【激レア 体験レポ】日本が誇るものづくりの現場、「はやぶさ2」関連企業で製造サポートする“宇宙バイト”
今回の激レア“宇宙バイト”は、小惑星探査機「はやぶさ2」に関わった企業でのお仕事。設計のわずかな狂いも許されない宇宙関連部材を製造する、一連の流れが体感できる激レアな業務にバイトメンバーが挑む!
2名の大学生が、宇宙開発の最先端へ!

(左)Kさん (右)Mさん
今回の勤務地は、スーパーレジン工業株式会社。各種繊維素材を樹脂と複合化させた繊維強化プラスチック(FRP)成形専業メーカーとして、航空宇宙産業向けの製品を手がけている企業だ。
採用されたバイトメンバーは、KさんとMさん。
Kさん「大学で機械工学を学んでいます。ゆくゆくは開発や生産技術に関する仕事に就きたいと思っているので、実際のものづくりの現場が見られることはすごく嬉しいです。将来がイメージできる1日になると期待しています」
Mさん「私も理系で鋳造・旋盤に関する工作技術を学んでいるので、教えていただいたことはスムーズに理解できると自信を持っています。星がすごく好きで、宇宙全般に興味があるので、宇宙開発のメーカーで仕事できることにワクワクしています!」
と、意欲を語った2人。ブルースーツに着替えて、いよいよ業務のスタートだ。
宇宙環境に耐えうる複合材を作るための、材料設計をする
最初の業務は研究開発部門のお仕事。担当の方から、「はやぶさ2は、多くの我が社の部品を使って頂いてます」という話を聞き、2人は興味津々。
「FRPといっても、繊維と樹脂という材料の組み合わせによって強度や性質が異なってきます。宇宙用は、強度と軽さの両立が必要です。宇宙空間で部品が壊れてもいけないし、軽くなければ、打ち上げコストもかかりますから」と説明する担当の方。
そして、2人にミッションが与えられた。
「いま私達は『Lite BIRD』という衛星の開発を行っています。ここで使用する材料の設計をお二人にお願いします」
材料計算には研究開発部で実際に利用している独自システムを使用。2人は教わりながら、慎重にデータの入力を進める。
入力を終え、担当の方からチェックをしてもらったバイトメンバー。
「あれ?小林くんの数値は、私が想像しているものと離れすぎているなぁ」
指摘があったため、Kさんは入念に再チェック。
「宇宙用の材料は間違いがあってはいけない。我々も必ずダブルチェックをしています」
担当の方のその言葉に、2人は現場のシビアさを実感。Mさんは担当の方からチェックを受け、設計を完了。Kさんは時間切れで最後までは遂行できなかった。
人工衛星の試験機用のパネルの仕上げ業務に取り組む
続いて、バイトメンバーは製造部での業務。ここでは人工衛星の試験機に搭載する部品の仕上げを体験することに。
「人工衛星の部品は軽く、強度を保つため、このようなハニカム構造のサンドイッチパネルを使っています。2人には、表面からはみ出した余分な部分をカットする仕上げを行ってもらいます。これも軽量化につながる重要な業務なので、よろしくお願いします」
さらに「宇宙開発の関連企業と聞くと一見華やかですが、地道な作業が多いんです(笑)」と言いながら、担当の方から2人にレクチャー。
さっそく業務に取り組む2人。
脇目も降らず、ただ目の前の部品と向き合い、作業に没頭した。
きれいに仕上げた部品を、2人は担当の方にチェックしてもらう。
「2人とも丁寧な仕事で合格です!試作機ではなく、実際の人工衛星に使用してもいいくらい」
お褒めの言葉をもらったバイトメンバーはとても嬉しそう。充実した表情で製造部の業務を終えた。
品質管理部での業務!宇宙空間でも耐えうる品質かどうかをチェックする重要なミッション。
次にバイトメンバーは品質管理部での業務に取り組む。担当の方から「ここで使用するのは、実際の製品と同じ試験片。これがダメだと製品もダメということ。人工衛星が宇宙に行ったら、もう直すことができないので、製品の品質管理はとても重要な部門です」と説明され、気を引き締め直す2人。
バイトメンバーは「はやぶさ2」と全く同じ材料で使ったサンドイッチパネルの表面板の強度を計測することに。まずは6種類のカーボン片の厚さや幅の計測を、2人は手分けして行っていく。
Mさんは「私、この計測器使ったことがあります!」と自信を持って進めていた。
続いて、カーボン片の引っ張り強度の計測に。装置にカーボン片をセットし、切れるまで引っ張る。強度はデータ化され、パソコンで確認できるようになっている。
2人は担当の方から装置の扱い方の説明を受け、早速業務へ。カーボン片をセットして装置を作動させた。カーボン片が切れる「パン!」という大きな音に驚きつつも、冷静にデータをチェックする2人。品質管理の業務も滞りなく遂行した。
「はやぶさ2」の開発に携わった方からの貴重な話を伺う。
現場での業務を終え、会議室に戻った2人を待っていたのは、「はやぶさ」の開発に携わった理事の勝山さん。その方が、スーパーレジン工業における宇宙開発事業の始まりなど、貴重な話を2人に語ってくれた。
中でも、印象的だった話は、「技術とは、まずは徹底的に調べて真似をすること。そこから独創性が生まれ、技術が進化する」というもの。バイトメンバーは、宇宙開発の第一線で活躍してきた方の生の言葉を聞き、技術者としての心得を学んだ。
最後に、製造部の現場でお世話になった方ともゆっくり話す時間も設けられた。
「私達は、人工衛星だけでなく、パソコンや携帯電話、自動車用の部品なども作っています。一般の人が見えないようなものばかりですが、クライアントの要望に添う部品を納品するがミッション。中でも、『はやぶさ』は達成感がありました。打ち上げの成功は嬉しかった」
普段の生活では触れ合うことのないものづくりの現場の人々から、貴重な話が聞け、2人も充実感あふれる表情に。この時間を終えて、激レアバイトは終わりとなった。
宇宙開発の第一線の企業で働いた2人。彼らにとって今日の経験とは……?
Kさん「宇宙開発では、部品の基礎となる材料がいかに重要かというのを実感。また、漠然としていたメーカーという仕事の流れも理解できました。まだ私は大学院で研究を続けますが、その後の将来を見据えた経験ができました」
Mさん「ハニカムパネルの仕上げの作業は、楽しかったです。材料に対する知識がなかったので勉強にもなりました。私は今後、研究者になるのか、就職をするのか、将来についてまだ悩んでいる最中ですが、熱意を持ってものづくりを続ける皆さんのお話が聞けて参考になりました」
宇宙関連部材の製造現場で貴重な体験をしたバイトメンバー。この経験を経て、2人は夢に向かって大きく羽ばたくことだろう。
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