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2020年01月24日

俳優/モデル・宮沢氷魚さんインタビュー 「謙虚さと自信のバランスを大事にしたい」

宮沢氷魚瑞々しい作風で恋愛映画の新たな旗手となった、今泉力哉監督の最新作「his」に主演した宮沢氷魚さん。周囲にゲイと知られることをおそれ、ひっそりと暮らしていたところへかつての恋人が娘と共に現れ、心をかき乱される主人公にどんな心境で臨んだのか、そして、現在の仕事観を伺いました。

 

センシティブな題材に強い責任感をもって臨みました

宮沢氷魚――今作が映画初主演となったわけですが、主演俳優としての心境を聞かせてください。

最初はかなりのプレッシャーがありました。LGBTQというセンシティブな題材を扱った作品ですし、より責任感を強くもって臨みました。ですが、そのような作品に出演できる喜びのほうが大きかったので、前向きに挑むことができました。

――撮影に入る前に、いろいろ勉強されたと伺いました。

僕はアメリカ人の血が1/4入っていて、少年時代はインターナショナルスクールに通っていたんですが、通学中など偏見の目で見られることもあり、生きづらさを感じていた時期があったんです。今回、迅という人物を演じることになって、僕がかつて抱えていた過去の心情を体現できるのでは、と考えながらLGBTQについて勉強したところ、当事者の皆さんは僕が経験してきた居場所のなさとは比べようもないくらい、生きづらさを感じていらっしゃいました。それは、迅という役を通して初めて知った事実でしたね。

――宮沢さんがつらい経験をしていた当時、心の支えとなっていたのはどんなことだったんでしょうか?

インターナショナルスクールでは、みんな国も違うし、言語も違う。そこがオアシスのようであり、救いの場所でもあったので、学校に到着さえすれば安泰だっていう思いがありました。これは僕だけではなく、たくさんの生徒が同じような状況にいたので、仲間の存在はとても大きかったです。

――そんな学生時代の経験もふまえ、どんな思いで今作に臨まれましたか?

僕が演じた迅や、渚(藤原季節さん)のような友達も多いですし、同じような境遇にいる方たちにとって住みやすい世の中になってくれればという思いをもっていました。今はまだセンシティブな問題ですけど、ゆくゆくはセンシティブに感じないぐらい、皆さんが生きやすい環境になれば、そして、この作品が何かきっかけになるといいなという願いをもっています。

 

意識したのは目線の使い方。友人の仕草を参考にしました

宮沢氷魚――迅のキャラクターをどんなふうにつくり上げていったのか聞かせてください。

迅や渚と同じような境遇の友達が多かったとはいえ、まだまだわからないことも多かったので、勉強のために映画を観たり、その友達に「ちょっとゴハン食べない?」と連絡をして誘い出して、彼の仕草の一つ一つや口調、目線のやり方など映画のことは伝えずに観察して、役作りの参考にしました。

――お芝居で特に意識したのはどんなことですか?

渚のように言葉ですべて表現したほうが簡単なんですが、迅の場合は口数が少ないので、どんなふうに表現したらいいんだろうと。そこで考えたのが目線の使い方でした。先程、お話しした僕の友達もそうなんですが、人と話す時に目の奥を見ている感じがしたんです。すべてを見透かしているというか、何かを吸い取ろうとしているような視線。そこを迅のお芝居にとり入れました。迅が心を閉ざして話をしたくない時や、誰にも近づいてほしくない時は、あえて目をそらして、相手の胸やアゴに視線をやるようにしていました。

 

今泉作品は、異物感がないから人々の心に寄り添ってくれる

宮沢氷魚――繊細な人間ドラマを描くことにも定評のある今泉監督作品ですが、宮沢さんはどんなところに魅力を感じていますか?

日常生活であり得ることしか描いていないのが今泉作品の良さだと思うんです。映画ってどうしても大きな展開やどんでん返しがあったほうが楽しく感じるんでしょうけど、ドラマチックなことって日常においてほとんど起きないじゃないですか。だからこそ、監督の作品は異物感がないというか、皆に寄り添ってくれるものになるのではないでしょうか。

――人間の生活を当たり前に描くことで見る側はリアリティを感じ、心を揺さぶられるんでしょうね。今回のような難しい役柄を演じたことで得たものもあったのではないですか。

公開されるまではまだ分かりません。僕たちは自信をもってつくった作品ですし、満足しているんですが、どんなふうに世の中から捉えられているのかわかるのは、公開された後なのかなって。それを実感できることが今は一番怖いし、楽しみでもあります。お芝居としては、やりきったつもりではいるんですけど、終わった後に「もっとできた」って思うことはどの作品にもあることで、すべてに満足してしまったら次につながらない。それがなくなったら辞める時なのかもしれませんね。

 

興味があるのは“取材する側”。普段はされる側だから、いい答えが引き出せると思う

宮沢氷魚――公開が楽しみですね。宮沢さんは俳優以外にもモデルとして活動されていますが、他に興味のある分野などはありますか?

長期的な目標でいうと、海外で仕事をしてみたいです。今年はオリンピックイヤーなので、どこかで英語を使える機会があるといいなって。

――例えばどのようなお仕事でしょう?

僕、取材がしてみたいんですよ。普段はされる側なので、どういう質問をしたら答えやすいかなど自分が経験してきたことをふまえて、いい答えを引き出せるんじゃないかなと。とは言え、いきなり「やれ」と言われても無理なので、そこには準備期間が必要ですけど。通訳を介さずに会話ができるというメリットもあるので、アスリートやハリウッドスターにインタビューしてみたいです。

――昨年、ドラマ「偽装不倫」に出演したことで世間から注目される俳優のひとりとなりましたが、お仕事をしていてやりがいを感じるのはどんな時ですか?

僕たちの仕事は、作品を見てくださる方がいるから成り立つものなので、皆さんの感想や評価をいただけた時が一番、やってよかったなと思います。

――俳優として、譲れないことや大切にしていることがあれば教えてください。

謙虚でいること。だけど、自信をもつこと。謙虚になり過ぎて自分の存在価値を下げてしまうのも違うと思いますし、謙虚さと自信のバランスを大事にしたい。それは親からも言われていることですし、常に念頭におくようにしています。

――今年は大作舞台への出演も控えていますが、俳優という職業の魅力をどんなところに感じていますか?

普段の自分ではない人物を演じることは役者にしかできないことですし、いろんな人生を全うできるのはこの仕事ならではですよね。人生は1回きりですが、それを何回も経験できるのは不思議な仕事だと感じています。

 

僕もオーディションに落ち続けていた時期があった。諦めたらそこで終わり

宮沢氷魚――宮沢さんのまた新たな顔に期待しています。現在は映画の公開を直前に控え、多忙な日々を送っていると思いますが…。

いろんなお仕事をさせてもらって体力的にしんどいと思うこともありますが、デビュー当時は仕事もなく、もっともっと仕事がしたいと願っていたので、今はその夢が叶ってるんだよって自分に言い聞かせています。このつらさも自分が望んだことですし、気が付いた時にはしんどさも吹っ飛んでいます。

――最後に、夢や目標に近づくために奮闘している同世代の皆さんへアドバイスをお願いします。

夢を叶えるには、とにかく続けることではないでしょうか。僕も以前30回ぐらいオーディションに落ちて、作品が決まらないまま事務所をクビになるのではないかと不安を抱えながら過ごしていた時期があったんですけど、とりあえず続けてみようって。そうしたら徐々に仕事が決まり、いろんなことがうまく進み始めました。諦めたらそこで終わりなので、続ける勇気、場合によっては辞める勇気も必要ですけど、自分が納得いくまで続けることが目標へ近づくために大事なことだと思います。

 

■Profile
宮沢氷魚(みやざわ・ひお)

1994年4月24日、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。
2015年「MEN’S NON-NO」専属モデルオーディションでグランプリを受賞し、同誌専属モデルに。2017年、ドラマ「コウノドリ」で俳優デビュー後、「トドメの接吻」、「僕の初恋をキミに捧ぐ」、映画「賭ケグルイ」、舞台「BOAT」、「豊饒の海」、「CITY」などに出演。昨年夏に放送されたドラマ「偽装不倫」ではヒロインと恋に落ちる年下のイケメンカメラマンに扮し、話題に。今年は3月に上演されたPARCO劇場オープニング作品第一弾「ピサロ」に出演。

◆OFFICIAL SITE:https://www.lespros.co.jp/artists/hio-miyazawa/
◆OFFICIAL Twitter:@MiyazawaHio
◆OFFICIAL Instagram:@miyazawahio

編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子

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