オフィスの社員食堂や介護施設、近年は商業施設などでもフードサービスを展開している「西洋フード・コンパスグループ」。運営している事業所の数は、全国1800カ所以上にものぼります。なかでも最も多くを占めるのが社員食堂の運営です。毎日のように同じ人たちが昼食をとる場所であるということが、レストランとは違うところ。だからこそ、“マンネリ”をしないメニューづくりが課題となります。
「各事業所のメニューは、現場スタッフの努力やアイディアが生み出しています。試行錯誤した結果、そこだけのオリジナルレシピがうまれることもしばしば。そこで、たとえばひとつの企業から複数箇所の社食をまかされている場合、“これは東京本社の食堂のレシピでつくった特製カレーです”と特別に提供してみたりします。すると社員のみなさんは興味津々。これが、その企業内で横のつながりをもつキッカケにでもなればいいなと思っているんです。そうやって、なんでも楽しめるように考えてトライしてみることを心がけています」
そして、メニューづくりと同じく大切なのはやはりコミュニケーション。お客様とふれあう現場スタッフの仕事は、ダイレクトに会社の評価につながる重要な役割です。幸島社長が最も注意を払って確認していることは、スタッフからお客様への挨拶。年間150〜200件の事業所に実際に足を運び、社長自らスタッフ一人一人に声をかけて話をするそうです。
「仕事中は大きなマスクをしているので、普段より余計に表情が分からない。だからこそ、アイコンタクトをして、マスクの下でもきちんとお声掛けを心がけてほしいと話しています。そうすると自然と口角が上がって目もニコっとなる。マスクを通したお声掛けでも、明朗な挨拶は目や声の調子で伝わるんです。オフィスの社食も、小売り店の裏側の社食も、利用する人たちにとっては“ブレークタイム”。働く人を温かく迎えるというのは大切なことです」
研修会やセミナーに参加したり、節水や節電を実行したりするなど、現場スタッフの小さな努力もクライアント企業からの信頼を獲得する大きな要因です。こうした功績をきちんと「褒める」ことは、幸島社長が重きを置く同社の文化のひとつ。毎年優秀なスタッフや店舗を表彰する「従業員代表者集会」を全国で開催しています。
「現場の第一線にいる人がお客様に良い評価を受けたなら、それは大きく取り上げて褒めたいんです。できるだけ多くの人を表彰したいと思っています。すると、『あの人ができたなら、私も…』と、お互いをいい意味で刺激し合えますしね。お客様の心に響く『いらっしゃいませ』は、それだけで褒めるべき対象です。表彰することは、利用者が限られる社食だからこそ生じてしまう『慣れ』を抑止することにも効果を発揮していると思います」
こうした取り組みがスタッフのモチベーションをますます高め、より活気のある現場作りを実現しています。入社時は無資格でも、調理師免許(パートでも受験条件をクリアする実務経験があれば取得可能)やパティシエ、ビアマイスター、フードコーディネーターなど、働いている中でさまざまなライセンスを取得して活躍の幅を広げている例もあるそうです。幸島社長は、こうして仕事に対し前向きな姿勢を持ったスタッフの活躍の場をさらに広げて行きたいと考えています。
「パート・アルバイトでも、やる気や働く態度、そしてリーダーシップ次第では、責任ある地位でチャレンジしてもらえる環境を与えています。学歴もいっさい問わないというのがポリシー。主婦(夫)の方は勤務日数や時間の関係でパートという勤務形態を選ぶ方が多いですが、小売業界などのように、勤務時間の短い“社員”の形があってもよいのではないかと考え、実現したいと思っています。現在実際にパートタイマーで店長を務めている人がいます。上がってくる人は上がってくる。たとえ多少失敗することがあったとしても、明るい前向きな対応ができ、人と話すことが好きだという人は、当社に合っていると思います。愛嬌のある笑顔もお客様に愛される秘訣のひとつですね」
10, May, 2016