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2018年03月29日

コンセプト系カフェはどこまで発展しているのか、最果てを調査してみた

最果てカフェ 喫茶店 タウンワーク タウンワークマガジン townwork

メイドカフェにはじまり、猫カフェ、給食カフェなど、一つのテーマに特化した「コンセプト系カフェ」。最近では、そのバリエーションもさらに広がりを見せ、こだわりをぐっと深化させたカフェも登場しているようだ。果たして、どこまで進化しているのだろうか。今回はその“最果て”を調査しつつ、そんなおもしろカフェで働く楽しさ(そもそもアルバイトはいるのか?)についても聞き込みしてみた。

コンセプト系カフェの昔と今

コンセプト系カフェのルーツは定かではないが、ブームの火付け役である「猫カフェ」が盛り上がっていたのが2000年代後半。以降、さまざまな動物カフェをはじめ、コンセプトの立った「〇〇カフェ」へと派生していった。
そこから約10年、現在ではどんなコンセプトのカフェが人気なのだろうか? また、当時との違いは? まずはそのあたりから探るべく、“有識者”のもとを訪ねてみた。2009~2013年にかけて多くのコンセプト系カフェを巡り、精力的に取材してきたライターの朝井麻由美さんだ。

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▲以前、取材で訪れたという「探偵カフェ」にて(写真提供:朝井麻由美)

——さっそくですが、朝井さんが精力的にコンセプト系カフェを巡られていた5~6年前までと今を比較して、何か違いは感じられますか?

朝井さん「印象としてはコンセプトがメジャー化してきているように思います。昔はメイドカフェブームの流れを受けて、女性が男装した『弟カフェ』や特殊メイクでおばあちゃんに変身した女性が接客してくれるカフェなど“役割系”の店が多く見られた印象ですが、今はあまり見かけないような気がしますね」

——確かに、「弟カフェ」などはかなりコアなテーマですね。それに比べ、今は万人受けするものが多いと

朝井さん「たとえば、食事でいうと女性に人気のアボガドやチョコレート、また動物でいうと水族館などをテーマにしたカフェ。興味本位で『一回行って終わり』ではなく、普段のカフェとしても利用できるコンセプトのカフェが増えたように思います。また、これまでは秋葉原を中心に広がっていましたが、今では渋谷や原宿、浅草などいたるところにあります。そういった観点から見ても“大衆化”してきたのではないでしょうか」

——ちなみに、朝井さんご自身が行きたくなるのはどんなカフェですか?

朝井さん「そこでしかできない体験があるといいですよね。あとは、『なぜそれをコンセプトしたの?』と思ってしまうような、予想外の角度で攻めてくるお店は気になりますね。そのモノのどこに魅力を感じているのか、どうしてオープンすることになったのか、色々と聞いてみたいです」

というわけで、話題のコンセプトカフェの中から、朝井さんに気になったお店をいくつか挙げてもらい、実際に行ってみることにした。

洗練されたカフェと昭和レトロなおもちゃが溶け込む「空想カフェ」

最初に訪れたのは、入谷駅から徒歩10分の場所にある「空想カフェ」。

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サロンのような落ち着いた店内には、こだわりの家具が並んでいる……

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と思いきや、振り返ると昔懐かしいおもちゃが所狭しと置かれている。実はこちら、昭和レトロなおもちゃを販売する「アンティークショップ」と「カフェ」とが合体したお店なのだ。なるほど、確かに色々と空想が膨らみそうな空間である。新旧のおもちゃがぎっしりと詰まった空間は大人から子どもまで楽しめ、朝井さんの言う「万人受け」の要素も満たしている。

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こちらが店主の神谷僚一さん。おもちゃを集めるのもコーヒーを淹れるのも、お一人で切り盛りされている。

早速、話を聞いてみよう。

——どういった経緯で、「アンティークショップ」と「カフェ」が合体したんでしょうか?

神谷さん「オープン当初は自分の趣味のモノや知り合いのアーティストの作品などを扱う雑貨屋だったんです。ブリキのおもちゃを相場より安く販売していたりしたらマニアの間で話題になり、『もっと古いおもちゃを探してきてほしい』と頼まれましてね。それから古いおもちゃをどんどん買い集めて販売するようになりました。そんなおもちゃをゆったりと楽しんでもらいたいと思って、店内にカフェスペースを設けたのがはじまりですね」

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——年代もののおもちゃはどうやって集めたんですか?

神谷さん「お店を始めた当初は、自分で全国各地のおもちゃ屋さんを訪ねました。僕のポリシーとして『※うぶ出し』は絶対なんです。マニアから譲ってもらっても面白くない。だから、僕は骨董市にも行かずにひたすらおもちゃ屋を巡っていました。時には、おもちゃ屋の倉庫でゴミ箱として扱われていた一斗缶の中から掘り出しモノを見つけることもありましたね。その時は、トレジャーハンターみたいな気分になり大興奮でしたよ。でも、今はおもちゃ屋さん自体が少ないので仕入れはほとんどしていません」

※初めて市場に出る骨董品のこと

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なお、神谷さんはその道にまつわる知識も豊富なため、自分が遊んでいたおもちゃについて語り合うのも楽しい。聞けば神谷さん、おもちゃ道を究めるべく、日々の情報収集にも余念がないようだ。

神谷さん「今は、おもちゃそのものというより、当時の資料やおもちゃを作っていた職人さんの証言を集めています。そして、おもちゃを車やバイクと並ぶ工業デザイン、そして日本のモノづくり文化として後世に残すために本も書いているんです。“おもちゃ屋”を30年もやっているので、自然と使命感みたいなものが芽生えたんですよね」

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もちろん、“カフェ”を名乗る以上、コーヒーにもこだわる。豆はオーダーを受けてからミルで手挽き。

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味や香りが飛ばないようにお湯は82度を徹底。淹れ方はキレのある味わいを生むドーナッツドリップを採用している。

さらに、ネーミングにも神谷さんのこだわりが光る。ブラックコーヒーは「浅草黒」、ほうじ茶牛乳は「縄文の青空」、カフェオレは「冬の声」、ミルクティーは「ケルトの雨」と詩的な名前が付けられているのだ。

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こちらが「浅草黒」(ブラックコーヒー)。濃厚ながら、後味はスッキリでおいしい。ちなみに、カップは神谷さんが「土星」をイメージしてデザインしたもの。“輪”の部分には、地元・浅草のザラメ煎餅が添えられている。

おいしいコーヒーと、おもちゃ愛にあふれる穏やかなマスター。コンセプト抜きにしても居心地が良く、何度も通いたくなるようなお店だ。決して、インパクト重視でコンセプトを尖らせただけのキワモノではなく、普通にカフェとしてレベルが高い。なるほど、昨今のコンセプトカフェの傾向がちょっと分かってきたぞ。

【取材協力】
空想カフェ

http://asakusanocafe.com/
住所:東京都台東区千束2丁目30-1
営業時間:11:00〜19:00
定休日:火・水

店内が引き出しだらけ? 住宅街に佇むカフェ

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続いては、清澄白河駅から徒歩6分の場所にあるカフェ「ヒキダシ」。

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店名の通り、扉を開けるとさまざまな「引き出し」がお出迎え。なるほど、だから「ヒキダシ」カフェというわけか。なんとも不思議な雰囲気で、まるで某宮崎アニメに出てきた釜爺の部屋みたいだ。しかし、なぜ引き出し? ぜひその意図を知りたい、ということで、店長の大倉さんに話を伺った。

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———どうして「引き出し」なんでしょう?

大倉さん「元々ここは皮製品の工房だったらしく、お店を始める時にこの物件を見に来たら、引き出しの多いタンスが残っていたんです。それを見たオーナーが『引き出しが多いカフェをやろう』と」

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こちらがそのタンス。確かに引き出しだらけだ。だからといって「引き出しの多いカフェを」というのは発想が飛躍しすぎな気もするが、規則正しく美しく収まった引き出しは何となく味わい深く、オーナーが魅了されてしまうのも分かる気がする。

では、実際に働いている人はどう感じているのだろうか? アルバイトスタッフの方にもお話を聞いてみよう。

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こちら、アルバイトの宮本慶祐さん(23歳)。身長なんと191cm! パリコレのモデルになるため、徳島から上京したという。主にホールでの接客やドリンク作り、ケーキ作りなどを担当している。

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ちなみに、宮本さんのイチオシメニューは『チョコレートブラウニー』(500円)。しっとりとした舌触りに濃厚なチョコの味わいがたまらない逸品だ。

——宮本さんは、もともと引き出し好きだったんですか?

宮本「いえ、まったく(笑)。ここに入ったのも、たまたま現在の店長と前の職場が一緒で、お誘いいただいたからなんです」

——でも、ここってちょっと変わったカフェですよね。こういうコンセプトが立ったお店で働く楽しさみたいなものって何かあったりしますか?

宮本「やはりインパクトがあるので、引き出しがお客様との会話のきっかけになるのは良かったです。僕は人見知りだったのですが、引き出しのおかげでコミュニケーションもスムーズになり、今では会話を楽しめるようになりました」

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———おお! 引き出しのおかげで、「会話の引き出し」も増えたわけですね。ちなみに、引き出しをきっかけにどんな話をするんでしょうか?

宮本「よく聞かれるのは『ヒキダシの中には、何が入っているんですか?』って」

———たしかに気になります。何か入ってるんですか?

宮本「僕は『夢と希望』って答えています(笑)」

おしゃれなやりとりである。お店のコンセプトである「引き出し」には、人見知りの若者のコミュ力をカバーし、ユーモアをも引き出してしまう不思議な力があるようだ。
引き出しに限らず、こうした尖った特徴が一つあると会話は弾むだろう。コンセプト系カフェの楽しさの本質は、コンセプトそのものよりも、そのテーマを通じたコミュニケーションにあるのかもしれない。

【取材協力】
ヒキダシ
住所:東京都江東区白河3丁目8-5
営業時間:11:30〜22:00(金・土は26:00まで)
定休日:無し

オーナー達のこだわりやお店へのアツい思いが伝わってきた今回の取材。巡った二つのお店は、冒頭で朝井さんが分析してくれたように、コンセプトを抜きにしても普段使いのカフェとして利用したくなる心地良さだった。「〇〇カフェ」というと、その領域に詳しくないと足を踏み入れられないような敷居の高さを感じてしまうが、必要以上に身構えることもないようだ。むしろ、ここを糸口として、新たな趣味への扉を開くきっかけになるかもしれない。好奇心の旺盛な人にこそ、おすすめである。また、「ヒキダシ」のように、アルバイトとして働くことが可能なカフェもある。そういう、特別な経験がしたいという人は“ちょっと変わったお店”で働いてみるのも楽しいかもしれない。

取材・文:小野洋平(やじろべえ)

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