アーティスト・松下優也(X4)インタビュー『役者は新しい世界を発見できて、音楽は自分自身を表現できるもの』
ソロアーティストでデビュー以降、2015年からはYUYAとしてX4(エックスフォー)の活動もスタートしている松下優也さん。アーティスト活動と俳優業を両立している松下さんにそれぞれにかける想いをお伺いしました。さらには10月4日にリリースしたX4のmini Album『XTIME』制作エピソードについても語っていただきました。
X4は、人間のタイプも音楽的なバックボーンも違う5人の集合体
――X4のミニアルバム『XTIME』は、ロック、ポップス、ヒップホップ、R&Bなど、色彩豊かな作品になっていますね。
作っていく中で自然とそうなっていったんですけど、これまでに増して5人それぞれの個性が際立つ作品になったと思います。
――SHOTAさんとJUKIYAさんがメインとなるラップ曲「Attention Please」、KODAIさんが作詞しメインとなるロック曲「月夜」が収録されていることも注目ですね。
そうですね。X4でデビューして2年、SHOTAとJUKIYAが加入してからは約1年8ヵ月。グループとして5人の足並みをそろえるためにいろいろ試行錯誤してきた中で、それぞれに成長してきたからこそ、そうやって個の色を出せるようになったんです。
人間のタイプも音楽的なバックボーンも見事に違うし、歌い方ひとつとってもそれぞれの魅力があって、それがX4の武器なんだということを、あらためて思いました。
――松下さんが出演するAmazonプライムビデオ配信のドラマ『フェイス -サイバー犯罪特捜班-』の主題歌でもある「最後の言葉」の歌力や、松下さんが作詞した「君がいるから」のファンへの愛と感謝も響きました。
「最後の言葉」は結成当時からあった曲で、ドラマ主題歌に起用されるにあたり、リアレンジをしてダンスをつけました。ドラマにも合っているし、新たな曲として生まれ変わって、言っていただいた通りに5人のヴォーカル力も生きているなと思います。
「君がいるから」は、自分たちが思っていることを素直に言葉にしました。僕たちががんばれるのはみんながいてくれるからだし、逆に僕らの音楽がみんなの支えや救いになったらいいなと思います。ファンのみんなが決めてくれたタイトルも含め、これからずっと大切に歌っていきたい曲になりました。
――グループとしては、この先どんな夢や理想があるのでしょうか。
先日、1年半ぶりくらいにフリーライヴをやったんですけど、まずは知ってもらう機会をもっと増やしていきたいのと、曲作りや裏方的なことにも、より積極的に自分たち自身が関わって、成長していきたいな思っています。
X4というベースがあった上で、異なる価値観を持っている5人がそれぞれにいろいろなフィールドで活躍できるアーティストでありたいし、あってほしいですからね。お互いに高め合って、多くの人の心に響く音楽を作っていきたいなと思います。
芝居をやったことで、最初から決めつけずに何でも挑戦することの価値に気づけた
――では、ここからはお仕事論についてもお伺いしたいのですが、ミュージシャン以外にも、俳優としても活躍されている松下さんですが、最初から音楽活動と俳優活動を両立させたいと思っていたのでしょうか。
僕はもともと音楽が好きで、18歳で歌手デビューした当初は、歌も芝居もやっていきたいという気持ちは全然なく、むしろ芝居には興味がなかったんですよ。だから、歌手デビュー直前に出演した映画『悲しいボーイフレンド』は、右も左もわからないまま撮影に臨んで。
でも、初舞台にして初主演を務めさせていただいた『音楽舞闘会 黒執事 〜その執事、友好〜』(2009年)をきっかけに舞台の世界に飛び込んでみたら、どんどん芝居がおもしろくなっていったんです。それもあって、最初から決めつけずになんでもやってみるべきだなということに気づいたし、人からのアドバイスも素直に聞けるようになりました。
――その姿勢は人生を豊かにしますよね。しかし、初舞台にして初主演というのは、相当なプレッシャーがあったのではないでしょうか。
僕よりも周りのほうが“こいつで大丈夫か?”っていう不安が大きかったんじゃないですかね(笑)。今出演しているドラマ『アシガール』しかり、漫画原作の作品に出演するというのは今となっては相当プレッシャーを感じますけど、当時の僕はその世界の奥深さを知らなかった分、怖いもの知らずなところもあって、そこまで気負わずにできたというか。
思っていた以上に高く評価していただけたこともあり、役者としてすごくいいスタートがきれました。
新しい役を演じるたびに自分の人生が豊かになっていく
――音楽は自らを表現するもの、お芝居は役を演じるものというイメージがあるのですが、松下さんとしては違いをどうとらえていますか?
まさに、音楽は自分がどう歌うか、どうメッセージしたいかというものですけど、芝居は他人になるもの。僕からしたら、まったくの別物です。芝居をするときには、普段の自分とガラっと切り替えて、入り込んでいますね。
――役に入り込むために、松下さんはどういうことをされているのでしょうか?
舞台中、極限の集中状態になることがあるんですよ。僕は“ゾーン”って言っているんですけど(笑)。そういう時は、半分自分だけど半分自分じゃなかったりするんです。
誰かを演じるとなると、これまで口にしたことのない言葉が吐けたり、普段は感じたこともない感情が出せる。自分だけの人生だったらできないことができて、言わないことを言えて、ほかの人生を生きられるというのが、芝居のおもしろいところですね。
芝居をするようになって、人間はいろいろな考え方、感じ方をするものなんだということを知って自分自身の許容範囲が広がったし、いろいろな役を演じるたびに自分の人生が豊かになっていくような感覚があります。
ただ、陰鬱とした役を演じている期間は普段も暗くなってしまったり、強気な役を演じている期間は普段もそういう振る舞いになってしまったりとか……。
――憑依型の役者なのでしょうね。
意識してそうしているわけではないし、どちらかというと、そういうタイプではないと思っていたんですど、どうやらそうみたいです。役者として大切なのは、いかに演じる人物になりきれるか。
狂気的な役を演じるなら、相手の役者や観客に恐怖を覚えさせないといけないし、今はそういう覚悟で舞台に立っています。
自分の音楽や歌が、誰かの救いや支えになれたら
――いっぽう、音楽を作って歌う上で大事にしているのは、どんなことなのでしょうか。
僕自身が音楽に救われてきたから、今度は自分の音楽や歌が誰かの救いや支えになれたらいいなということは、ずっと思っています。たぶん、俳優は適職で、音楽は天職なのかな。
11月からはソロとして久々のショートツアー“Anniversary LIVE”、1月からはソロデビュー10周年を祝う“LIVE TOUR 2018~10th Anniversary~”を開催するんですけど、僕なりに歌や言葉で描く理想の世界を、みなさんと共有したいなと思っています。
――X4というグループでの活動にも、ソロ活動にも、それぞれの魅力がありますね。
そうですね。X4は個性の違う者同士が交わる化学反応がおもしろいし、ソロは衣装やライヴの演出にしても自分色で染められるもの。どちらにも、醍醐味があります。
――その上で、歌が好きだという想いはずっと変わることはありませんか?
小さいころから好きだったし、デビューしてからもそれは変わらないです。もちろん疲れたり壁にぶつかることはありますけど、嫌いになったことはないですね。音楽も芝居も、きっとこの先ずっと続けていくんだと思います。
――今後、叶えたい夢は?
芝居では、まだまだいろいろな役に挑戦してみたいですね。音楽に関しては……音楽ってゼロから作るものだと思っているので、そこはずっと表現し続けたいなと思っています。曲作り、歌詞、衣装やMVのプロデュースもしたいですね。やるほどに、大変なことも増えますけど期待感しかないです。
夢への道を太くするための“寄り道”はありだと思う
——ちなみに、新しいことに挑戦するほど、たくさんのスタッフの方たちともお仕事をされる機会が増えるわけですが、心がけていることはありますか?
僕はあまり自分から声をかけに行くほうではないんですけど、それぞれの分野で活躍されている方たちは、自分にないものを持っているので、なるべくコミュニケーションはとるようにしています。そういう好奇心は、いつまでも持っていられたらなと思いますね。
——人からの影響は受けやすいですか?
そうですね。昔は自分の意見を通すことが多かった気がしますけど、今はスタッフの意見を聞くことも増えました。みんながX4しかり、自分のことを思って意見をくれるし、そこで気づかされることも多いです。
――柔軟に意見を取り入れられるのは素敵ですね。では、松下さんから夢を追う人に伝えたいことは?
これと決めて一本道を突き進むのも素敵ですけど、僕みたいにいろんなところに寄り道ながら道を太くしていくのもありだと思います。僕自身もそしたら、いろんなことに気づけたりもしますから。たまには寄り道して、楽しく夢に向かっていってください。
松下優也(まつした ゆうや)
2008年11月26日シングル「foolish foolish」でデビュー。ソロアーティストとして来年は10周年を迎える。俳優としても、2009年に舞台『音楽舞闘会 黒執事 〜その執事、友好〜』で初主演、2011年にTBS・MBS系ドラマ「カルテット」で主演&主題歌をつとめるなど多方面で活躍。2016年の連続テレビ小説 『べっぴんさん』での岩佐栄輔 役も話題となった。現在、NHK土曜時代ドラマ「アシガール」にも出演中。X4ではYUYA名義で活動中。
X4(エックスフォー)
YUYA(ユウヤ)、KODAI(コーダイ)、T-MAX(ティーマックス)、SHOTA(ショウタ)、JUKIYA(ジュキヤ)の5人からなる、関西発のヴォーカル&ダンスユニット。2015年に松下優也を中心に結成。
◆松下優也 OFFICIAL SITE:http://www.matsushitayuya.com/
◆松下優也Official Twitter:@U_staff
◆X4 OFFICIAL SITE:https://xxxx4.jp
編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:杉江優花
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。