「やりたいことがない」と悩む人がすべき最初の一歩とは
進学や就職などを考える際に、多くの人がぶつかる「やりたいことがない」という壁。周囲と比べて、自分のやりたいことをやっている人を見て焦ったり、落ち込んだりと悩んでいる人も多いのではないでしょうか?今回は、リクルートワークス研究所の中村さんに「やりたいことがない」人に向けて、まず一歩踏み出すための具体的なアドバイスを聞きました。
できることから「やりたい」を見つけることもできる
将来を選択するときに、何かしらやりたいことを持つことが正しいと思い、やりたいことがないと焦り、不安に感じている人が多いです。ですが、実は「やりたいこと」が見えていて一直線に邁進して仕事をしている人よりも、「得意なことをやったらうまくいった」「最初は躊躇したが、やってみた結果、意外と自分に合っていた」という人も、実は多いと思います。
無理に「やりたいこと」をひねり出だそうとすると、必死に見つけようとするあまり、色々な情報に触れているうちに、かえって自分の本心とはかけ離れてしまうということも起こります。そんな時は、やりたいことから一旦離れて、自分のできることや、好きなことを、過去や普段の自分から棚卸しして「やりたいこと」を考える方法もあります。
今の自分を棚卸しして「できること」を見つけてみる
自分の棚卸しとは、今の自分についての理解を深めることです。好き嫌いや得意不得意などを整理し、過去の出来事や経験も振り返りながら、自分の価値観や大事にしたいことを自分自身で気づけるようにします。ここでは自分のことを理解するのが目的なので、無理にやりたいことに紐づけないようにしましょう。
自分の好き嫌い、得意不得意を整理
まずは、好き、嫌い、得意、不得意と感じていることについてそれぞれ整理します。整理する際、「自分が得意と感じた瞬間はいつだったか」など過去についても少し振り返ってみることで、なぜ自分が得意と感じているか納得感が増します。ただこの時に、過去には得意だったことが今は苦手と感じることなど、過去と今に一貫性がなくても気にせずに、ただ今の自分について整理することが大切です。
整理の仕方は様々な方法がありますが、ここでは好き嫌い、得意不得意の4象限にマッピングする方法で整理します。
整理したことから、自分を客観視する
4つに分類したら、次に好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、不得意なことから、共通点や自分の特徴を見つけていきます。例えば、好きなマスには「みんなで何かを成し遂げるのが好き」、不得意なマスには「みんなの前で話すのが苦手」など、自分の傾向が見えてきたり、自分自身も認識していなかった新たな一面が見えてくることもあります。 なお、あくまで自分を客観視するための方法の一つであり、マスを埋めること自体が目的ではありません。
周りに自分のことを聞いてみる
家族や友人、先輩に自分のことを聞いてみると意外と教えてくれるものです。一人で考え込むと視野が狭くなってしまいます。そこで他人の意見や他人の目を入れてみることで発見もあり、冷静に自己分析もできます。
できることを言語化し、まずは一歩挑戦してみる
自分の整理ができて、自分ができること・得意なことを見つけられたら、それが発揮できることにまずは挑戦してみましょう。例えば、「服が好きで、コーディネートを考えるのが得意。だけど、人と話すのは苦手なので、人と話さずに服に関われる仕事はないかな?」と自分の得意なことを発揮できる仕事を探してみることも、やりたいことを考える一つです。
やりたいことを考える時に意識したいこと
実際に自分の棚卸しをする際に、大事なポイントを紹介します。特に、「やりたいことを見つけなければ」と自分にプレッシャーを与えてしまうタイプの人は、これから紹介するポイントを押さえながら棚卸をしてください。
過去と今に一貫性がなくてもいい
人間は、周囲の環境やライフステージ、年齢により興味関心が変わっていきます。子供の頃に好きだったものが大人になったら全く興味がなくなった、またはその逆のことがよく起こります。なので、過去を振り返ったときに今の自分との一貫性がなかったとしても、それが当たり前なので、あまり気にしなくて良いです。
やりたいこと(仮)を積み重ねていく
棚卸を通してできることが見えた時、まずは「やりたいこと」を(仮)で置いてみましょう。人間の思考は変化していくものなので、「やりたいこと(仮)」を、人生の中でたくさん積み重ねていけば、その時の自分に合ったやりたいことができている状態が続いていきます。ちなみにこうした仮の自分に関する事柄は、「暫定自己」という概念で研究されています。
やりたいことを縛らなくてもいい
やりたいことは何も仕事や趣味に限った話ではありません。「こんな生き方がしたい」「将来こういう生活がしたい」という思いも十分にやりたいことになります。例えば「将来旅をしながら生活したい」ことがやりたいことなら、それを叶える仕事を探すという次の行動が見えてきます。
多くの人が何もアイデアや基準がない状態、いわば0からやりたいことを見つけようと悩む中で、既に自分が持っている持ち物=できることからやりたいことを見つける方法は、取り組みやすく、かつ自分に合った選択肢を選ぶことができるのではと感じました。この方法を試してみて、何か少しでもやりたいことが見つかれば、まずは一回やってみる、挑戦することが大事だと思います。もし、やりたいことに迷った時は、この記事を参考にしてみて下さい。
中村 星斗(研究員/アナリスト)
メーカーでの人事担当の後、リクルートで適性検査の営業、品質管理・開発、基礎研究等を経て現職。現在は主に、就職活動や新卒採用、メンタルヘルスに関する調査・研究を行う。
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