「働くのは会話のネタを増やしたいから」カマたくさんに「働く意味」を聞いてみたら目からウロコの答えが返ってきた
働く意味って?なぜ働くのか理由がわからない。こんな疑問を持った経験がある人、結構多いのでは。働く意味や理由って一体、何なのでしょうか。軽やかに真理をつくコメントがTwitterでバズりまくるゲイバー店員のカマたくさんに働く意味を聞いてみました。
働く意味はわからないけれど、メリットならそれなりにある
――カマたくさんは働く意味ってわかりますか?
わからない。だって、働かなくていいなら、働きたくないでしょ。
――でも、カマたくさんはずっと働いていますよね。
ワタシの場合は働かないといけない状況だったからね。お金を稼がないと生きていけないから。ただ、16歳から今までずっと働いてきて思うのは、働くことで自分が確実にレベルアップしているし、成長していると感じられる。働く意味はいまだにわからないけれど、メリットならわかるかな。
――ぜひ、メリットを教えてください!
働くことで友人関係では出会えない、いろいろな人に出会えること。これまで出会ってこなかったような考え方や生き方をしている人と出会うと「こんな考えもあるんだ」「こんな生き方もできるんだ」と知らない情報を吸収できるのがおもしろいし、自分の引き出しにもなる。例えば、ワタシは今、接客業をしているけれど、これまでの仕事の経験でお客さんと話しが盛り上がったり、共感することができたり。要は会話のネタを増やせるのよね。これは接客業だけでなく、「この人と仲良くなりたいな」という人がいたときに、ネタが多いほうが会話も膨らむし、相手にも興味を持ってもらいやすい。お互いが歩み寄る材料が仕事で得られるって感じかな。
――カマたくさんがメリットを感じた仕事での出会いってありますか?
高校1年生のときにバイトしていた飲食店の店長にはすごく感謝してる。わりとスパルタな店長で“仕事は見て覚えろ”タイプではあったんだけど、「お前は絶対に見て覚えられるから」と言って、少人数でもホールを回すやり方を教えてくれた。見て覚えられないバイトには、教育係をつけたりしていて、スタッフの性質を見抜いて仕事を振っていた。この店長のやり方が今でも生きていて、どんな仕事でも「今、あの人はこれをやっているから、自分はこれをやっておけば効率的に仕事を回せる」と考えられるようになったし、自分が先輩になったときに、後輩の適材適所を見抜けるようになったから。
――これまでの話を聞くと、働くことに対して重要視しているのはお金より人なんですね。
そうそう。お金のために働くのも大事だけれど、結局お金って自分が仕事で成長したらそれに見合う額がついてくるというのがワタシの考えだから、成長が先でお金が一番ではないの。お金以外のおもしろみがあるから、ずっと働いているんじゃないかな。
「出勤するまでが仕事」。仕事場に行くことに全精力をかければいい
――とはいえ、仕事がすごくツラくて働きたくないと思ったことはないですか?
あるある、すっごいある。20代のときに建築会社で施工管理の仕事をしていたときはホント、ツラかった。「これ、いじめ?」ってぐらいワタシだけキツイ現場に行かされたり、職人さんが超怖かったりしたし。
――その仕事はすぐ辞めたんですか?
3年ぐらいやっていたかなぁ。
――3年も続けたんですか! そんなツラい仕事のモチベーションってどこにあるんですか?
仕事にモチベーションなんていらないでしょ。とにかく行くまでが仕事で職場についたらやるしかないから。朝起きて「仕事行きたくなーい!」と思っても、行くまでに全精力をかけていた。「出勤しただけでワタシ、エライ!」と思っていたし(笑)。仕事なんてね、100%の結果を出すなんて無理なんだから、50点ぐらいでいいのよ。出勤するだけで50点は取れるんだから。
――出勤するだけで50点って名言ですね。
みんな頑張りすぎなの。100点取ろうとしているから、働くことや仕事選びに慎重になりすぎるのよ。
働く意味はすぐにはわからない。数年後に「これか!」とわかるはず
――でも、働くなら自分に合う仕事をしたいじゃないですか。だから、どんな仕事をすればいいかわからなくなっちゃうんですよね。
そんなのワタシだって、いまにだわからない。「この仕事を絶対にやりたい」と思って選んだことはないし、すべて「とりあえず」で流れてきたから。でも、それでいいんじゃないの? だって、どんな仕事を選んだって働くのはしんどいから同じだもの。人によってしんどさは違うと思うけど、最初からラクな仕事なんてないのは事実。仕事を選ぶときは「とりあえず、これならやってやってもいいかな」って上から目線で選べばいいのよ。
――仕事選びは上から目線(笑)。でも、それぐらい軽い気持ちでやってみろってことですね。
やらないと何も始まらないから。今回のお題に戻るけど、働く“意味”がわからないなら“意味”なんて考えてなくていいの。きっと、意味がわかるのは働き始めて数年後、数十年後だから。超ツラかった施工管理の仕事も当時はわからなかったけど、自分が店に立つようになって建築関係のお客さんとの会話で盛り上がれたり、気難しい職人さんの懐の入り方がわかったりして「ここで役に立つのか」と思ったしね。結果論ではあるけれど、これまで働いてきたことが、いつしか自分の役に立って楽しい結果になるのが「働く意味」なんじゃない。
――最初はわからなくても、働いていくうちに意味がわかってくるんですね。カマたくさんは今、働いていて楽しいと思います?
楽しいというかラク。自由にできるし、やりたいことをワガママいってできるし。でも、それまでの経験や成長があるから今があるわけで。29歳までは結構、しんどかったしね。今後は40歳までに不労収入を得られるシステムを考えているんだけど、頭のどこかで、40歳になっても働いているんだろうなと思ってる。性格上、ヒマが苦手だから何かしら動いていないとつまらないし、働いているほうが「ワタシ、生きてる!」って思うタイプだから。働くことに“やりがい”とか“好きを仕事にする”とか求めてないし。
――やりがいはいらないですか!!
あればあったでいいと思うけど、ワタシは考えたことがない。仕事に対して思うのは、働くなら成果を出したいし、出した分は認めてもらいたいし、それが給与に反映されたらラッキー!ってぐらいかな。それぐらいで十分でしょ。スマホで「働く意味がわからない」って検索しても答えなんて出ないんだから、まずは、自分が働くしかないのよ。「とりあえず、働いてやるか」って感じで働けば、数年後にきっと意味がわかるから。
取材・文:中屋麻依子 撮影:八木虎造
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