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2015年10月09日

教養を高めるのに不可欠な『問いへの感度を高める読書』│岩崎夏海

academic boy

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

教養はどうすれば身につくのか?
それは、言葉を覚えることによってである。
では、言葉はどうすれば覚えられるのか?
それは、読書をすることによってである。
では、どのような本を読めばいいのか?
それは、その中に有効な「問い」が提示されている本である。その問いに興味を引かれ、答えについて真剣に考えれば、思考の道具が必要となるので、自然と言葉を覚えられるようになる。
では、有効な問いが提示されている本とはどのようなものか?
それ以前に、そもそも有効な「問い」とは何か?
今回は、そのことについて見ていきたい。

ある本を読んで三日三晩もがき苦しんだ小学三年生

人間にとって最も有効な問いといえば、それは「生」と「死」にまつわるものだろう。
「人はなぜ生きるのか?」
「人はなぜ死ぬのか(死ななければならないのか?)」というのは、子供でも自然と興味を引かれる非常に強力な問いである。

では、生、あるいは死について、自然と考えさせてくれる本とはどういうものか?ぼくの場合、それは手塚治虫が描いたマンガ「火の鳥」だった。「火の鳥」の中でも、特に「鳳凰編」だ。

「火の鳥 鳳凰編」には、我王と茜丸いう二人の主人公が出てくる。我王は、生まれてすぐの事故がもとで、片目と片腕を失った。一方茜丸は、その我王に襲われて、片手が不自由になった。そういうふうに、この作品は主人公が二人とも障害を抱えている。そしてこの二人は、ともに仏師として彫刻を彫ることを生きる営みとしている。

ぼくは、この本を小学三年生のときに読んだ。そして、今でも覚えているのだが、それから三日間、同じ夢を見た。それは、「火の鳥 鳳凰編」の中で茜丸が見た夢と同じだった。

茜丸は、あるとき朝廷から「火の鳥」の彫刻を依頼される。その過程で、「輪廻転生」について知る。生きとし生けるものは、死んだら他の時代の他の動物に生まれ変わる──という仏教の考え方だ。そこで茜丸は、火の鳥から「死んだら二度と人間には生まれ変われない」と宣告される。そうして、ミジンコに生まれ変わったりしながらもがき苦しむのだ。

この本を読んだぼくは、茜丸と同じようにもがき苦しんだ。
自分が死んだらどうなるのか?
茜丸のようにミジンコに生まれ変わってしまうのか?
それはあまりにもイヤだった。あまりにも恐ろしかった。それで、自分の死について、三日三晩考え、もがき苦しみ続けたのだ。
その「問い」は、眠っているときまでぼくに襲いかかってきた。夢に出てきたのだ。それで、とうとう音を上げてそれ以上は考えないようにした。それ以上考えると、頭がおかしくなりそうだったからだ。

boy teenager of European appearance brown hair closed his ears s

ぼくを「問い」へと導いたのは「哲学」だった

しかし、その「問い」にうなされ続けた三日間は、ぼくの人生においては最も濃密な時間だったといえるかもしれない。あるいはそれは、ぼくの人生を決定づけた三日間だったともいえよう。
その三日間で、ぼくは「問い」というものの神髄を味わった。そして、それと向かい合うことが、自分の人生の中で大きな意味を持つというのを悟ったのである。
また、その三日間で「問い」というものへの興味を育んでもいた。そうして以降は、新たなる問いを求めて、さまざまな本を渉猟するようになったのだ。

後になって振り返ると、この「火の鳥」という本は、マンガというよりは哲学書だった。そこには、答えが明確ではない「問い」が提示されていて、読者は自然と、それについて考えを巡らせるような仕掛けとなっていた。

その意味で、ぼくを「問い」へと導いたのは「哲学」といえよう。哲学が、ぼくに考えるきっかけや、言葉、さらには教養を身につけるきっかけを与えてくれたのだ。

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◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。ご購読・詳細はこちら

岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。