LEADER'S VISION 企業トップが働くあなたに伝えたい未来

ただ役割が違うだけ。みんな大事な 頼れる仲間 株式会社ファミリーマート 代表取締役社長 澤田貴司

社長自ら店頭に立ち 現場の努力を身をもって体感

全国に1万8000店舗以上、海外にも6000店舗以上を展開する大手コンビニチェーン・ファミリーマートの澤田貴司社長。かつてユニクロ(ファーストリテイリング)の「フリースブーム」を生み出し、クリスピークリームドーナツを日本でヒットさせ、ロッテリアの再建を成功させるなど、常に小売業界に旋風を巻き起こしてきました。そんな澤田社長は昨年9月の同職就任を前に、まず現場で店舗研修を行ったそうです。

「現場を知らなければ、何もできませんからね。僕は現場第一主義なんです。実際に働いてみると色々と難しいことが多かった。レジに立つとTポイントカードやクオカードあるいは商品券など…店舗オペレーションには膨大な種類がある。一緒に働いたストアスタッフさんに“澤田さん、何回も言ってるじゃないですか!”と注意されたことも(笑)。だから、毎日お店で頑張っておられるストアスタッフの皆さんは本当に頼もしいですよ。そんな仲間たちのために、より働きやすい職場にしていくことが僕の仕事なのだと改めて力が入りました」

現場を経験して感じたこと、それは仕事の「シンプル化」が必要だということでした。学生から主婦、シニアあるいは外国籍の方まで、年齢や国籍を問わずストアスタッフの雇用を拡大していく方針の同社にとって、働きやすい環境づくりは最も重要な課題のひとつ。澤田社長は同世代の加盟店オーナーが多いことからも、その重要性を一層強く認識したそうです。

「驚くようなテクノロジーが次々に誕生する時代だからこそ、それらを上手に駆使して、新たなシステムを構築していこうと思っています。実現可能なものはすぐにでも置き換えて、現場の人たちが楽しく働ける環境を作りたいんです。同時に、大事なのは人の感情。どのような形で地域に貢献できるか、お客様に喜んでもらえるかを常に考え、お客様が“コンビニに来る”ことに対して付加価値を付けていきたい。どれだけ機械が進化しても、“人”にしかできないことはたくさんあるんですよ」

お客様や現場の声に耳を傾けながら、テクノロジーをうまく駆使したお店作りに本気で取り組んでいくと力強く語っていました。

自慢できる商品やサービスが 楽しい職場を作り出す

ファミリーマートならではの商品やサービスの開発も澤田社長が最も尽力している取り組みのひとつ。それは、社員やストアスタッフ自らが「好きだ」と思える商品を自信を持って売ることが、仕事を楽しくさせると知っているから。商品やサービスへの誇りは、自然とお客様にも伝わっていくのです。

「自分のお店の商品が好きで、“うちの商品やサービスはね…”とか “こんな取り組みをしているんですよ”とつい自慢したくなるような環境にしたいんです。店舗を訪問すると、入った瞬間にそこが良いお店かどうかわかります。お客様にもそういった雰囲気は伝わると思うんです」

就任後には、そんな自らの熱い思いを伝えたいと、全国の加盟店や社員に向けて講演会を行い、各地の店舗にも足を運びました。そこで改めて、現場の皆さんと直接話をすることの大切さを実感したそうです。

「長期的には全国すべてのお店を訪問したい。秘書に“全店舗訪問スケジュールを作れ〜!”と指示したんです。“本当ですか!?”と驚かれましたけどね(笑)。でも、訪問すると加盟店の皆さんは喜んでくださるし、やっぱり自分の思いがきちんと伝わるんです。だから、何年かけてでも必ず全店にお伺いしたいと思っています」

毎日、全社員と話すことは叶わないけれど、日常的に自身の“ファミマ愛”を伝えるツールとして、「きょうの澤田めし!」と題した社内ブログを始めたそうです。そこには、澤田社長が毎日ファミマで購入した商品を様々な部門の社員と一緒に食べる様子が掲載されています。どんなことをするにも、まずは自らが率先して示すのが澤田流なのです。

「ファミマの商品、うまいですよ〜。よく研究して作っているな、といつも感心します。もっともっと自分から自社の商品を愛したいんです。義務ではなくて、自然に。“一緒にファミマを愛して楽しく仕事しようぜ!”ということを、僕の背中から感じ取ってもらえたらいいですね」

そんな社長の姿や思いに惹かれ、一緒に働きたいと心に決めたストアスタッフも少なくないはず。澤田社長にとっても全員が「大事な大事な仲間」であるということを繰り返し話していました。そんな仲間たちのためにも、自らの役割である「場をつくる」ことに関して努力を続けていく覚悟です。

「これからファミリーマートで働こうと考えている人に、“信じてほしい”と言うのも変ですが、仲間になって一緒に素晴らしいチェーンを作っていけたらなと思います。それぞれ役割が違うだけで社長も社員もアルバイトも関係ないんです。今この瞬間も、全国で仲間たちは頑張って働いていますし、本当に皆さん頼もしい。会社やお店のことを思って意見することはとても尊いことですから、みんなで大いに議論を交わしながら、輝かしい未来を築いていきたいですね」

澤田貴司

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COMPANY PROFILE

株式会社ファミリーマート

1973年、埼玉県狭山市に1号店を出店し、全国47都道府県に店舗を展開。2016年にはサークルK・サンクスを傘下に持つ、ユニーグループ・ホールディングス(株)と経営統合し、国内コンビニエンスストアの合計店舗数は1万8000店を超える。また、アジア諸国を中心に海外にも6000店以上を展開している。コーポレートメッセージは「あなたと、コンビに、ファミリーマート」。

2016年7月、澤田社長は湘南研修センターで挨拶やレジ操作などの店舗オペレーションを学び、東京都千代田区の「ファミリーマート一番町店」にて研修に参加しました。

LEADER’S PROFILE

さわだ・たかし

さわだ・たかし

1957年石川県出身。81年上智大学理工学部を卒業し、伊藤忠商事に入社。97年にファーストリテイリングに入社し、翌年副社長に就任。2002年に退社し、翌年投資ファンド運営会社キアコンを立ち上げる。2005年には企業経営支援会社リヴァンプを設立し、16年9月にファミリーマート社長に就任した。