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2015年05月14日

遅刻のメッセージ│岩崎夏海

遅刻のメッセージ

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

約束をした人が遅刻をする、ということがある。ぼくはそれを、いつも「その場に来たくない」というメッセージとして受け取っている。もちろん、そうでない場合もあるが、その場合は特に「問題」ではないので、遅刻を常に「その場に来たくない」というメッセージとして受け取っていると、いろんなことが見えてくる。そして、いろんなトラブルを回避できる。今日は、そのことについて書いてみたい。

多くの日本人は「NO」とはっきり言わない

ところで、みなさんは人を信用するだろうか?ぼくは、信用する人はするが、するまでにはなかなか時間がかかる。むしろ誰に対しても疑ってかかる方だ。以前は信用する方だったが、疑ってかかるようになってから生きるのが楽になった。

ぼくは、比較的何でも正直に話す方だが、多くの日本人は、ネガティブなことは正直に話したがらない。特に、「NO」と意思表明することをとても嫌がる。例えば、飲み会に誘ったとする。そのとき、「行きたくない」と思っていても、「NO」と言えない。それなら、他に理由をつけて断ればいいと思うのだが、最近では、それもしない人が増えた。何かにかこつけて断るのではなく、はっきりと「YES」と答えてしまう人が、けっこう多いのである。

そういう人は、いざ当日になると、遅刻をしたり、土壇場になって断ったりしてくる。そうして、こちらが「時間通り来るものだ」と思っていると、戸惑ったり、落ち込んだり、憤慨したりする羽目になるのだ。ぼくは、若い頃は「約束は守られるのが当たり前」と思っていたから、そういうふうに約束を破る人がいると、いちいち怒っていたのでとても疲れた。

「約束が破られる」という予測は僕を楽にさせた

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しかし年を経るに連れ、誰に対しても「きっと約束を破るだろう」と疑いの目を向けるようになった。基本、人の言うことを信用しなくなった。そうして、約束が破られたときの準備をしておくようになった。すると、たとえ約束が破られたとしても、それは予想通りのことなので慌てなくなった。また怒らなくもなった。それは予想通りのことなので、腹を立てる筋合いなどないのだ。むしろ、予想が当たって嬉しいくらいだった。

ぼくは、自分からは約束を破らないようにしている。そうして、表面上は他者の言うことを信用し、約束をしたなら、自分はそれに全力で応える。ただしそのとき、「相手は約束を守らないだろう」とも予測する。そして、その約束が守られなかったときのための準備もしておく。すると、約束が破られれば、その準備が役に立ってむしろ嬉しい。一方、約束が守られても、準備は無駄になるが、約束が果たされて嬉しい――ということになる。つまり、どちらも嬉しい結果となるので、生きるのがとても楽になるのだ。

自分で見出した「約束」に関するルール

ぼくがそういう生き方をしていると話すと、多くの人が疑問を呈する。多くの人が、「人を信じられないなんて、寂しくないですか?」と言う。あるいは、「いちいち約束が守られないときの準備をしておくのは、面倒くさくないですか?」とも言う。さらには、「そういうふうに破られることが前提なら、約束などしなければいいのではないですか?」と言う人もいる。

しかし、誰とも約束しないと、一人になってしまう。ぼくは、人間は一人では生きられないと思っているし、また一人でできることの限界も、これまでの人生の中でさんざん味わってきた。だから、誰かと一緒に生きなければならないのだが、そのためには、誰かと約束を交わさなければならないのである。

それゆえ、信用はしないまでも、約束はする。そうして、自分からはそれを破らないというルールを課し、それを頑なに守るのだ。すると、やがて約束を守る人にも出会える。中には、絶対に約束を破らない人もいる。そういう人たちとは、継続しておつき合いをすることとなる。そうしてやがて、ぼくの周りには約束を守る人だらけになる。

「ちょっとの損は許す」ぐらいの気持ちの方が結果として得になる

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こんな素晴らしい環境はまたとない。この環境を手に入れるためなら、人が信用できないことの寂しさや、約束が果たされないときのための準備など、ものの数ではなくなる。世の中には「一度でも約束を破られたら嫌」という人が少なくない。ぼくも、かつてはそうだった。約束を破られるような人生など、損だと。しかし、そういうちょっとの損も許せないような人こそ、かえって損だと、今では思うようになった。「損して得取れ」や「慌てる乞食はもらいが少ない」という諺があるが、ちょっとの損でも許せないという人は、かえって大きな損を被るようになるのだ。

むしろ、小さな損を拾い集めるような生き方こそ、大きな得を得ることの最善の道だ。そのためぼくは、約束に限らず、小さな損を拾い集めるような生活を今ではしている。

企画:プレタポルテby夜間飛行

◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。ご購読・詳細はこちら
岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。