かやくご飯と呼ぶのは関西だけ!? 日本列島津々浦々の「炊き込みご飯」のナゾを調べてみた!
美味しいものがた〜くさんある味覚の秋ですが、やっぱり新米は格別! もちろん、白米も美味しいですが、旬の食材がたくさん入った炊き込みご飯も食べたくなりますよね。
でも、ひと口に「炊き込みご飯」といっても、日本各地ではそれぞれ特色があり、驚くようなメニューがあることをご存知ですか? 今回は、そんな「炊き込みご飯」にまつわるアレコレ、調べてみました!
1.世界三大◯◯のように、炊き込みご飯の世界にも「日本五大名飯」というものがある
ご飯と具材をあわせて炊く「炊き込みご飯」。実は今から80年ほど前に、日本を代表するお米料理・郷土料理として、「日本五大銘飯(にほんごだいめいはん)」として、5種類が選定されていたんです! 認定されているベスト5のラインナップは以下の通り。
「かやくめし」(大阪府など)
「忠七飯」(埼玉県小川町)
「さよりめし」(岐阜県山間部)
「うずめめし」(島根県津和野地方)
「深川めし」(東京都)
日本五大名飯とも言うそうなのですが、知っていました? 意外と「へー」とつぶやきたくなるラインナップですよね。
2.そもそもかやくご飯は関西ローカル限定? 呼び名の境界線は?
で、「日本五大銘飯」を見ていてが気になること、ありませんか? そう、「かやくめし」の存在です。そもそも「かやくめしってなに?」「炊き込みご飯の一種なの?」と気になりますよね。神奈川県出身の筆者としては「かやくめし」というとうどんの付け合せで出てくるイメージですが……。
調べてみると、どうやら「五目ごはん」のことを、関西では「かやくめし」というそう。手元の新選国語辞典(小学館)で「加薬」とひくと、
(1)料理の薬味
(2)五目飯の具
とありますから、具のことを加薬というみたいですね。
ちなみに、岡山には「かやくめし」のおいしいお店がある一方、「広島 かやくめし」で検索してもヒットしないことを考えると、岡山までは「かやくごはん」文化のもよう。また、東の境界線を探っていくと、どうやら滋賀は「炊き込みご飯」、愛知は「味ご飯」というらしい……。「かやくごはん」の境目ははっきりとわからないものの、やはり大阪を中心とした関西の文化のようです。
3.地元民でもよく知らない? ナゾの埼玉の「忠七飯」、岐阜の「さより飯」の正体とは!

※写真はイメージです。
日本五大名飯を見ていて、ちょっと気になったのがもう一つ。それはッ。「忠七飯」と「さより飯」の存在です。大変失礼ながら、聞いたことがないですよね…。
調べてみたところ忠七飯とは、
温かいご飯に新鮮な海苔を加え、独特のつゆをかけてお茶漬けのように食べる料理で、わさび、柚子、さらし葱などの薬味を添える…ものだとか。
「ソレってお茶漬けじゃね?」とツッコミたくなるものの、地味に美味しそうな、上品な料理なようです。
そしてもう一つの「さより飯」とは…
塩さんまを使った炊き込みご飯のようです。そもそも、「さより」は岐阜県可児市の方言で、「細長い魚」を指すのだとか。秋の味覚の代表格・さんまの炊き込みご飯はお馴染みの存在ですし、かなり美味しそう。近いうちにご当地ご飯として、大ブレイクするかもしれません。
4.まさかの具なし! 醤油とお酒だけの炊き込みご飯を楽しむ地域がある
炊き込みご飯といえば、先ほどのさんまだけでなく、きのこやごぼう、鶏肉など、具が入っているのが当たり前ですよね?
でも、なんと、醤油とお酒だけの炊き込みご飯を食べる地域があるんです。
その名も「さくらごはん」「茶飯」ともいって、静岡県・特に浜松市周辺ではお馴染みの存在だそう! シンプルな味わいで、子どもたちの給食でも大人気だとか。有名な漁港もあるし、海産物やご当地食材を入れればいいのに…と思いますが、シンプルで飽きの来ない味わいで愛されているよう。素朴だからこそ食べたくなる、なんだか「実家」みたいな存在なのかもしれませんね。
5.混乱しないの? 炊き込みご飯も雑炊も「ジューシー!」と呼ぶ県とは?
次もローカルで愛されているご飯をご紹介。そもそも、炊き込みご飯と雑炊って別のお料理ですよね。でも、炊き込みご飯も雑炊もごっちゃにして「ジューシー」という県もあるようです。それは沖縄県!
ちなみに、味付けも本土とは違うようで、なんとラードやマーガリンを大量に使うのだとか…(!) 昆布も使ってヘルシーなレシピもあるようですが、もはやピラフやチャーハン風じゃないのか、と興味しんしん。沖縄の愛されソウルフード、ぜひ、本場で食べてみたいものですね。
6.鶏めし(とりめし)と書いて、「けいはん」と読む。その地域は?

※写真はイメージです。
こちらも続いて南国で愛されている炊き込みご飯をご紹介。炊き込みご飯をでも鶏を使うことは多いですが、「鶏めし」(とりめし)ではなく、けいはんといって、ご当地名物として愛されている料理があるのです。その地域は、なんと鹿児島県。主に奄美大島で食べられていて、今では鹿児島県の給食にもなっているそう。
けいはんは、忠七飯と同様、さらさらしたお茶漬け方式。白いご飯のうえにほぐした鶏肉や錦糸卵、椎茸、パパイア漬けなどの具材とねぎや海苔、刻んだタンカンの皮(陳皮)などの薬味をのせ、丸鶏を煮て取ったスープをかけて食べる料理だそう。なんとこちらも美味しそう。食欲のないときでもさらりと食べられそうな、やさしい郷土食ですね。
7.なにがボルガなの? 現在、売出し中(?)「ボルガライス」があるのはどこ?
続いては、炊き込みご飯と少し変わった、「ボルガライス」をご紹介。「ボルガライス」って何さ、という人も多いと思いますが、実は福井県越前市武生地区で愛されている食べ物で、ご飯と卵、とんかつwithソースというお料理だとか。これは、嫌いな人おらんやろーという鉄板の組み合わせですね。
現在、ご当地グルメのニューカマーとして絶賛売出し中(?)で、この11月にはヤマザキ製パンからボルガライスをイメージした「ランチパック」が期間限定で発売されるとか。これで「ボルガライス」が一気に全国区になるかもしれません。
ちなみに、気になる名前の由来ですが諸説あり、判然としないそう。えー気になるなあ。ご当地グルメ、出尽くした感がありますが、まだまだこうした「未発掘の食べ物」ってあるんですね。
8.栃木県にリアルガチのいちご飯があった!

※写真はイメージです。
引き続き紹介するのは、フルーツとご飯という衝撃の食べ物。えー覚悟してください。まず第一弾は、いちご飯です。青森県ではウニのことを「いちご」といいますが、そのことではありません。リアルフルーツのいちごとご飯をあわせた料理です。それがコレ。
食べられているのは、ネット上では「ないんだなこれが」でお馴染みの(?)栃木県。そう、栃木県は、「とちおとめ」をはじめとして、いちごの生産量日本一。そこで考案されたのが、「イチゴ飯」だとか…。
確かにいちご大福も定着しましたし、アリかもしれませんが、ちょっと衝撃ですよね。
9.ポンジュースが蛇口から出てくる伝説はダテじゃない。アノ県にはみかんご飯
もう一つ、「ご当地ネタ」「都市伝説ネタ」として有名なのが、「蛇口をひねるとポンジュースがでてくる」でおなじみの愛媛県。最近では空港にこのポンジュースが出てくる蛇口を設置し、話題になっていましたね。かんきつ類の栽培が盛んなことでも知られていますが、なんと「みかんご飯」があるそうです。こちらも学校給食にも出されるそうで、恐るべし、愛媛……。
ちなみに、みかんご飯といっても、みかんを丸ごといれるという乱暴なものではなく、出汁としてみかんジュースとお水、みかんの皮(フードプロセッサーにかける)を入れてつくるので、さわやかな風味の炊き込みご飯になるよう。みかんの甘み、ほのかな酸味がやさしい味わいになるといいますが、どのような味なのでしょうか。ぜひ一度、食べてみたいものです!
10.衝撃の黄色さに目もくらむ? 「黄飯」を食べるのは何県?

※引用:OITA SHOKU HPのスクリーンショット
最後に衝撃の黄色い炊き込みご飯をご紹介しましょう。その名前も「黄飯(おうはん)」! サフランライスなど外国にも黄色いご飯はありますが、ここまで黄色だと驚きます。なんでも、くちなしで色をつけて炊くため、美しい黄色がかったご飯となり、お祝いやおもてなし料理として、大分県の臼杵市などで食べられているのだとか。
ルーツは江戸時代にあり、お赤飯の代わりとして慶事に出す料理だったそうです。一説によると同じく黄色いご飯料理・スペインの「パエリア」の影響もあるとか。世界は広いようで、意外とつながっていますね!
奥深き炊き込みご飯の世界
いかがでしたか?
知っているようで知らない、炊き込みご飯の世界。あらためて、日本の広さや地域の文化の奥深さにふれられたような気がします。そうですね、今晩のご飯は、やっぱり炊き込みご飯にしようと思います!
文:嘉屋恭子
※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。