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活躍できる人というのは 自分で考え、動き、仕事による喜びを見つけていける人 株式会社コジマ 代表取締役会長兼社長 木村一義

店頭での購買体験はスタッフの“人間力”で決まる

45年間勤めた証券業界を離れ、現在はコジマ電機の取締役会長兼社長として、構造改革に注力する木村一義氏。インターネットの波が押し寄せ、厳しい時代を迎えているといわれる家電業界ですが、木村氏は店舗スタッフの“人間力”がなにより重要と話します。

「家電量販店というのは、どの店舗にも大抵同じ商品が並びます。ですので、お客様の満足度というのは、スタッフのホスピタリティや商品知識によるところが大きい。一般的に、値段だけをいうならば、ネットのほうが店頭よりも価格は低めです。つまり、お店に足を運んでくださる人たちというのは“よりよい購買体験”=ホスピタリティを求めている人たち、といってもいいくらいなのです。インターネットがそれだけ普及しても、そういったお客様がいなくなることはないでしょう」

平日土日関係なく、時間があれば店舗を巡回するという木村社長。視察中にひらめいたアイデアが、スタッフの育成につながることも多いとか。

「僕はこの業界ではいわゆる“アマチュア”ですので、あくまで“お客様視点”で店舗を見るようにしていますが、当初より店が『画一的すぎる』印象を抱いていました。そこで、従業員や店舗の個性を感じられるような“手描きポップ”をはじめたんです。各スタッフが顔写真とともに、オススメの商品を説明するものですが、表現はすべて自由。売り文句ではなく、個人の感覚で書くことを徹底しました。当然、商品を熟知しないと説明できないので、懸命に勉強し、考えて書きますよね。それも、イラストや書体にこだわったりし、みなさんが楽しんで取り組んでくれたのがうれしかったです」

商品に対する愛着が感じられる、個性的なポップ。それを通して生まれたのは、従業員とお客様とのコミュニケーション。

「お客様がじっくり楽しんで買い物してくださるようになり、結果、店全体の雰囲気が良くなりました。それを受けたスタッフは、さらにモチベーションをあげますから、彼らの成長にも自然とつながったともいえますね。そんなふうに自分で考え動くことで、仕事による喜びを見つけていける人は、どんな店舗でも重宝される人です」

多様な知識や経験が培うこれからのスタッフ像

ひとりの従業員が同じ持ち場を長く受け持つのが主流だった家電業界で、コジマでは、いくつもの売り場を巡回するシステムを採用している。

「目まぐるしく変化する商品企画についていけるように、知識力を深めていくのも大切ですが、弊社では、総合的な人間性のほうを重視します。ですので、スタッフの方には、適性や本人の意向などを考慮した上で、さまざまな売り場での経験を積んでいただきます。いずれは総合家電アドバイザーとして、さらには、シニアになっても売り場で活躍できるような人材になっていただきたいのです」

このほかにも、従業員の自発性を促すような取り組みをしていきたいと、木村社長は意気込みます。

「社員でもアルバイトでも、社会というフィールドで働いているのですから『会社が人材を育成する』という認識は間違っていると思います。僕らの役目はスタッフを育てることではなく、育成の場を提供すること。つらいことも多いと思いますが、勉強になる・ならないは自分の捉え方次第。とくにこの業界はたくさんのお客様に出会えるので、それをチャンスと思って働いてもらえたらうれしいです。これは今までの僕の経験から感じたことですが、どんな仕事でも無駄な仕事はありません。ですので、自分で選んだ仕事については、ある一定の時間は全力投球で頑張ってほしいです」

木村一義

30, September, 2013

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COMPANY PROFILE

株式会社コジマ

国内約180店舗を展開する家電量販チェーン。2012年6月には株式会社ビックカメラの子会社となり、提携を高めた戦略で成長を目指す。知識力に長けたビックカメラとアイテム数に強いコジマ電機の長所を融合したコラボレーション店舗「コジマ×ビックカメラ」にとくに注力し、現在国内4店舗がオープンしている。

今後もコラボレーション店舗を各地で展開していく予定。写真は、福岡県北九州市に2013年6月にオープンした「コジマ×ビックカメラ 小倉店」

LEADER’S PROFILE

きむら・かずよし

きむら・かずよし

1943年、三重県出身。日興コーディアルグループ会長を経て、2012年4月に株式会社ビックカメラの取締役に就任。2013年9月現在、株式会社コジマ会長兼社長。“会社を元気にするのは現場から”をモットーに、北は北海道から南は沖縄まで店舗を駆け回る日々。