柏木ひなた(私立恵比寿中学)インタビュー「人に流されず自分の意見を言うことは一番大事だと思います」
10周年イヤーの2019年、精力的な活動を展開した私立恵比寿中学(エビ中)。抜群の歌唱力でグループを支えてきた柏木ひなたさんは小6で加入して、今年20歳になりました。川谷絵音、石崎ひゅーい、ポルカドットスティングレイら多彩な作家陣を迎えたアルバム『playlist』の発売を前に、成長の足跡を振り返ってもらいます。
歌は好きでも人前に立つのは怖かったです
――エビ中に加入したのは小6のときでした。
小5で事務所のスターダストにスカウトされて、しばらくして石丸電気にエビ中のライブを観に行きました。ちょうど安本(彩花)の誕生日で、トマトの乗ったケーキが出てきて、「何だ、これは?」と思いました(笑)。
そのライブのあと、急にスタッフさんから「握手会に参加して」と言われたんですね。まだメンバーでも何でもないのに、小6女子の平均より背の小さかった私がみんなと並んで、お客さんも「どういうこと?」みたいな(笑)。
当時のエビ中はメンバーの入れ替わりが多かったので、「今度入るんだね。頑張って」と言われましたけど、私はまだ入るなんて思ってなくて。何もわからないまま、ただみんなをマネして「ありがとうございます」と言って握手してました(笑)。
――結局エビ中に入る際は、「新メンバーは歌がうまい子」と噂になってました。
安室奈美恵さんが大好きで、家で歌っていただけですけど、そう言われてましたね。入って最初のシングルの「どしゃぶりリグレット」で、何となくのメインを任されました。当時のエビ中はメンバーのライバル意識が強くてバチバチしていて、急に入ってきた小学生の私が歌割りをいろいろもらったから、みんなはたぶん、私のことを良く思ってなかったでしょうね(笑)。今はみんな仲良いですけど。
――ひなたさんとしては、やりたかった歌が存分にできるようになったわけですね。
はい。ただ、私は歌うのは好きでも、人前に立つことは怖いと思ってしまう部分があって。ライブ中も「ヘタだと思われてないかな?」とか考えてしまうときがあります。「そんなこと誰も思ってない」と言われますけど、中学生になってもメジャーデビューしても、大勢の方の前で歌うときは緊張しかありませんでした。慣れてきたのは、本当にやっと最近です(笑)。
メンバーが定着して自然とライブを楽しめるように
――2013年にメジャーデビューから最速記録でさいたまスーパーアリーナでワンマンを行ったときも、1万人を越える観衆を前に緊張は大きかったわけですか?
あのときは人が多すぎて、ワケがわからない感じでした。幕が開いたときの歓声の大きさ、一面のサイリウムのきれいさは忘れられません。でも、階段を降りる前に謎に思い切りつまづいているのが、DVDに残ってしまいました(笑)。
――アイドルをやる喜びはどんなときに感じました?
メンバーの入れ替わりが多い中で、メジャーデビュー前後は定着して、みんなでいる時間がすごく楽しいと感じました。そんなメンバーとやるライブは、緊張はしても好きなことを大きなステージでやらせてもらうわけだから、本当にありがたいし、恵まれていると思います。いつの間にか自然に、ライブを楽しめるようになってました。
――逆に、9年間でピンチだったこともあります?
常に危機感は持ってますけど、自分のことだと、耳の病気(突発性難聴)でお休みしていたときは、一番落ちてました。みんなが立っているステージに自分がいない辛さ……。メンバーは毎日連絡をくれて、みんなで「今から本番だよ」って動画も送ってくれて、一緒に戦っている気持ちもありつつ、どうにかして早く戻りたい想いでいっぱいでした。
私のお休みのせいでアルバムの発売も延期になったり、グループにたくさん迷惑をかけたので、復帰してからは、自分のできる最大限で頑張っていけたらと思うようになりました。
ストレス解消法はカラオケのみ(笑)
――日々の活動の中でも、落ち込むことはありますか?
めちゃくちゃあります。「ワーッ!!」と爆発したいときもありますけど、自分の中のストレス解消法はカラオケだけなんです(笑)。
――歌のことで落ち込んでも、カラオケで歌って解消(笑)?
そうですね。メンバーにごはんに誘われても「ごめん。カラオケに行かせて」って1人で行ったりします(笑)。ちょっとでも時間があったら行きたくて、最近は30分や1時間では物足りず、最低1時間半は歌いたいです。うまいとかヘタとか関係なく、ただ歌うことが好き。それが仕事になっているのは幸せですよね。
――カラオケではどんな曲を歌うんですか?
すごく適当です(笑)。エビ中も歌いますし、ももクロ(ももいろクローバーZ)ちゃんとか、モーニング娘。さんとか、安室さんとか……。ジャンルもいろいろです。
――20歳のバースデーソロライブでも、中島美嘉さん、MAX、米津玄師さんなど幅広くカバーしていましたが、多彩なジャンルの楽曲が提供された『playlist』では、ひなたさんが好きなテイストはどの辺りですか?
iriさんが作ってくれた「I’ll be here」です。曲をいただいたときから、「これ好き!」と思ってました。
――歌い出しなどひなたさんのパートが多くて、アンニュイで大人っぽい曲ですね。
そういうカッコイイ感じが好きなんです。でも、レコーディングに行ったら、iriさん本人がいらして、「どうしよう……」と思って、声が震えてしまいました(笑)。
今までのエビ中になかったiriさんらしい曲を、「アイドルだから」みたいな遠慮を何もせず、ぶつけてくれたのが嬉しかったです。iriさんに「ここはこう歌ってほしい」「ここはこんな感情だよ」とディレクションしていただいて、新しい挑戦ができました。
難しい曲に込められた期待に応えたいです
――ひなたさんくらい歌えると、レコーディングでそこまで苦労することはないですか?
いやいや、だいぶ苦労します。自分が思っていること、ディクレターさんが考えること……とかあるので、いろいろなアプローチを試すんです。ここ数年は楽曲の幅が広がって、「難しいぞ」と感じることも多くて。でも、エビ中なら歌えると思って提供していただいているので、期待に応えたいと常に思ってます。
――当初は「キレのないダンスと不安定な歌唱力」をキャッチフレーズにしていたエビ中が、いつの間にか実力派アイドルになっていました。
昔は本当にキャッチフレーズ通りの学芸会みたいなライブをやってましたけど、さすがに大人になってきて、「このままだとまずいぞ」と、みんなが思い始めた時期がありました。自分たちからはそのキャッチフレーズを口にしなくなって、ダンスやボイストレーニングの先生にも助けていただきました。
私たちは怒られるのが苦手で、かと言って、あまり誉められもしないから、「どうしよう?」となっていたこともあります。でも、社長が一度「歌もダンスもすごく成長している」とか、こんなに誉められたことはないというくらい誉めてくださったたことがあって。
それをきっかけに、「もっとうまくなりたい」「カッコ良くやりたい」という気持ちがどんどん増えて、すごく上達したと思います。「ダンスのキレが良くなった」とか言っていただけると、「頑張ってきて良かった」と嬉しくなります。
――アルバム収録曲で作詞が私立恵比寿中学の「HISTORY」に、そうした歴史が垣間見えますが、自分のパートの詞を自分で書いたんですか?
結果的にそうなったところもありますけど、1人1人がエビ中への想いを書いて、レコーディングではどこが自分のパートになるかは知らずに歌いました。
でも、「この歌詞を書いたのはあの子だよね」と何となくわかって、サビの“出逢ってくれてありがとう”とかは「みんな思っていることは一緒なんだな」と感動しました。
――ひなたさんは“みんなとバカやる時はもっと大好き”といったパートを歌ってます。
そこはたぶん書いたのも私です。エビ中って誰かの半目の写真で爆笑したり、全員でゴリラのモノマネをしたり、小学生みたいなくだらないことばかりしているんです(笑)。大人になってからのほうが、そういうことをやるようになりました。
そういうエビ中が私は好きで、みんなをどうにかして笑わせたいし、みんなでやれば何倍も面白い。そんな気持ちを書いたら、そこだけあまりにストレートな歌詞になっていて、笑いました(笑)。
いつでも笑っていられるグループになれたら
――アイドル活動をするうえで、大事にしていることはありますか?
エビ中に関しては、以前は自分の思っていることを言えなかったんですけど、そうでなく、意見を出し合って、グループに対して全員が同じ考えを持つことがすごく大事だと、最近になってわかってきました。
ちょっとしたことを、ごはんを食べながら軽く話してもいい。自分の中で引っ掛かっていることや「どうなんだろう?」と思っていることがあれば、言ったほうがいい。何も言わずにみんなの意見に流されるのは良くないと、自分がそうだったからわかります。
自分の意見を言うのは、怖いと言えば怖いですよね。みんながどう考えているか、どう反応するかわからないので。それでも言ってみることが、一番大事かなと思います。
――「歌いたい」という夢は早くに叶えたひなたさんですが、これから叶えたい夢は何ですか?
エビ中がグループとして長く続いて、ずっと歌って踊っていくためにも、いつでも笑っていられるグループにしたいなと思います。自分も何か辛いことがあっても、ふざけて笑っていたら忘れているので。いつまでもみんなで笑い合える関係でいたいし、笑っていたほうが夢も叶うと思います。
――では最後に、芸能界に入ってなかったら、やりたかったバイトはありますか?
学校の職業体験でパン屋さんに行って、自分たちで1からパンを作らせてもらったのは楽しかったです。何かを作る仕事はいいかもしれませんね。あと、カラオケの店員さんは楽しそう。受付とかやりたいです。
昔の自分だったら、そういうことはやりたくないと思ってました。アイドル活動をして人と接することが多くなって、意外とできるような気がします。
――カラオケ店に限らず、受付の人の対応で気分が変わることはありますよね?
私はないですけど(笑)、意外とそういう人は多いですよね。だから、もしやるなら良い笑顔で受付をしたいです。もちろんアイドルをやっていても、笑顔は大切にします。
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河野英喜 取材・文:斉藤貴志
柏木ひなた(かしわぎ ひなた)
1999年3月29日生まれ。千葉県出身。
2010年11月に、アイドルグループ・私立恵比寿中学に加入。2012年5月にシングル「仮契約のシンデレラ」でメジャーデビュー。2013年12月にさいたまスーパーアリーナで単独ライブ。デビューから最速記録での開催となった。2017年5月に4thアルバム『エビクラシー』がオリコン週間チャートで初の1位に。また、個人で女優として映画『脳漿炸裂ガール』、舞台『タイヨウのうた~Midnight Sun~』などに出演。『エビ中☆なんやねん!』(MBSラジオ/火曜23:30~)でメインパーソナリティ。
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