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2015年01月27日

努力することの本当の意味│岩崎夏海

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『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』作者の岩崎夏海さんが、混沌とした現代をどうとらえればいいのか? を書き綴っていく社会評論コラム。この記事は岩崎夏海メールマガジン『ハックルベリーに会いに行く』よりお届けします。

努力を継続するには、努力の本質を理解する必要がある

競争に勝つためには努力が必要である。ところが、この努力が難しい。なぜかといえば、ほとんどの人が「努力の本質」を分かっていないからだ。「努力とは何か?」を分かっていない。

何かを分かっていないこと、をするのは難しい。方法論を確立していないから、本能や勘を頼りにするしかない。それでも、人間にはすぐれた本能や勘が備わっているから、誰でも何度か努力に成功した経験がある。ところが、それは長続きしない。方法論が確立していないから、くり返すことができないのだ。

そのため、努力を継続的にするには、まずは努力の本質を理解する必要がある。
そこで今回は、「努力とは何か?」ということについて述べていく。

「努力は裏切らない」の意味

Woman healthy trail run
ところで、努力にまつわる有名な格言の一つに「努力は裏切らない」というものがある。努力というものは、すればするだけ身になるし、ムダではない――ということだ。

これは、何を意味しているのだろうか?

実はこれも、人間かいかに心理的なバイアスに影響されるか――ということを表している。

人間には負の心理的バイアスがかかりやすい。「自分はこれが苦手なんだ」と、つい思ってしまう。そうやって敗北する理由を探している。そのため、勝利するにはそうした負のバイアスを取り除く必要があるのだが、それを可能にしてくれるのが「努力」なのである。

「努力」というのは、人間を「負の心理的バイアス」から解き放つ効果がある。想像してみてほしい。あなたが何かの勝負に臨んだ際――それについて世界中の誰にも負けないくらい努力を積んできたという自負があるなら、負けることの「言い訳」を探すだろうか?

逆に、「勝てる」ということを素直に信じるはずである。自分はこの道に習熟している、という自信を持てるはずだ。そういう「正のバイアス」を持つことこそ、実は努力が持つ大きな効用なのだ。

それがまた「努力は裏切らない」という格言の指し示す意味でもある。つまり、弱気になりそうな自分を「努力した」という気持ちが鼓舞してくれる。そしてそれは、いつまでも継続するので「裏切らない」というわけだ。

このように、努力というのはそもそも「正のバイアス」を得るためにするものなのである。だから、もともと「正のバイアス」を持っている人にとっては、努力は必要ないともいえる。しかし、人間はそこまで単純に「正のバイアス」を持つことができないので、ほとんどの場合で「努力」というものがだいじになってくる。

努力をする過程が苦しいほど「正のバイアス」を持ちやすくなる

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さて、ではここからが「努力」の本質についてなのだが、そういう「正のバイアス」を得られるのは、努力の何が作用してなのか? 努力の何が、人に正のバイアスをもたらすのか?

それは「苦しさ」である。人は、努力をする過程で苦しめば苦しむほど、「正のバイアス」を持ちやすくなる。

なぜかといえば、それこそが「等価交換の概念」だからだ。

人間は、生まれつき「等価交換の概念」に縛られている。何かを得るためには、何かを失わなければならないと信じ込んでいる。そういう「等価交換の概念」が、努力においても生じる。つまり「これだけ努力した(=苦しんだ)のだから、勝てる(=いいことがある)」というわけだ。

苦しまずにできる努力は努力とはいえない

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そのため、そうした正のスパイラルを得るためには、努力において苦しまなければならない。むしろ、苦しまなければ「努力」とはいえない。

ところが、これを理解できていない人が多い。多くの人は、「人間は苦しむべきではない」と考えている。苦しむことをネガティブにとらえている。だから、「練習も苦しむべきではなく、むしろ楽しんでやるべき」という人が多い。あるいは、「努力そのものも楽しんでやるべき」と考えている。

実際、練習を楽しみながらやっている人もいるし、好きでやっていたらその道の勝者になっていた――という人もいなくはない。特に、ミュージシャンやスポーツ選手が「自分も楽しんでいなければお客さんも楽しんでくれない」と言って、楽しむことの大切さを強調するケースが多い。だから、努力の効果を疑う人も多いのだが、しかしそれは、最初に述べたように本能や勘で知らず知らずのうちに努力しているだけであって、自分では気づいていないケースがほとんどだ。

彼らは、自分でも知らないうちに苦しんでおり、それがゆえに正のバイアスを持て、勝利を疑わなくて済んだだけだ。そのため、そういう人は二度勝つことができない。一度は本能や勘で勝てるのだが、継続しないのだ。

実際「楽しまなければいけない」と語るようなミュージシャンやスポーツ選手は、2、3年で消えていく。その逆に、苦しみながら音楽やスポーツを続ける人は、長い間第一線で活躍し続ける。これに例外は一つもない。

これが、努力の難しいところなのである。苦しまなければ努力とはいえないのだ。しかしながら、人はどうしても苦しみから逃れようとしてしまう。そのため、正のバイスに至ることができず、敗北の言い訳を探してしまうようになるのだ。

 

企画:プレタポルテby夜間飛行

◆岩崎夏海メールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」
毎朝6時、スマホに2000字の「未来予測」が届きます。このメルマガは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称『もしドラ』)作者の岩崎夏海が、長年コンテンツ業界で仕事をする中で培った「価値の読み解き方」を駆使し、混沌とした現代をどうとらえればいいのか?――また未来はどうなるのか?――を書き綴っていく社会評論コラムです。
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岩崎夏海岩崎夏海(いわさきなつみ)
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。