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2015年06月18日

あの人の仕事観:映画監督 是枝裕和さん

映画監督 是枝裕和さん日本をはじめ、いまや世界的に有名な監督となった是枝裕和さん。手掛けた作品は国内外で数々の賞に輝き、最新作『海街diary』は第68回カンヌ国際映画祭に出品されたことでも話題になりました。そんな是枝監督に監督業と仕事の関係性についてうかがってみました。

―――『海街diary』は中学生から30歳までの4姉妹やその母親が中心となる話ですが、監督はなぜこんなに女性を描くのが上手なのでしょうか?
(是枝監督)「原作が素晴らしいんですよ(笑)。あとは、4姉妹とはいかないものの、実際に何組かの3姉妹の家にお邪魔して取材をさせてもらいました。そこで長女と次女はケンカしがちで、それを見て三女は我が道を行く傾向があることがわかってきて。僕の中では今までにない試みだったけれど、それが役に立ったのかもしれません」

―――この映画に出てくる女性はみな強いですね。監督自身も“女性は強い”と思われますか?
(是枝監督)「これは強い女性たちの話ですからね。特に長女の幸と四女のすずは非常に強靭で、逆境の人生の中で強くならざるを得なかったわけです。そんな背筋の伸びた女性たちを描きました。でも、やっぱり女性は強いと思う」

―――いちばん奔放な性格の次女、佳乃のセリフで『恋をするとくそつまらない仕事も頑張れる』という言葉がありますが、監督も“くそつまらない仕事”を経験したことはありますか?
(是枝監督)「27歳まではやっていましたね。その中でも今につながるつまらない仕事と本当に“くそつまらない仕事”がありましたが。なぜ、つまらないと思っていたかというと、責任がなかったんですよ。自分がディレクターになって、監督になるとすべて自分の責任じゃないですか。そうすると“つまらない”“面白い”で区切れなくなる。僕は大学卒業後に『テレビマンユニオン』という番組制作会社に参加したのですが、ここで会長さんに言われたのが『君たちはクリエイティブな仕事に就いたと思っているかもしれないが、それは間違っている。世の中にはクリエイティブな仕事とそうでない仕事があるわけではない。仕事をクリエイティブにする人間とそうしない人間がいるだけだ。そこを間違ってはいけない』という言葉。今はその言葉がすごく理解できるけれど、当時は分からなかった。つまり、仕事自体がつまらないわけではなく、クリエイティブに関わるすべを知らなかったんでしょうね」

映画監督 是枝裕和さん
―――そうなると、つまらないと思った仕事でも工夫しながら頑張ったほうがいいと。
(是枝監督)「ただ、僕はあまり我慢して頑張るタイプじゃなかったから、自分ができなかったことを人には要求しません(笑)。だから、つまらないと思ったことを我慢してまでやれ、とは言えませんね。事実、先輩からホントにつまらない仕事を押し付けられたときは、どうしようもなくつまらない仕事でしたから(笑)。ただ、自分が向いていることがわかって、その仕事に携われてからは仕事をつまらないと思ったことは一度もありません」

―――向いていることとは?
(是枝監督)「アシスタントよりはディレクター、監督のほうが性に合っていましたね。責任感が大きくなったとしても、こっちのほうが楽しいし自分に合っていると感じました」

映画監督 是枝裕和さん
―――映画監督とは仕事でしょうか?
(是枝監督)「仕事というものがお金のために我慢してやるもの、であるなら僕にとっては仕事ではないですね。けれど、僕は自分を映画作家とは思っていなくて、映画監督として捉えています。アーティストよりはアルチザン。アルチザン…つまり職人は儲かる、儲からないよりも目の前にある素材の一番いいものを引きだそうとする職業。ですから、素材と対話できるきちんとした職人になりたいと常々思っている。もちろん、僕の場合はその先に映画を観てくださる観客の方がいますが、まず向き合うのは素材なんです。それができるようになったのがディレクターを任された28歳から。でも今が一番楽しいな(笑)」

―――満面の笑みですね(笑)。“一番楽しい”と言い切れるのはなぜ?
(是枝監督)「なんでだろう…(しばし考え)でも、楽しいんだもん(笑)。当たり前ですが、今までまったく順風満帆じゃないですよ。赤字を出したり、視聴率が悪かったり、配給会社が倒産したり、いろいろな事情で映画が撮れない時期があったり。それでも、今、自分の気持ちが映画を撮ることにすべてが向かっているからわかりやすいし楽しいのだと思います。だって、50歳過ぎて楽しそうにしている監督がいないと、誰も映画監督になろうと思わないじゃない(笑)。映画の世界って大変で辛い…なんて思われていたら誰も続いてこないでしょ。だから楽しんでいる大人の姿を見せないとね」

●Profile
これえだひろかず●1962年、東京都生まれ。大学卒業後、番組制作会社に参加。ドキュメンタリー番組などを中心に制作を行う。1995年初監督作品『幻の光』が第52回ヴェネツィア国際映画賞で金賞を受賞。2004年『誰も知らない』では柳楽優弥が第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝く。『そして父になる』は第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し国内外で大ヒットを記録した。

●映画紹介
「海街diary」

(C) 2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

『海街diary』
全国公開中

鎌倉に住む三姉妹(綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆)のもとに届いた父の訃報。その葬儀で腹違いの妹、すず(広瀬すず)と出会い共に暮らすことになる。姉妹それぞれの悩みや喜びを美しい鎌倉の四季と共に描き出す。マンガ大賞2013受賞の吉田秋生のベストセラーを映画化。

インタビュー・文/中屋麻依子 撮影/八木虎造
※とらばーゆ「スペシャルインタビュー」より