「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」といったファミリーレストランを全国47都道府県に3014店舗経営する、すかいらーくグループ。その中枢をなす株式会社すかいらーくレストランツは、松本純男社長と崎田晴義社長の両名を最高責任者とした“ツートップ体制”で新たなスタートを切りました。同じ権限を持った責任者が2名。そのメリットと、企業としての成長に対するそれぞれの思いを伺いました。
「権限を持った人が2人になったことで、よりきめ細かい仕事ができるようになりました。それによって、たくさんあるブランドの強さや特徴をもっと活かしていけるようになります。異なる仕組みや文化をうまくまとめて、スタッフの皆さんそれぞれにあった職種や働き方を提案して、能力を引き出し、活かしていける現場づくりに努めたいです」(松本社長)
「私は、すかいらーくと比べると会社規模の小さいブッフェスタイルのレストランブランド・ニラックスの出身です。小さい会社の良いところは、現場に密着した経営ができるところ。これまで私がニラックスで培ってきたことを、すかいらーくという大きな会社の中でも活かしたいですね。私も、スタッフひとりひとりと丁寧に向き合っていきたいと考えています」(崎田社長)
会社が大きくなると現場との距離が遠くなってしまうのが事実ですが、それではめまぐるしく変わる世間の変化に対応するためのスピーディな判断は難しい。だからこそ今2人のトップは、現場に一層目を向けた運営を目指しています。
毎日大勢が訪れるファミリーレストランですが、若者利用者が多い都市の店舗、シニア層が多い郊外の店舗と、所在地や食事の種類によって来店するお客様のタイプが違っています。そこで重要視されるのが現場スタッフの対応力。店舗で起こることは店舗内で解決することが基本なので、さまざまな課題にスタッフ全員で協力して取り組んでいきます。すると、自らが「店を運営している」という責任感ややりがいが生まれ、社会人としての判断力や応用力も自然と向上していきます。
「仕事を始めて間もない人も、目の前のお客様にとっては責任者。しっかり任務を果たしてほしいです。そのためには、自分だったらどのように接してほしいか考えて動くことが大切。だから、会社が厳しくルールを設けて変に制約することはしません。その瞬間ごとで判断する力を養ってほしい」(松本社長)
「たとえば、お客様からいただくアンケートを参考に、改善点を自分たちで見つけていくんです。それができたとき、その組織は“自走する集団”となり、ものすごくパワーを発揮していきます。このように、現場スタッフが店の運営や経営に重要な役割を担っているんですよ」(崎田社長)
そんな自立した集団を作るために大切にしていることが、「スタッフは褒めて伸ばす」という習慣。しっかり個々の仕事ぶりに目を向け、相手にも気にかけているということを伝えるようにしています。そうすることで、より温かでスムーズなコミュニケーションが生まれるのです。
「私たちが店長を褒めて楽しく仕事をしていたら、それが伝わって、店長が同じような態度でほかのスタッフに接するようになっていました。また、スタッフの日報にきちんとコメントを返すと、みんなが楽しんで日報を出してくれるようになりました。スタッフのがんばりに対して感謝や労いをきちんと表すことで、スタッフとの距離が縮まったと思います」(崎田社長)
「働き始めるには、家から近い、何回か利用したことがある、というきっかけで十分。でも、せっかく入社してくれたのであれば楽しく仕事をしてほしいと思います。限られた情報の中で当社を選んでくれた人たちに、我々の魅力をどれだけ伝えられるかが大切なんです。だんだんと長く働きたいというスタッフが増えてきているように感じています。嬉しいことですね」(松本社長)
最近ではフレキシブルに長時間働ける主婦(夫)のパートが増加傾向にあり、現在はスタッフ全体の約3割を占めているそうです。以前は主婦(夫)と言えばランチタイム勤務のイメージがありましたが、最近は深夜シフトの約6割が主婦(夫)と、働き方が多様化しています。
「家庭や社会でさまざまな経験をしてきた主婦(夫)は大変心強い存在。持っている技術や知識をどんどん発揮してくれたら、当社には非常にプラスです。子育て中の方でも、一段落したらそのまま店長の資格にトライできるなど、パート出身で新しいチャレンジができるシステムもあるんですよ。もっとさまざまなチャンスがある職場になるよう、新しい仕組みづくりにどんどん取り組みたいです」(崎田社長)
「他の業界で働いていた方でも、責任あるポジションにいたのに、子育てなどで仕事を離れたというケースは多いと思うんです。それをそのままにしておくのはもったいない。是非すかいらーくでこれまでの経験を活かしてほしいです。また、そういった人たちが輝けるような場をもっと作っていきたいですね」(松本社長)
小さな会社のように小回りをきかせ、利用者だけでなく、働き手側のあらゆるニーズを汲んだ職場。幅広い年齢層のスタッフが勤務していていることは、誰にでも心地よい環境であることの証明といえるでしょう。そのパワーが、日本全国で愛される大レストランチェーンを支えているのです。
19, July, 2016