【激レア 体験レポ】SLバイト第2弾! 大井川鐵道SL始発駅の1日駅長バイト!
「シュッ! シュッ! ボーッ!」
目の前に本物のSLが! その大迫力にただただ圧倒される…。
今回の激レア「鉄道バイト」は、大好評だった大井川鐵道の車掌バイトに続く第2弾。新金谷駅の「1日駅長」のお仕事だ。全鉄道ファン憧れの激レア業務についたバイト君の一日をご紹介。いざ、出発進行!
まるでタイムスリップ! 漂うレトロ感に興奮
90年以上の歴史をもつ大井川鐵道。ほぼ毎日、本物のSLが大井川沿いを走る。今もっとも注目を浴びている大人気ローカル線だ。
今回の激レア業務は、この大井川鐵道のSL始発駅「新金谷駅」で1日駅長をするというもの。
「まるでタイムスリップしたみたいですね!」
レトロ感漂う新金谷駅の応接室に通されたKさん。今回の激レアバイトに採用された大学3年生だ。
「地方行政に興味があり、将来は地方が活性化するまちづくりの力になりたいと考えています。大井川鐵道はまさにその取り組みを実践していて、以前から注目していました。今日は駅長として精一杯運営をお手伝いしたいです!」
まずは任命式がとり行われた。
「新金谷駅1日駅長のアルバイトを命ずる!」
幹部職員さんから辞令を受け取ったKさん。憧れの業務の幕が上がる。
真っ赤に燃える窯に石炭を 運転室は超高温!
“ナッパ服”と呼ばれる昔ながらの作業服に着替え、SL整備工場へ向かう。
出発準備中のSLが眼前に現れた。
「シュッ! シュッ!」
蒸気の音。石炭が燃える匂い。黒光りする重厚なSLは、間近で見ると圧倒的な存在感だ。
最初の業務としてSLの窯に石炭をくべる作業を命じられ、運転室に上る。
「もっと奥まで、広がるようにくべて!」
運転士さんの指導を受けながら、真っ赤に燃える窯に何度も石炭を放り込む。運転室はすさまじい高温だ。たちまち汗が吹き出る。
「これ、夏場は大変でしょうね!」
「その通り。60度くらいになるから大変だよ!」
次に車体を磨く作業。
「ナンバープレートはSLの顔。ピカピカに磨いてね!」と整備士さん。
SLに愛を持って整備しているのがよく分かる一言だ。
ピカピカの顔になったSLを見送り、線路に残った石炭の燃えがらをスコップで片付ける。一汗かいたところで整備工場での業務は終了。続いては駅舎業務だ!
お客様の切符に鋏を! ホームでは出発合図も!
ナッパ服から制服に着替えたKさん。
駅事務室で担当駅員さんにご挨拶。
時刻表の見方や、各駅の名前の読み方などを丁寧に教えてもらう。
さらに入鋏(にゅうきょう)のしかたを教わる。
現在ではめったに見られなくなった、厚紙の硬券切符にハサミを入れる改札。昔の雰囲気を大切にする大井川鐵道ならではのサービスだ。
「回収した切符は『もしよろしければ記念にどうぞ』とお客様に渡してあげてください」と駅員さん。なんとも心憎い配慮だ。
そこへお客様が切符を買い求めに来た。Kさんが初めての入鋏! しかしうまくいかず、まごまごしてしまう。
「ハサミの上下が逆ですよ。だからうまく切れなかったのです」と駅員さん。
「ああ! すみません!」
ベテラン駅員さんの華麗な改札鋏さばきを見せてもらって勉強だ。
「おーい。1日駅長さん、ちょっとこっち来てー」本物の駅長さんに呼ばれる。
列車への発車合図の出し方、旗の持ち方などを指導してもらう。
「次の普通列車で出発合図を出してみなさい」
駅長さんの指示を受けながら、実際にホームで普通列車に合図を出した。
「よし! じゃあ、この後のSLでも出発合図を頼むよ!」
「はい!」
大迫力のSL! 手を振るお客様に応える!
SLがホームに入線した!
お客様をご案内するアナウンスをKさんが命じられた。
「本日は大井川鐵道をご利用くださいまして誠にありがとうございます。たいへんお待たせいたしました。ただ今から改札を行います」
やや緊張気味だったが、しっかりとしたアナウンスだ。
そして改札口に立ち、詰めかけた大勢のお客様の切符に丁寧に入鋏していく。
その切符を大事そうに受け取り、ハサミの痕をうれしそうに眺めるお客様。今日の大切な思い出の品となることだろう。
かなりの数のお客様をホームに送り出した後は、出発合図を出す大役だ。
自らもホームに向かい、定位置にスタンバイ。
「出発進行!」大きく手をあげると、
「ポーッ!」ガタン、とSLが動き出す。
すると窓際のお客様が笑顔で手を振ってきた。
「いってらっしゃい!」1日駅長さんも手を振り笑顔で応える。
“SLかわね路1号千頭行き”は無事、Kさんの合図で新金谷駅を出発したのだった。
線路のポイントをピカピカに! 地道な作業を黙々と
昼食後も改札業務に励んでいた1日駅長さん。
今度は線路の切り替えポイントのメンテナンス作業を命じられる。再びナッパ服に着替え、ポイントへ。
手動のポイントがスムーズに動くように床板をきれいにするのだ。油を撒き、こびりついた汚れをコテと布で落としていく作業は意外に重労働だ。
地道な作業を黙々と続ける。
「この作業、いちばん好きかもしれません。楽しいです」と頭の下がる言葉。
長い時間をかけ、床板は見違えるほどピカピカに。駅員さんたちもKさんの仕事ぶりを絶賛!
さらに動きやすくなるように潤滑油を塗り作業完了。
実際にポイントを動かし、感触を確かめる。
「動きやすくなりましたね!」
自分の仕事に満足した瞬間だった。
完全に駅員の一員! お客様の笑顔は忘れない!
だんだん日が傾いてきた。
すっかり制服姿が板についてきた1日駅長さん。改札業務もかなり慣れたようだ。
「そろそろお出迎えの準備をするよ!」
午前中に出発したSLがお客様を乗せて戻って来る時間だ。
「おかえりなさい」と書かれた手作りプラカードを持ち線路脇にスタンバイ。
駅員総出で手を振りSLを出迎える。Kさんもこの時は完全に駅員の一員の顔になっていた!
そしてついに最後の業務、次の日の運行に備えSLを方向転換させる「転車台」回し作業だ。
転車台の中に入りスタンバイする。
先ほど到着したSLがやって来た!
そして目の前で停車!
次いでKさんがボタンを操作。SLがゆっくりと回転し始める。
180度回転したところでストップ。転車台操作は無事完了。
「一生転車台に乗れないし、ボタンを押すこともないでしょう。感動しました!」
本日の仕事を終えたSLは整備工場へ帰っていく。
そして1日駅長の仕事も終わりの時を迎えたのだ。
Kさん「全てが素晴らしい経験で充実した一日でした。入鋏した時や出迎えた時のお客様の笑顔は忘れられません! 人を楽しませるっていいな、と思いました。地方活性化のために、人が喜ぶようなことをしたいという思いが強くなりました!」
今度はSLの乗客として個人的にまた来ます、と言うKさん。すでに顔を覚えられた駅員さんに、ポイントの掃除手伝ってとお願いされたらどうする? と問うと「もう、喜んでやりますよ!」と最高の笑顔を見せてくれた。
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。