記憶力4回連続日本一の池田義博さんに聞く、誰でも暗記が得意になる超・記憶術
テストに向けて勉強をしているとき、「記憶が苦手だから覚えられない…」なんて、ついぼやいてしまう人は多いのではないでしょうか。
そこで、「記憶力日本選手権大会」で4回連続優勝を果たしただけでなく、世界記憶力選手権で記憶力グランドマスターの称号を獲得した池田義博さんに、誰でも手軽に始められて、すぐに効果が上がる超・記憶術を伝授してもらいました。
記憶のメカニズムを知れば、誰でも記憶が得意になる!
池田さん曰く、実は記憶力は「持って生まれた才能や年齢に関係なく、技術で上がるもの」なのだとか。つまり、技術を上げる方法さえ知っていれば、誰でもラクに記憶力をアップさせることができるのです。
そのポイントは3つのことを守るだけ。
2つ目は回数(復習)。脳は何度も入ってくる情報を“重要”と判断し、記憶に残そうとします。
3つ目は感情に残ること。脳は感情がともなった情報を優先して記憶するので、面白がって勉強すれば反応してくれます。
勉強に入る前に、まずはこの3つを強く意識しましょう。
頭の中で映像として思い浮かべると記憶しやすくなる
それでは池田さんに聞いた、具体的な暗記方法を紹介しましょう。
暗記方法1 部屋にあるものと結びつけて映像化する
脳は実際に体験したエピソードを思い出のように長く記憶にとどめる性質をもっています。その性質を利用して、覚えたいものをストーリーにして映像化すると、実体験した思い出のように記憶に留められます。
覚えていたはずなのに、いざテスト問題をみると、頭から引き出せない経験をしたことはないでしょうか。「それは、情報を整理せずに詰め込んだ状態になっているから」と池田さん。そこで、あらかじめ記憶をしまう引き出しを決めるのが、この方法です。
その引き出しは、自分の身の回りにあって、今後変化しないものなら、なんでもOK。なかでも、誰にとっても身近な場所である自宅が効果的です。
【実践方法】 徳川十五代将軍を暗記する場合
①家の中にあるものを玄関から順に1〜15まで番号をつける
2.カレンダー → 秀忠
3.時計 → 家光
4.机 → 家綱
5.本棚 → 綱吉
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順番につけた番号とアイテムを紐付けたらノートに書いておきましょう。
②漢字などのキーワードから連想するものを強引に映像化する
この方法で15代将軍をすべて映像化し、その絵とともに覚えるわけです。
テストの時には、頭の中の記憶の場所をベッドから順番にたどっていくと、鉄アレイ、忠犬ハチ公、光などの絵が思い出されて家康、秀忠、家光という記憶を思い起こすことができます。
「この記憶術を使う時、例えばベッドにそんなものがあるはずがないなるべく突飛な発想でイメージすると、『面白い』『バカバカしい』などの感情が動いて、より記憶が強くなります」(池田さん)。
薄い暗記でOK。繰り返し復習して濃い記憶をつくる方法
どんなにユニークな映像を頭に思い浮かべて「暗記できた!」と思っても、そのままでは時間が経つと必ず記憶は薄れていきます。
そのため記憶を脳に定着させるためには復習をすることがとても大切です。というのも、ある程度忘れかけたころに復習を行うと、記憶を強固にする脳の仕組みがあるからです。
ただし、やみくもに復習をしていても非効率的ですから、効果的な方法で復習しながら、記憶をとどめる訓練をしましょう。
暗記方法2 ペンキのように薄い記憶を何度も塗り重ねる
範囲が限定された勉強する場合、鉄則ともいうべき進め方があります。それは「理解を二の次にして、はじめは20%程度の記憶でいいから、スピードを優先してできるだけ早く全範囲の勉強を終わらせて、それを繰り返す方法です」と池田さん。
この方法が良い点は、薄い記憶をペンキのように何度も塗り重ねた方が、じっくりと時間をかけて一度で覚えるよりも記憶の定着度が高いという脳の性質があるからです。
「脳は優秀で、一度全体像を確認すると、自動的に足りないところ、弱点を補強するモードを備えているのです。そのため、最初は20%程度の薄い記憶でも、復習するたびに足りない情報が補強され、確かな記憶を定着させることができます」(池田さん)
暗記方法3 暗記したことを制限時間内に書き出す
記憶を定着させるために理想的なのは、覚えた情報を人に説明すること。つまり、アウトプットすることが最適な方法です。
ただ、いつも友達や家族に聞いてもらえるわけではないでしょう。そこでおすすめなのが、覚えた内容を実際に書き出してみる「アウトプットライティング」です。
人の脳は「締め切り効果」といって、時間の制限がかかると、通常よりも集中力を高める働きがあります。この働きを利用して、例えば1分間などと区切って今日勉強した範囲を再現して書き出してみましょう。もし、覚えていない情報があれば、もう一度戻って復習すると、弱い部分を補強できます。
おまけ 仮眠&コーヒーで、記憶力=集中度がアップ!
人間の集中力は長くは続かないもの。そこでおすすめなのが、勉強の合間に休憩をこまめに挟み込むこと。
「1時間勉強して15分の休憩を入れるよりも、15分勉強したら5分の休憩を入れるサイクルで勉強した方が、15分の間に集中しようという“締め切り効果”が働くので、高い集中力とそれに伴う効率に期待できるのです」(池田さん)。
また、人の集中力が低下する昼過ぎの時間帯に仮眠をとれば、目覚めた時に集中力が再び向上します。ただし、長い昼寝は逆効果。これを防いでくれるのが、仮眠の前の一杯のコーヒー。眠気を覚ますコーヒーのカフェインは30分後に効いてくるので、寝過ごしを防ぐことが期待できます。
まとめ
「記憶力には、能力の差がほとんどありませんし、記憶術を鍛えるのにいつから始めても遅いということはありません」と断言する池田さん。
要は、どれだけ面白く覚えようとするかという工夫次第です。それさえ知っておけば、定期テストはもちろん、受験勉強にも生かすことができます。簡単にできる池田さん流の超・記憶術、さっそく実践してみてはいかがでしょうか。
池田義博
一般社団法人日本記憶能力育成協会会長。大学卒業後、大手通信機器メーカーのエンジニアに。その後、学習塾を経営。
塾の教材を探していた際に記憶術に出合う。独学で初出場した大会で優勝し、2013年に記憶力日本一になる。その後、14、15年、17年と優勝し、出場した4回すべてで記憶力日本一に。13年ロンドンで開催された「世界記憶力選手権」で日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得。著書に『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』(ダイヤモンド社)などがある。
■著書
『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』(ダイヤモンド社)
ダイヤモンド社 刊
1,512円(税込)
取材・文:宇治有美子