寒暖差アレルギーとは?症状の特徴や和らげる方法など解説【医師監修】
季節の変わり目や寒い屋外から暖かい室内に入ったときなどに、くしゃみや鼻づまりなどアレルギーのような症状が出たことはありませんか? それは「寒暖差アレルギー」かもしれません。今回、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生に、寒暖差アレルギーについてお話を伺いました。
寒暖差アレルギーとは
寒暖差アレルギーとは、急激な寒暖差により、鼻水や鼻づまり、咳、アレルギーのような症状が出ることを指し、正式名称は血管運動性鼻炎と言います。風邪やアレルギー性鼻炎と同じような症状が特徴ですが、医学的にはアレルギーではなく、急激な温度差による自律神経の乱れで起こるものです。自律神経は、血管を収縮・拡張させて外気との温度差を調整しますが、温度差が7度以上になるとうまく働かず鼻粘膜の血管が拡張し、アレルギーのような症状が出ることがあるのです。
同じように寒暖差で起こる症状として寒暖差疲労があり、冷えや首・肩の凝り、倦怠感、頭痛などさまざまな形で現れます。
ここでいう寒暖差には大きく3パターンあります。
②週単位で暑い日と寒い日の平均気温が7度以上違う場合
③室内外で温度が急激に変わる場合
春や秋など気温差が顕著に出る季節や、冬や夏など室内外の温度差が大きいと症状は出やすいです。性別問わず、20代~50代まで幅広い世代の人が症状を感じており、一度症状が出た人は同じ条件が揃うとまた発症することが多いので、自分は寒暖差アレルギーだと知っておくと対策がしやすくなります。
寒暖差アレルギーの症状とは
寒暖差アレルギーの症状や、風邪や鼻炎、花粉症との見分け方について解説します。
寒暖差アレルギーのよくある症状
細かい血管が集まっている鼻は反応しやすく、鼻水や鼻づまり、くしゃみといった鼻炎の症状がある人が多いです。また、目のかゆみや皮膚のかゆみ、じんましんや咳が出る人もいて、個人差があるのが特徴です。発熱はあまりありませんが、鼻炎症状が悪化して熱が出ることがあるので注意しましょう。
風邪やアレルギー性鼻炎との見分け方
寒暖差アレルギーと季節性やハウスダストなどのアレルギー性鼻炎は症状が似ています。見分け方の一例は、目や皮膚のかゆみなどを伴うようであればアレルギー性鼻炎、鼻炎のみの症状であれば寒暖差アレルギーであることが多いです。また、鼻水がどろっとしていて発熱や喉の痛み、咳などを伴えば風邪、鼻水が透明でさらさらしており、鼻炎のみなど症状が少なければ寒暖差アレルギーである可能性が高いです。
寒暖差アレルギーかは、複数の症状から複合的に判断しますが、非常に見分けるのが難しいので、症状が長く続く場合は、医療機関を受診して、アレルギー検査をしてみると対策がしやすくなります。発熱など風邪症状がないのに鼻炎が続くので病院に来てアレルギー検査をしたところ、季節性やハウスダストなどのアレルギー性鼻炎ではないとわかり、寒暖差アレルギーと診断されるケースが多いです。
寒暖差アレルギーを和らげる方法
症状を和らげる即効性を重視するなら、病院で点鼻薬や内服薬を処方してもらうのがおすすめですが、自宅でもできる簡易的な対策としては、以下の方法があります。
首回りなど衣類を使って体温調整を行う
なるべく温度差を身体に感じさせないよう、首回りや腰回りなどを冷やさないよう、衣類で温度調整をするようにしましょう。
鼻と口をマスクや布で覆っておく
冷たい外気を直接吸い込まないよう、鼻と口をマスクや布で覆っておくのがいいでしょう。特に鼻は毛細血管が多く気温差を感じやすくなります。マスクがなければタオルなどで覆っておきましょう。
40度前後の湯で10~15分程度入浴する
体温より少し高めの38~41度のお湯に10~15分を目安に入浴すると身体が温まり自律神経が整いやすくなります。ただし、温まりすぎると鼻が詰まることがあるので、症状が出ている人は15分以上の長風呂を控えてください。
寒暖差アレルギーを予防する方法
寒暖差アレルギーの症状が出やすい人は、普段から自律神経の乱れを防ぐことが大切です。以下の方法を知っておくと、寒暖差アレルギーの症状を抑えることにもつながります。
生活リズムを整え、入浴と質の良い睡眠をとる
規則正しい生活と、入浴の温度と時間をコントロールして身体を温め、眠りの質を上げることは自律神経を整えるのに有効です。人間の身体は入浴後すぐよりも、体温が下がり始めた頃に入眠する方が深い眠りにつけるため、寝る90分ほど前に38~41度の湯で10~15分の入浴がおすすめです。眠りはじめの90分はゴールデンタイムと呼ばれ、身体を回復させる成長ホルモンが分泌されるので、入浴と睡眠はセットにして考えるようにしましょう。
バランスのよい食事を心掛ける
辛いものなど刺激物の摂り過ぎに注意し、暑い時期は体を冷やす食べ物、寒い時期は体を温める食べ物を中心にバランスよい食事を心がけましょう。また、腸内環境がよくなると、副交感神経の働きがよくなり自律神経が整いやすくなるため、ヨーグルトや発酵食品などもおすすめです。
症状がひどい時は医療機関の受診を
症状がひどい場合には医療機関の受診をおすすめします。鼻炎の症状が強い場合は耳鼻科、目のかゆみが強ければ眼科、皮膚のかゆみが出ていれば皮膚科、症状が複数ある場合には総合的に診てもらえる内科など、症状に合わせて受診するといいでしょう。
寒暖差アレルギーは条件が揃うと何度も症状が出ることが多いです。病院でアレルギーチェックをして季節性やハウスダストなどのアレルギーではないことを確認し、予防しながら上手に付き合っていくことが大切です。
せたがや内科・神経内科クリニック
院長・久手堅司(くでけんつかさ)先生
医学博士。2013年にせたがや内科・神経内科クリニックを開設、寒暖差疲労外来のほか、自律神経失調症外来、気象病・天気病外来、頭痛外来、肩こり・首こり外来などの外来診療を行っている。著書に『気象病ハンドブック』、監修に『毎日がラクになる!自律神経が整う本』などがある。
取材・文 荒川文乃
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。