉であることは誰も疑わなかった。その取り組む姿勢は真摯で真剣だった。それが、周囲の信頼につながった。

また、イチロー選手は怪我が極端に少なかった。それは、単に運が良かったからではない。怪我を抑えるべく、不断の努力を続けていたからだ。例えば、イチロー選手は絶対にヘッドスライディングをしない。怪我を防ぐためである。そうした小さな工夫の積み重ねで、怪我を極限まで減らすことに成功していたのだ。

それから、イチロー選手は「失敗の仕方」が上手かった。つまり凡打が上手かった。どういうことかというと、イチロー選手が凡退しても、仕方ないと思わせるところがあったのである。けっして言い訳していたわけではなかったが、凡退したとしても惜しい当たりだったり、あるいはその前でさんざん粘って相手投手を苦しめたりしていた。

そういうふうに、失敗の質が良かった。だから、失敗しても周囲からそれほど咎められなかった。むしろ、「イチローなら失敗しても仕方ない」という雰囲気を、周到に作り出していたのである。

目立たない努力の積み重ねが信頼を産み、チャンスを増やす

Group of smiling children with raised hands.
さらに、イチロー選手はバッティング以外の守備や走塁でも信頼を勝ち得ていた。守備が上手く、また走らせても上手い。そういう目立たないが重要な部分でしっかりと実績を残していた。そのことが、バッティングでの失敗を帳消しにしていたおかげで、信頼がなおさら高まったのだ。

そう考えると、イチロー選手の全ての行動が、彼が数多くバッターボックスに立てていたことと関連していたというのがよく分かる。これを、我々の生活にも当てはめるのだ。例えば、勤勉さを実行し、しかもそれを周囲にアピールする。健康を保ち、周囲に迷惑をかけないようにする。失敗の質を高め、失敗しても「しょうがないか」と思ってもらえるようにする。本業とは別の分野でがんばり、失敗を帳消しにしてもらう。

そういうふうに、少しずつでも周囲の信頼を積み重ねていくことが、バッターボックスに立つ機会を増やすことにつながる。そしてバッターボックスに立ちさえすれば、やがて運は巡ってくる。それを掴むか掴まないかはそれこそ運次第だが、その機会を増やせば、やがていつかは掴める日が来るのだ。そうして、大きな成果をあげることができるのである。

企画:プレタポルテby夜間飛行

◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。ご購読・詳細はこちら

岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。