【激レア 体験レポ】映画『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間―』公開記念! 世界的アニメーションスタジオ「スタジオポノック」で1日見習いバイト!
今回の激レアバイトは、「スタジオポノック」見習いバイト!
大ヒット映画『メアリと魔女の花』を世に送り出したアニメーションスタジオに激レアバイトに選ばれた二人が潜入。そこで実際に見て、聞いて、体験した模様をお届け!
スタジオポノックは、スタジオジブリ作品『かぐや姫の物語』などを手がけたプロデューサーの西村義明さんが2015年4月に設立したアニメーションスタジオ。第一回長編作品『メアリと魔女の花』は国内観客動員266万人を記録。
2018年8月に新プロジェクト「ポノック短編劇場」第一弾として『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』を公開。米林宏昌監督の「カニーニとカニーノ」、故・高畑勲監督の作品で活躍した百瀬義行監督の「サムライエッグ」、宮崎駿監督作品等で実力を発揮した天才アニメーター・山下明彦監督の「透明人間」の3本からなる短編集だ。
プロのものづくりを学びたい!
採用されたのは、高橋佳大(よしひろ)さんと鈴木日南乃(ひなの)さん。二人とも、『ちいさな英雄』はもちろんチェック済み。
高橋さん「役者を目指して活動中です。今日は人を惹きつける作品を生み出すスタジオで働かせていただくことで、ものづくりや作品の魅力を学び、多くの人にPRするお手伝いがしたいです!」
鈴木さん「アニメが大好きで、その宣伝手法や広告デザインの仕事に興味があります。あのスタジオポノックの制作現場に入れるなんて夢のようです。精一杯レポートしたいと思います」
スタジオポノックにやってきた二人は、スタッフさんに迎えられ、一日の流れを教わる。
まず、西村プロデューサーと山下監督と一緒に新作映画の企画会議に参加させていただいてから、アニメーション制作の工程を教わり、最後に監督にインタビューさせていただけるという、どれも貴重で盛りだくさんな内容。
緊張の面持ちで待つ二人の前に、山下監督と西村プロデューサーが登場。
「よろしくお願いいたします!」と元気にご挨拶をして、ついに企画会議が始まった!
雑談の中にヒントが隠されている!? 企画会議に参加!
「最近『人生100年時代の人生戦略』という本を読んだんですけど…」と自然な雰囲気で話し始めた西村プロデューサー。一見雑談のようだが、すでに企画会議は始まっているのだ!
60歳で定年を迎え、20年間引退生活を送るというモデルが一般的だった昔に比べて、100年生きると言われている時代になりつつあるなか、大人の観客の多くが『透明人間』に共感したのは何故だろうか、というプロデューサーのお話を真剣に聞くバイトの二人。
この作品に感銘を受ける人が多くいる理由は、時代と社会を描いているからと分析するプロデューサー。
それを踏まえて次に世に出すべき作品を考えるのが、企画会議なのだという。
山下監督「ただの空想では物語は作れない。一人ひとりに関わることじゃないと。そこに映画を作る意味があるんじゃないかと……」
西村プロデューサー「いまはYouTubeなどで個人が作ったものを発表できる。誰もが知っている共通のメディアがなくなってきた時代に、どういう映画を作って、どう伝えるのかっていうのは難しい問題ですよね」
そんな中で、2Dアニメーションでやる意味を考えながら、どのような作品が面白いのか、どのような作品を観てみたいか、バイトの二人も考えることに。
高橋さん「僕は池井戸潤さん原作の作品のような、絶対的に逆らえないような敵に対して、まわりの協力を得ながら、逆転するような話が好きです。閉ざされた空間であっても希望が見えてくるような……」
「僕も好きですよ。『下町ロケット』とか。スカッとするんですよね」と山下監督。
鈴木さん「私は『オーシャンズ8』のような、生き生きとした女性が活躍する作品が好きです」
「それはいいですよね。昔『キャッツ・アイ』という漫画や『チャーリーズ・エンジェル』という映画があって、男性に媚びたり依存したりしない女性を描いていて、そういう生き方ってかっこいいですよね」と、西村プロデューサーにも興味を持っていただけたようだ。
ここで企画会議は終了。
続いてはいよいよスタジオ内に潜入だ。
山下明彦監督が直接解説! 〜映画『透明人間』ができるまで〜
なんと山下監督から直々にアニメーションの制作工程を教えていただけることに。
「ストーリーが決まったら絵コンテを書くんですけど……」と、まず見せていただいたのは、透明人間の絵コンテ。
一般的な絵コンテ用紙を使用せず、マスの大きさも位置も自由に書き込んでいく方法で作られたそう。
絵コンテと同時に山下監督が描き進めたというキャラクター設定やイメージボードなどのスケッチを見せていただく。
主人公が手にするツルハシのスケッチ。主人公の性格を表す象徴として、実際のツルハシよりも大きく描かれている。アニメーションだからこそできる手法だ。
こちらは映画の冒頭に登場する主人公の自宅の洗面所の「レイアウト」。
キャラクターの動きやカメラワークなどを指示するものだ。
こちらは「美術」スタッフによる背景画。
ディテールの細かさに感動するバイトの二人。
洗面所の鏡の前に立った主人公の動きを大ラフ(原画の元になるもの)にまとめていく。
キャラクターの動きが決まったら、清書へ。
アニメーションは1秒に24コマあり、「動画」担当のスタッフが複数人で分担しながら原画をもとに1枚1枚描いていく。
「13分の透明人間は全部で12,000枚」と監督から教わり、「おお……」と声を漏らす二人。
続いてデジタル作業の工程へ。
清書した紙を一枚一枚スキャンして、「仕上げ」担当のスタッフが指示書をもとにパソコン画面上で色を塗り、
次の「撮影」部門でカメラワークやエフェクト処理をかける。
ここではレンズが歪む処理が施されていた。
最後に、キャラクターに息を吹き込むアフレコが行われ、音楽や効果音をつけて、完成となるのだそう。
山下監督に直撃インタビュー!
最後に監督にお時間をいただいて、二人からインタビュー!
高橋さん「作品を作る上でのこだわりはありますか?」
山下監督「観た人が不愉快になるものはやりたくないという思いはありますね。あとは、手描きのアニメーションはただの絵なんだけど、絵だということを忘れて本当の人間のように観てほしい。そのために、どうすればいいのか考えて、本物のように見える工夫をしています」
鈴木さん「制作する際にスタッフと衝突することはありますか?」
山下監督「ありますねぇ。面白い作品を作るためには何回も直すことが大事なので、『透明人間』では西村プロデューサーと絵コンテを練る時に何度も議論しました」
高橋さん「人生のターニングポイントは?」
山下監督「30代の前半にOVAのシリーズを作り終えた時に、全部出し切ってしまって、何も描けなくなった。その時に、ある《二人》に出会ったことで、アニメーションの仕事って改めて面白いなと思えた。その後、『千と千尋の神隠し』の話がきて、ジブリに入って宮崎駿さんと出会い、一緒に仕事をしたら更に面白さを再認識できた。谷底に落ちている頃だったらきっと『千と千尋〜』は断っていたから、その二人と出会ったことがターニングポイントですね」
最後に監督と一緒に記念撮影までさせていただき、皆さんにお礼を言って、激レアバイトが終了。
今日の体験を通して、二人は何を感じたのだろうか。
高橋さん「西村プロデューサーや山下監督が物事を深く掘り下げて考えていることに感銘を受けました。つき詰めて考えないと良い作品は生まれないということを実感しました」
鈴木さん「趣味の人間観察がアニメーションの仕事に生かされていると監督がおっしゃっていたので、毎日なんとなく過ごさないようにしようと思いました」
プロの意識の高さに触れたことで、二人のこれからの日々はこれまで以上に濃密なものになるのだろう。この経験を糧に、それぞれの夢にまっすぐ突き進んでほしい。
