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2015年04月09日

お金について子供の頃に考えていた話│岩崎夏海

考える少年

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

とにかく色んなことを疑ってかかる少年

ぼくは、なるべく虚心坦懐に生きようとしている。「虚心坦懐に生きる」ということは、自分の率直な感情に素直に従おうとする——ということだ。言い方を変えれば、余計なバイアスをかけないようにする、ということである。曇りのない眼で世の中を見るように心がけたい。

なぜそうするかといえば、「価値」というものを見極めたいからだ。本質を見たいのである。そうして、自分の創作にそれを役立てたい。だから、たとえ非道徳的であったり、法律に反していたりすることでも、ただちに悪と決めつけるのではなく、まず自分の率直な感情でそれを受け止め、その上で価値判断するようにしている。

子供(中学、高校)の頃、ぼくは世の中のさまざまなことに対して疑問を持っていた。「疑いの目」といってもいい。何でもかんでも疑ってかかるようなところがあった。例えば、「お金」というものを疑っていた。お金が不思議で仕方なかった。「なぜ多くの人が何の疑問もなしにお金の価値を認めているのか」——そのことが不思議だったのである。

とことん追求して得た「気づき」

お金というのは、ただの金属であったり紙であったりするだけだ。それ自体に価値があるわけではない。ではなぜ「価値のあるもの」とされているかというと、世の中のほとんど全ての人がその価値を「認めている」からだ。「お金を価値のあるものと交換できる」というルールを、みんなが承認しているからである。

ぼくはこれが不思議だった。なぜ世の中のほとんどの人は、このルールを唯々諾々と認めているのか! ぼくは、そんなルールを認めた覚えはなかった。だから、そんなものはくだらないと思っていたし、できることなら自分にはそのルールを適用しないでもらいたいと思っていた。いつか、お金などというルールから解放され、もっと自分独自の価値体系の中で暮らせたらいいのにと願っていた。

しかし、そういうふうに考えても「なぜ皆が唯々諾々とそのルールを守っているか」ということの疑問は解けなかった。そこで仕方なく、今度はお金のことを勉強したり、深く考えてみたりすることにした。すると、そこで何となく分かったのは、お金がない世の中というのはとても不便だということだ。何が不便かというと、お金がないと「交換」がしづらいのである。

疑うよりも、率直な感情を大事にする方が真理に近づきやすい

Cheerful jumping man witha big heart
いろいろなことを勉強すると、「交換」というのは、人間のほとんど本能に根ざしている行為だというのが分かる。本能とはいわないまでも、社会抜きには生きていけない人間が、その社会を形成する上で必要不可欠としている行為が、まさに「交換」なのである。人間社会は「交換」を前提として成立している。人は、「交換」なしでは社会を築けないのだ。

その「交換」という行為を画期的なまでに便利にしてくれるのが、「お金」という道具、およびそのシステムである。なぜかというと、お金を介さない「物々交換」では、双方がフェアと思えるような取引がしづらい。それゆえ、「交換」がなかなか成立しない。それに対し、「交換」にお金という道具を添えてあげると、フェアな交換が成立しやすくなるのである。そうして、社会も活性化する。

そういう、人間の本能に近い部分での欲求があるから、ほとんどの人はお金という価値に唯々諾々と従っていたのだ。それが分かって、ぼくは、お金を疑っていた中学、高校の自分よりも、世の中のほとんどの、唯々諾々と何の考えもなしに生きていた人たちの方が正しかったのだということを知った。そういうふうに、人は、疑ってかかるよりも、得てして何も考えない方が真理に近づきやすい。

そうして大人になってからは、「いかに考えないか」ということを重視するようになった。世の中を疑ってかかるという姿勢をやめ、自分の率直な感情を大事にするようにしたのである。

企画:プレタポルテby夜間飛行

◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。ご購読・詳細はこちら

岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。