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2015年11月16日

新時代の「リーダー」はどんなときに生まれるもの?│石田衣良

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“時代を動かすリーダーは、どんなときに生まれるもの?”そんな質問を、作家の石田衣良さん(@ishida_ira)が答えてくれました。
※この記事は公式メルマガ「小説家と過ごす日曜日」よりお届けします。

「大物が出なくなる」のはある意味幸せなこと

単純に言えばその時代が不安定なとき、あるいはすごく成長しているときにリーダーが生まれるんですよね。政治家だって大物が出るし、文化人、歌手やタレントの大物が生まれるのはそういう時代です。今は逆にみんなのレベルが平均して高くなったので、自分たちと同じような人を好きになるんですよ。たとえば、すごい美人より、隣の家に住んでいるフレンドリーなちょっと可愛い子のほうが人気になります。それは政治家でも小説家でもみんな一緒で、文化的なレベルが上がって成熟すると大物を求めなくなるんですね。

今の日本の政治状況で、ネルソン・マンデラやアウンサンスーチーみたいな指導者が出てきようがないじゃないですか。抑圧がありませんから。誰でもすぐに立候補できますし、それで刑務所にぶち込まれるなんてこともありませんよね。みんなが憧れるカリスマもまったく同じ状況なんじゃないですか。

1960年代に、池田勇人総理がフランスと首脳会談を行って、ドゴール首相から「政治家というよりはトランジスタラジオの商人が来たようだ」と揶揄されました。でもそれは幸せなことだと思います。しんどい時代じゃないと大物は出てきませんから。ゴルバチョフが現れたのはソ連が崩壊したときですし、「そうか、英雄が出るのはしんどくてつらい時代なんだ」と思ってください。

昔の成長期の時代と比べると、みんなの幸福の総量は、今のほうがはるかに多いと、ぼくは思います。30~40年前はやっぱり貧しくて、犯罪も今よりずっと多かったですから。そう考えると、「大物が出なくなる」という幸せについて考えてみるというのが正解な気がしますね。ただ、正直に言うと、ここ10年くらいで日本の平均所得は少しずつ落ちていて、貧しくなっているんです。これがさらに続くと、また次の時代のヒーローが出てくるかもしれませんね。ただ、ダークヒーローになりそうで嫌な感じですけど。

ira_ishida のコピー石田衣良(いしだいら)
1960年、東京都生まれ。‘84年成蹊大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。‘97年「池袋ウエストゲートパーク」で、第36回オール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。‘03年「4TEENフォーティーン」で第129回直木賞受賞。 ‘06年「眠れぬ真珠」で第13回島清恋愛文学賞受賞。 ‘13年「北斗 ある殺人者の回心」で第8回中央公論文芸賞受賞。 「アキハバラ@DEEP」「美丘」など著書多数。 最新刊「オネスティ」(集英社) 公式サイト http://ishidaira.com/