【激レア 体験レポ】「はやぶさ2」に関わった企業で宇宙部品製造をサポートする“宇宙バイト”!
今回の激レア“宇宙バイト”は、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」の製造に関わった企業でのお仕事。人工衛星の断熱材を使用した部品づくりや組み立て作業などをサポートする。貴重なチャンスを得た2名の大学生が、日本の宇宙開発事業を支える職人の世界に挑む。
人工衛星開発の最前線に大学生2名が潜入!
激レアバイトの舞台となったのは、「はやぶさ2」に搭載された無人ローバーの太陽電池の開発や、断熱材の設計・開発に携わったという「オービタルエンジニアリング」。人工衛星開発の最前線とも言える企業で、激レアな体験をすることになったのは共に大学3年生というKさんとTさん。
Kさん「念願の“宇宙バイト”に採用されて、嬉しいです!大学では人工衛星の打ち上げを目標とする宇宙サークルの代表をし、自分なりに研究してきました。今回は『はやぶさ2』に搭載された技術が目の当たりに出来ることにワクワクしています!」
Tさん「大学の『宇宙地球科学』という授業で『はやぶさ』について知りました。それから興味を持って、お台場にある日本未来科学館で『はやぶさ』の展示も見ましたが、もっと積極的に携わってみたいと“宇宙バイト”に応募しました。ブルースーツの着用も楽しみです」
業務に入る前に代表の山口さんから、「オービタルエンジニアリング」の企業説明を受けた2人。ここは産学連携(※)の超小型衛星「ほどよし」の開発も手がけ、社内にはそのモックが展示されていた。
興味津々に顔を近寄せ、まじまじとのぞき込む2人。特にサークルで人工衛星作りを手がけるKさんは、細部に至るまで事細かにチェックしていた。
(※産学連携とは、民間企業と大学が共同で研究し、商品や新技術の開発等を行うこと)
人工衛星に不可欠な断熱材を使用した部品づくりに携わる。
いよいよ宇宙用部品の製造を行う“宇宙バイト”がスタート。2人はまず、人工衛星に搭載される多層断熱材MLIをカットするという業務に。
多層断熱材MLIとは、人工衛星の表面に貼られている金色のもの。太陽光が当たる所と日陰ではプラスマイナス150度も温度差があるという宇宙空間で、人工衛星や宇宙機器を守るために取り付けられている。
業務は精密性が求められるため、埃やチリを排出したクリーンルームで行われた。2人は白衣と手袋を着用し、この業務に挑戦。
「断熱材を図面に合わせてカットします。何層にも重なっているので、定規をうまく活用しながら切るように。やり直しがきかないので慎重にやりましょう」
レクチャーしてくれたスタッフさんから、そんな言葉をかけられた2人は作業に集中。少しずつカッターをずらしながら、注意深く切った。
カットしたあとは、外形5mmほどのところをミシン縫製する。なんと、宇宙用部品の製造にミシンが使われているとは驚きの事実。ただ真っ直ぐ縫うだけでなく、縫い目の大きさなどを微妙に調整する高い技術が必要とされるため、2人は端材を利用して体験だけさせてもらった。
ミシンがけの工程は2人にとって新鮮で、宇宙用部品の製造に親近感を持つ機会にもなった。
人工衛星用の部品製造はまだまだ続く!
ブルースーツに着替えた2人は「オービタルエンジニアリング」の研究開発を担う「ラボ」へと移動。そこで2人はハニカムパネルの製造に取り組んだ。
ハニカムとは「ハチの巣」のように正六角柱をすきまなく並べた構造のこと。ハニカムは少ない材料で強度が高められるため、サンドイッチのように軽量なアルミで挟んだハニカムパネルは、人工衛星の部品としても利用されている。
今回2人は人工衛星に搭載する太陽光パネルを貼り付けるハニカムパネル作りを行った。
まずはアルミ板に塗るボンドの空気を抜く作業から。専用マシンに計量したボンドをセットし、スイッチオン。しばらくすると、ボンドはぶくぶくと膨れ上っていく。
「これは空気が抜けているところ。真空の宇宙空間で空気が混入していると人工衛星が壊れる原因になるなど、トラブルにつながります」と山口さんから教えられた2人は、その状況を興味深そうに観察。
続いて、空気が抜けたボンドをアルミ板に塗布。
「均等になるように隅まできれいに塗りつけて」という山口さんの指示に従って、2人は慎重に作業を行った。
ボンドを塗ったアルミ板を、ハニカムの両面に貼り付ける作業に。慎重を期し協力して作業した2人は無事に完遂。
このパネルは重しをして1日置かなければならず、完成を見ることはなかったが、緊張する作業の連続に精度の高さが必要な宇宙部品製造の難しさを体感できた。
その後は、人工衛星の底面となる素材のねじ穴の補強作業に。
これはアルミ板に掘られた小さなねじ穴に、コイルをインサートするという繊細なもので、宇宙空間であってもねじがゆるまないように強度と耐性を上げるための重要な業務。やり方を教わった2人は、専門の器具を駆使しながらねじ穴にコイルをセット。
注意深く作業を進める2人だったが、時に「あれ!?コイルが入っているかどうか分からない!」とスタッフの方に助けを求めることも。そんな場面も見られたが、2人は集中力を欠くことなく業務を行った。
2人が手がけた断熱材やハニカムパネル、ねじ穴を補強したアルミパネルは、のちに試作用の人工衛星に取り付けられる予定だ。
新たな職業観を見出せた“宇宙バイト”。この経験を将来に!
1日通して、宇宙用部品の製造に携わった2人。手にしているのは、業務の途中にそれぞれが作ったハニカムパネルのミニチュアだ。
「今回の記念に」と手渡された2人は嬉しそうな笑顔で、今回お世話になった山口さんにごあいさつ。ここで激レアバイトは終了となり、締めくくりに本日の感想を伺った。
Kさん「皆さん親切に部品の役割や作業手順を話してくれたのでとてもやりやすく、世界レベルの宇宙用部品の製造技術を実体験できたことは財産です。将来ものづくりに携わりたい私にとっては視野が広がる機会で、宇宙に関わる職業に就きたいという気持ちもさらに強まりました!」
Tさん「今回の経験はすべてが新鮮でした。宇宙用部品を作る工程にミシンがけがあったり、身近な業務もあったので親しみを感じることも。ものづくりの現場が分からなかった私にとって、この体験は世界観を広げる経験になりました。今後、就活で行う企業研究に活かしていきたいです」
2人の職業観に影響をもたらした“宇宙バイト”。ものづくりの現場で得た経験は、2人の将来に活かされていくに違いない。
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