スマートフォン用サイトを表示

アルバイトや転職に役立つ情報が満載!最新のお仕事ニュースなら【タウンワークマガジン】

2015年10月19日

多くの人が誤解している「哲学」というもののはなし│岩崎夏海

哲学

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

「問い」であると同時に「答え」である

哲学とは何か?
これは、実は多くの人が誤解している。それをぼくは、永井均さんという哲学者の本で知った。
多くの人は、哲学というのを「答え」だと思っている。例えば、有名な「人間は考える葦である」というパスカルの言葉。この「考える葦」の部分を、多くの人は哲学だと考えているのだが、実は違う。哲学とは、「問い」のことなのである。だから、パスカルが提示したのは「人間とは?」という部分こそが「哲学」である。あるいは、もっといえばパスカルは、ここで「考える葦とは何か?」という「問い」を発しているともいえる。「考える葦」を通じて、人間について考えるきっかけを我々に与えてくれているのである。

その意味で、哲学でいうところの「問い」は、ある種「答え」的でもある。それはメビウスの輪に似ている。「問い」であると同時に「答え」なのだ。それら対立する二項が同時に含有されているものこそ、哲学の正体なのである。

例えば、「死んだらどうなる?」という「問い」があったとする。これだけでも哲学といえなくはないが、しかし真に哲学的であろうとするなら、ここに「答え的な問い」を含ませる必要がある。
そこで、例えばこう考えてみる。「死んだら無になる」これは、「無」というのが一つの答えになっているのと同時に、「無とは何か?」という「問い」にもなっている。そうして、最初の質問よりぐっと「哲学的」になっているのだ。

思考を促すものこそ哲学

nastia130400047
そういうふうに、哲学というのは「問い」と「答え」がウインカーのようにチカチカと明滅している存在といえよう。そして、その明滅の中にこそ「教養」は育まれる。
なぜかといえば、そのチカチカという明滅は、人間の神経や体力を摩耗させる。何より思考能力を摩耗させる。このチカチカがしばらくくり返されると、やがて人は疲れてしまって、それ以上考えるのが嫌になる。

そのとき、思考の持続を助けるのが「教養」である。教養とは、いうなれば思考における「スタミナ」のようなものだ。教養があればあるほど、思考は楽になる。教養があればあるほど、思考し続けられ、それを深めることができる。

逆にいえば、教養というのは思考によって鍛えられる。それは、マラソンランナーが走ることによって鍛えられるようなものだ。ランナーは、走れば走るほどスタミナがつく。それと同じで、人は、思考すれば思考するほど教養がつく。そして教養がつけばつくほど、どんどんと深い思考ができるようになる。思考と教養とは、そういう循環関係にあるのである。

そして、その思考を促すものこそ哲学なのである。哲学というのは、何も堅苦しい学問の中に押し込められているわけではない。大学に行って哲学を専攻しなければ、本当の哲学を味わえないわけではない。
哲学はむしろ、日常の中にこそ潜んでいる。あるいは、人間一人ひとりの心の奥底にこそ宿っている。
「問うて答える」というのは、人間に宿命づけられた本能のようなものなのだ。

哲学を深めるには「気づく力」が不可欠

そのため、哲学というのは必ずしも勉強をしたから、あるいは知識があるから深まっていくというわけではない。それよりも重要なのは「感性」である。「気づく力」とも言い換えられよう。それは、日常の中に潜んでいたり、あるいは自分の中に眠っていたりするからこそ、見逃しやすい。あるいは見つけにくい。そのため、それを見つけるとなると、独特の感性が必要となってくるのだ。

では、それはどういう感性なのか?
一言でいえば、「変化に敏感」ということだ。「ちょっとしたズレや隙間」を気づけてこそ、哲学を深められるようになるのだ。

企画:プレタポルテby夜間飛行

こんな求人みつけました
読書哲学

 

◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。ご購読・詳細はこちら

岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。