記憶力日本一、池田義博さんに聞く「五感を使って暗記力を高める方法」
記憶力を競う「記憶力日本選手権大会」で4度の優勝を果たし、「世界記憶力選手権」では日本人初の“記憶力グランドマスター”の称号を獲得。現在、テレビなどでも活躍中の池田義博さん。池田さん曰く、記憶は五感を使えばより効果的に覚えられるそう。そこで大学の前期試験にも使える五感を駆使した暗記方法を教えてもらいました。
そもそも、なぜ五感が記憶力に影響するの?
情報の8割は視覚から入ってくるものですが、視覚で得られる情報は膨大なため脳への負担が大きくなります。ですから脳は負担を減らすために、あえて視覚からの情報を残さないようにすることがあります。多くのことを覚えたいときは、視覚以外の五感も利用したほうが効果的です。
【聴覚】耳栓をして記憶集中力を研ぎ澄ます
例えば「今から10秒間で7桁の数字を覚えてください」と言われたとき、数字を読み上げて音読する人が多いのではないでしょうか。これは目で見るだけより音声のほうが記憶に残りやすいから。口に出すとリズムや韻で覚えられる特性もあります。そのわかりやすい例が理科の授業で習った「水金地火木土天海」。これはリズムにより覚えやすく、記憶にも残りやすい。口に出して耳で覚える方法はとても効果的です。
聴覚をより研ぎ澄ますために、私がオススメしたいのは耳栓やヘッドホン。耳をふさぐことで骨伝導し、より音に集中できる効果があります。実際に私も行っている方法なので試してみてください。
【嗅覚】ローズマリーの香りで記憶を呼び起こす
何かの香りをかいだ時、古い記憶を思い起こした経験はないでしょうか。たとえば香水やシャンプーの香りで昔、好きだった人を思い出したという人もいるのでは。このように香りと記憶は密接に結びついているのです。
私が実践している方法は脳神経を活性化させる作用があるローズマリーの香りを勉強中にアロマディフューザーで香らせ、試験当日はティッシュやハンカチにローズマリーのアロマを含ませて本番前にかぐなどして記憶力自体をアップさせる方法。さらにこれには香りが記憶のフックとなって暗記したことを思い出させてくれる利点もあります。思い出すために使うのであれば香りはローズマリーだけでなく自分が好きな香りでも大丈夫です。
【触覚】「空書」で脳内を活性化させる
英語のスペルや漢字などを覚えるときには、空中に指で文字を書く「空書」がおすすめ。自分の手を動かすと字体のイメージも一緒に覚えることができます。ノートに書いていると、書くことが作業になってしまい頭に入ってこない恐れがあります。それを防ぐためにも空中で思い出しながら指で書いて脳内を活性化してください。
【味覚】勉強中の水分補給は「水」
脳はほとんど水分でできているので、水分量の変化に敏感です。特に脳を使う勉強中はこまめに水分を補給することが大切。勉強に適した飲み物は目を覚ますカフェインや、脳に栄養を与える糖分よりも水が一番!
カフェインは摂りすぎると不安感の増大や短期記憶の低下をもたらす原因に。糖分の入った飲み物は血糖値を急激に上昇させ、一時的に脳を活性化させますが、急上昇した血糖値は急降下してしまいます。そうすると集中力が低下し頭がボーッとするなどの弊害がでてしまうので、勉強中の水分補給は水やノンカフェインのお茶などで摂るよう心掛けましょう。
【体感覚】夏場は「ちょっと寒い」場所で勉強する
勉強をする際、夏には涼しい場所、冬には温かい場所など快適な温度のところで机に向かっていませんか? 脳は生命の危機や恐怖感をもったときの記憶を優先して思い出すという仕組みがあります。そのため、快適すぎる空間で勉強をするより、少し寒いと思うような「軽い危機感」がある場所で暗記をすると記憶に残りやすいのです。
夏場の今であれば部屋の空調をいつもより下げたり、冷房がよく効いた図書館などで勉強したりするとよいかもしれません。
まとめ
今回紹介した「五感記憶法」は通常の記憶術をより効果的にするプラスαのテクニックです。暗記の相乗効果として、ぜひ試してみてください。
池田義博
一般社団法人日本記憶能力育成協会会長。大学卒業後、大手通信機器メーカーのエンジニアに。その後、学習塾を経営。
塾の教材を探していた際に記憶術に出合う。独学で初出場した大会で優勝し、2013年に記憶力日本一になる。その後、14、15年、17年と優勝し、出場した4回すべてで記憶力日本一に。13年ロンドンで開催された「世界記憶力選手権」で日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得。著書に『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』(ダイヤモンド社)などがある。
■著書
『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』(ダイヤモンド社)
ダイヤモンド社 刊
1,512円(税込)
取材・文:中屋麻依子
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