「先入観を持たず接したら、人に対する認識が変わった」コスメティック田中さんに聞く孤独マインドとの付き合い方
YouTube登録者数40万超を誇る人気YouTubeコスメティック田中さん。自ら“孤独マインド研究系YouTuber”と称して、学生時代から社会人になるにかけて、人と接して自己評価が変わったエピソードや、就活時代にやったことなどを配信しています。本インタビューでは、田中さん自身が変わったきっかけと、孤独との付き合い方、内向的な性格との向き合い方についてお話を伺いました。
孤立していた高校・大学時代。しかし就活が転機に
――YouTubeやご著書で、学生時代は友達がいなくて孤立していたと拝見しました。
小学生の頃は、多くはないけれど友だちもいて、クラスにも溶け込めていました。でも、高校入学を機に、中学時代の知り合いが誰もいない環境に移ったら、上手く友達を作れなくなりました。というのも、「自分は特別な存在だ。僕にふさわしい友達は他にいるはずだ」と思っていた当時の僕は、クラスの中でどんどん孤立していったんです。大学でも友だちができないままだったので、社会に出た後も、自分は一生こういう感じで過ごしていくのかな?と思っていました。
――でも、就活の場が転機になったと。
それまでは、直接関わることはなかった相手のことを勝手に決めつけていたところがあったのですが、就活を機に、今まで関わることのなかった人と会話する機会があって、話してみたら先入観を抱いていた部分が多いとわかって。それから少しずつメンタルのブロックが崩れていったんですね。
“異世界”の人と接したことで、他人に対する自分の認識が変わった
――具体的には、どんな勘違いに気づいたんですか?
失礼な話ですが、以前の僕は体育会系の人は異世界の人だと思っていたんです。でも、いざ話してみたら、当たり前かもしれないのですが、みんな自分の考えをしっかり持っていて、自分のような人間とも会話できる人達だったんですよね。
ただ、就活で営業職を受けた時に、自己分析があまりできていない人が多くて。逆に僕は自己分析ができていたし、自分のことを話すのもスムーズにできたので、そういう面での違いは感じました。
このとき、僕はそれまで人を「見た目」というより、ステレオタイプに当てはめて先入観を抱いていることに気づいたし、接してみて自分のほうが勝っていることもあると知ったら、知らない人に対する苦手意識が少し減りました。なので、僕が大きく変わったというよりは、他人に対する自分の認識が変わった、と言ったほうが正しいと思います。
キャリア発信者のTwitterを参考にしながら就活を進めたら、スムーズに就職ができた
――面接の際に人前でスムーズに話せたというのも、大きな発見だったようですね。
就活の場での会話は、役割とゴールがちゃんとあったので喋れましたね。プレゼンのように大勢の前で話すことも、やるべきことが明確に見えているのでできますし、就活を経て幅があることに気づきました。
――就職先を決めるために、大人にアドバイスを求めたり、OB・OG訪問をすることはありましたか?
頼れるところがあると、そこに偏ってしまうと思ったので、自分で調べることしかしなかったですね。特にキャリアアドバイザーの人は、万人受けのアドバイスをする傾向があると思って。今はインターネットから得られるものも多いですし、キャリア発信者の人のTwitterを参考にしながら自分なりに就活を進めることで、少なくとも就職自体は問題なくできました。
――友だちを作らずに大学生活を乗り切るには、情報収集が大事だと著書に書いてありましたが、それが就活にも活きたんですね。
そうですね。日頃から同級生のSNSをチェックしておかないと、休講情報が手に入らなかったりするので。みんなのキラキラした日常が目に入ってきちゃうという悪い面もありますが、大学生活を1人で乗り切るには、やっぱり情報収集が欠かせません。
――また、キャリア発信者にもいろいろな方がいるでしょうし、情報が溢れている今の時代、ちゃんとした情報を見極める力も必要になっていると思います。その力を磨くためには、何をすればいいと思いますか?
確かに、怪しい人の言葉を鵜呑みにして、間違った道に進んでしまうと困りますよね。僕が就活をしている人にアドバイスをするとしたら、まずは発信している人の肩書きを見るところからかと思います。ちゃんとした大学の教授なのか、ただのオカルト信者なのかでも、信憑性がだいぶ変わってくると思うので。
僕も高校生くらいの頃は、すごいことを言ってそうな匿名アカウントをチェックして「おお~!」って思っていたのですが、大学生になって、その人の経歴などを確認するようになってからは、「この人は一見すごそうだけど、おかしなことを言ってるな」などというのがわかってきて、自分の方向性が明確になりました。
オワコンにならないためには変わり続けないといけない
――田中さん自身も、発信者として正しい情報を伝えることを意識されていますか?
かなり意識していますね。『正しい孤独マインド入門』に書いてある内容も、自分は心理学を本格的に学んできた人間ではないので、本を執筆するにあたって改めて自分で知っていた知識なども、改めてソースを調べなおして文章化しました。でもYouTubeでは、厳密に説明しすぎるとウザいかな?と、あえて省略している部分もあって。それをすると怒る人もいるので、難しい面も感じます。
“陰キャ”っていう言葉も、中には深刻に捉えすぎて、僕の動画やツイートを見て傷つく人もいると思うんですよ。この程度で陰キャって言わないでほしい、とか。でも、僕も傷つけたくてやっているわけではないので、本当は全てに「これはエンタメ向けです」って注釈を入れたいところです。
――最近は、コムドットのやまとさんと対談するなど、陰キャらしからぬ企画も多いですからね。陰キャという過去を持ちながら、YouTuberとして変わり続ける自分をどう受け止めていますか?
これは自分でも受け止め切れていないんですよね。動画では視聴者から、陰キャって言い続けられていることが恥ずかしい域に来ていて。早く次の段階に進みたいなと思っています。
――実際、周囲から「変わったね」って言われることは増えましたか?
最近は“不幸系YouTube”が流行ってて、「離婚しそうです」とか「貧困です」といった話題で再生数を伸ばしている動画が増えているんですが、そういう不幸系ビジネスは発信が広がっていく=収益がそれなりに入ってきて、不幸ではなくなってしまうという構造があるから永続性がないなと思うんです。オワコンにならないためには変わり続けないといけないし、どこかで前向きな方向に変えていかないといけないなとは思います。
学生時代は陰キャ=悪というイメージが強いが、社会に出たらそんなことはない
――田中さんが変わっていく姿を見せることで、誰かが変わるキッカケになったらいいですよね。
そうですね。救いたいなんて大層なことは言えませんが、前を向きたい人がいれば、一緒に前を向けたらいいな、ぐらいに思っています。
――では、そんな田中さんが内向的(陰キャ)な性格の人へ、上手く他人や社会と折り合いをつけるためのアドバイスをするとしたら?
まず学生だったら、社会に出るまで待つしかないですね。学生時代は陰キャ=悪というイメージが強くなりやすいですが、社会に出てみたらそんなことはないので、『正しい孤独マインド入門』でも“社会に出るまでの“耐え方””を書きました。
そして、社会に出たんだったら、人間向き不向きがあると思うので、今の環境が合わなかったら辞めて、潔く次の場所に移るのがいいんじゃないかなって思います。僕も新卒で就職したときに周りに迷惑がかかるんじゃないかって心配したことがあるので、気持ちはわかるんですけど、「自分が死ぬ前にこれをやっていなくて後悔するかどうか?」と比較したら時には自分本位で動くことも大事だなとは思うんですよね。。
――ちなみに、先ほど「ちゃんと人間関係を築くのが苦手」とおっしゃいましたが、社会人になった今でも、人との距離は感じますか?
感じますね。ある程度は話せても、「この人に相談しても無駄だろうな」って思ってしまったり、疑ってしまうので、これは直すというよりも一生付き合っていくものだと思っています。ただ、相手から誘われて試しに飲みに行ってみたら、意外と楽しかったりもするし。自分の中だけで完結せずに、自分以外のランダムの要素を入れることで、たまに良い突然変異が起こるから、何事も決めつけずに接してみることが大事だなと思います。
コスメティック田中(コスメティック・タナカ)
1997年、千葉県生まれ。孤独マインド研究系YouTuber。千葉大学工学部卒。複数のIT事業に従事する傍ら、データ分析や自身の経験をベースとして、「集団内で孤立した人間の心理と生き抜く術」について研究。YouTubeでの独自理論の発信が全国の若者から共感を呼び、チャンネル登録者数は40万人(22年9月時点)を超える。
◆Official Site:https://cos-tanaka.com/
◆ Twitter:@csmtc_tnk
◆Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCYy32dSCsxUzgo6yRam_Psg
群れずに心穏やかに生きる 正しい孤独マインド入門
孤独系コンテンツをYouTubeで発信している著者が、“学生時代から集団へ溶け込めない悩みを抱えてきた一方で、インターネットでの発信活動を通して膨大な数の孤独な方の心理と向き合い、その中で発見した、正しく心穏やかに過ごすための要素を抽出し「孤独マインドのつくりかた」として解説した1冊。著者の実体験や生き方、これまでのデータ分析をベースとした人生哲学などをまとめました。
KADOKAWA 刊
1,540円(本体1,400円+税)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322111000859/
■取材協力:KADOKAWA
編集:ぽっくんワールド企画 取材・文:斉藤碧