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2015年08月31日

なぜ人は「面倒くさい」と感じるのか?

Sleeping panda in its natural habitat.

テレビでおなじみの精神科医・名越康文(@nakoshiyasufumi)が心の悩みにズバッと答える! この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

「退屈」という人間にとっての一大テーマ

「面倒臭い」という心理とどう付き合っていくかというのは、意外に深いテーマなんです。

「面倒臭い」というのはどういうことか。それは、いま自分が置かれている状況や取り掛かっている物事が、自分にとって「退屈である」ということにほかなりません。そして「退屈である」というのは実は「怒り」なんです。

ただ、退屈=怒りと言われても、多くの人はちょっとピンとこないかもしれませんね。というのも、「怒り」というと一般的には「カチンとくる」とか「ムカッとする」という、どちらかというと瞬間的な怒りをイメージされる人が多いから。でも、「退屈」というのは、そういう瞬間的な怒りとは異なる、持続的な怒りの感情のことです。

たとえば僕は数ある仕事の中で「書類を書く」という仕事が面倒で退屈で仕方がありません。では、退屈=怒りであるとすれば、僕はなぜ怒っているのか。それは、「書類を書くというのは、同じことの繰り返しで新鮮味がなく、まったく興味が持てない」(と感じる)からです。

面倒くささは退屈さで、退屈さは怒りである

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シーシュホスの神話、というのがあります。山頂まで大きな岩を転がして押し上げるのだけど、山頂まで押し上げると、その大きな岩はゴロゴロと、山の麓まで転がっていってしまう。シーシュホスは、また山を降りて、山頂まで岩を転がして登っていかなければならない。そういう神罰の話ですが、これは、「同じことを繰り返す」というのは人間にとって根源的な苦痛であり、怒りであるということを雄弁に物語っています。

しかし、注意しておくべきことは、ここで問題となるのは「大きな岩を山の上まで転がす」とか「つまらない書類を書く」といった仕事そのものではなく、「書類を書くことが嫌いな僕」である、ということです。というのも、「書類を書く」という仕事自体は実は「同じことの繰り返し」ではないからです。生命保険の書類もあれば、仕事の契約書もある。同じ内容でも、今日の夜書くのと、明日の朝書くのでは気分が違う。「書類を書く」といっても、何から何まで「同じ」ではないのです。

でも、僕は「同じ」だと感じる。だから退屈し、怒りを覚える。つまり、「書類を書くというのは、同じことの繰り返しで新鮮味がない」という僕の固定観念によって、僕にとっては、「書類を書くのは面倒臭い」としか思えなくなっている。この固定観念こそが、退屈=怒りであるゆえんなのです。

退屈なことを退屈に感じないように工夫する

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では、その固定観念を取り払って、書類を書くという仕事を百パーセント楽しめるように心持ちを変えればいいのか? 理屈でいえばその通りです。しかし、実際にはそう簡単にはいきません。実際に僕たちができることは、退屈でしょうがない「書類を書く」という仕事を、たった2割でもいいから、クリエイティブに感じられるように工夫する、ということです。

自分が退屈だと思っているものを、百パーセントクリエイティブで楽しい作業にできるかというと、なかなか難しい。僕もまだ、道半ばです。でも、大切なことは「退屈というのは、私の心の中にある怒りである」ということを自覚するということ。そして、その心の中を少しでも明るく、クリエイティブなものに変えていこうとする姿勢なのです。

このとき、あまり頭の中にある理屈や思考をコントロールしようとするのではなく、「身体」からアプローチしていくのがひとつのコツです。たとえば僕は苦手な書類を書かなければいけないときは、とにかく姿勢を整えて椅子に座り、フーッと深呼吸をしてから書き始めるようにしています。あるいは、いつも仕事をしている場所とは違う場所に行って、ちょっと新鮮な気持ちで取り掛かるようにする。

そうやって、自分の中に「また同じ仕事だ」という退屈が生じてこないように、工夫をするのです。

「違い」に気づくことは成長への大きな一歩である

「同じ」というのは固定観念です。どんなに楽しいことであっても、それが自分の経験したものと「同じ」だと思った瞬間、人は退屈し、面倒臭くなってしまいます。でも本当は、人間は「同じ」であることができません。例えば文字一つ書くにしても、今書いた「あ」の文字と、次に書いた「あ」の文字は違う。形がほとんど同じであったとしても、滑らかさや、スピード感や、気合が違う。問題はその「違い」に気付けるかどうか、です。

同じようなことをやりながら、本当は同じことをやっているのではなく、一回一回がまったく違う、ということに気づくということ。それは、その人が成熟していく上で、大きな一歩といえます。そういう意味では、自分の中の「退屈」や「面倒臭い」という感情に向き合うことは、人が成長する大きなチャンスだとみることもできるのです。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

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