「和食さと」をはじめとする、和食ファミリーレストランチェーン店を展開するサトレストランシステムズの重里社長。チェーン展開が難しいといわれる“和食”の分野においてここまで店舗を増やしてきました。
「和食はもともと、チェーン化が厳しいといわれています。たとえばお造りにしても煮物にしても、造形や味の調整などが他の料理に比べて繊細です。ゆえに素材や調理人の経験年数や体調などさまざまな要因により、仕上がりにばらつきが出てしまうのです。私も、大学卒業後、実際に「法善寺 すし半」で働いていた時代がありましたが、当時はまだ設備やシステムが整っていない時代。仕込みから調理、盛りつけまで、通常の和食店と同様の作業が必要でした。マグロも一からさばいたり、すしネタの仕込みでエビの殻を剥き一尾一尾串に刺したり……今のチェーン店では考えられないですよね」
そんな日々のなかで、現場がいかに危険に満ちているかを痛感したという重里社長。次第に、厨房の環境整備にとりかかったといいます。
「主に魚市場などで使われる大きくて長い“マグロ包丁”を使いこなす必要がありましたし、エビも1日500本以上の串刺しをするので、怪我をする確率も高かった。これでは到底チェーン化は無理ですし、スタッフの方々が安全に働ける環境づくりの必要性を感じました。以来“包丁の要らない和食店”を目指すべくシステム化を図り、今では包丁を使う行程はとんかつやレモン等を切る程度に。また夏に過酷な熱さになる厨房には空調を完備し、スタッフの過ごしやすさにも気を配りました。その甲斐あってか、長く働いてくれる人が増えましたし、包丁による切傷などの労災事故は、一時の4分の1以下に減りました」
結果、環境が整うごとに、より良い人材が集まるという良い循環が生まれたそうです。だからこそ、環境整備にはこれまで以上に力を入れていくと重里社長は話します。
「1年以上働いてくれるパート・アルバイトの割合は上がりつづけ、今では全体の65%に。その力は当社の想いを実現させる大きな推進力となります。それにより働きやすい土壌が自然と築かれていくので良いことずくめです」
そんな現場経験の豊富な社長が店舗を訪問する際は、どんなところを見ているのでしょうか。
「お店の善し悪しは、店舗に入った瞬間に身体で感じられるものです。それを生み出しているのは、接客や調理の技術ではなく、スタッフの方々のコミュニケーションスキル。一人ひとりが現場で必要とされ、それに応えるべく力を発揮しているか。もしくは楽しんで仕事をしているかどうか、というのが、現場の雰囲気をつくります。清潔で、笑顔が自然につくれて、気遣いができ、ちょっとした所作が良い人そのものが、お店の雰囲気につながっていくのです」
近年では、そんなコミュニケーションスキルの高い人材であれば、社員登用も積極的におこなっていると重里社長は話します。
「パート・アルバイトさんのなかにはポテンシャルの高い方も多いです。彼らの能力やモチベーションの向上につなげていくためにも、社員と同等の教育体系の整備や、働き方の選択肢を広げていきたいと考えています」
近年には、2013年9月にインドネシアに1号店をオープンした同社。今後も、海外での幅広い展開を視野に入れているとのこと。
「インドネシア1号店は開店3カ月で、早々に好成績を残していますし、アジアでの日本食の可能性を大いに感じます。積極的な進出に向けて、当社ではグローバル人材の採用に力を入れています。先日、和食が“世界無形文化遺産”に登録されたこともあり、世界からこれまで以上に注目を集めるでしょう。今後も、日本の食文化のさらなる発展に貢献していきたいですね」
14, January, 2014