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2015年07月13日

20歳学生、恋愛が面倒です…【精神科医・名越先生のカウンセリングルーム】

恋愛が面倒

テレビでおなじみの精神科医・名越康文(@nakoshiyasufumi)が心の悩みにズバッと答える! この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

相談内容:恋愛が面倒です

20歳大学生男子です。
恋愛が面倒です。これまでつきあった人が何人かいますが、いつもなんとなく面倒くさくなり、自然消滅したりけんか別れで終わります。人の気持ちを考えたり、誰かの為に何かをするというのが苦手なようです。
この先就職し、ひとり立ちしたとしても、結婚して家庭を持つ、ということはあまり考えられず、ひとりで気ままに生きていきたいというのが正直なところなのですが、それは人として間違っているでしょうか? やはり恋愛・結婚して家庭をもつ、ということをきちんと考えた方がいいのでしょうか?

恋愛や結婚を避けていると人生に退屈してしまうかも?

もしあなたが、「恋愛や人付き合いは面倒で嫌だ」と心の底から確信しているのであれば、それもひとつの生き方です。だいたい、「正しい生き方」とか「人として合っているか間違っているか」なんていう基準は、それぞれが自分なりに発見しなければならない面があるのは、皆が薄々、気づいておられる通りです。実のところ、「どう生きるか」ということは、最後は自分で決めるしかないのです。

とはいえ、本当に心の底からそう確信されているなら、この方はこんな質問は送ってこられないでしょう。「人として間違っているでしょうか?」と書かれているところを見ると、あなたは「気ままに生きていきたいというのが正直なところ」と口にしながらも、そのように生きていった先にある未来に対して、何か漠然とした不安を持たれているのではないか、と推察します。

つまり、「こんなに好き勝手に生きていて、将来寂しい思いをしたりしないか?」と不安だということですよね。

人生から他人を遠ざけることは「退屈」と闘うこと

Sad man with Santa hat wiping his eyes from crying
さて、その不安が当たっているか外れているか、といえば「当たっている」というのが僕の意見です。もちろん、人それぞれの人生ではありますが、僕が精神科医として数千人の方の人生に触れてきた経験から申し上げて、「人付き合いを避ける」ということには、かなり確実に、その人の人生を苦しい方向に引っ張ってしまう傾向にあるように思います。

ではなぜ、人付き合いを避けて生きるのがまずいのか。孤独で寂しい人生になるとか、一人前として見てもらえないから、というのもありますが、それは本質ではないでしょう。ただの「寂しさ」であれば、仕事や趣味に邁進すれば紛らわせることができます。そもそも、人付き合いをたくさんしていても、むしろそのことで深い「寂しさ」を抱えてしまう人もおられますからね。結婚していなくたって、誰にも負けないぐらい活躍していれば、一人前として認められないということはないでしょう。

人付き合いを避ける人生がはらむ問題の本質は、人間の心に潜んでいる「退屈」という魔物にあります。人生から他人を遠ざけている人は、どうしても「退屈」という魔物に人生の大切な時間を削られていくことになるのです。

退屈を吹き飛ばす一番有効な方法は「他者と関わる」こと

「退屈」は、自分の身の回りから「新しいこと」「予想外のこと」がなくなったときに起こります。そして、あなたの人生に「新しいこと」「予想外のこと」を持ち込んでくるのは自分ではなく、多くの場合他人なのです。人付き合いを遠ざけていると、だんだんと生きていくのが辛くなる。それは結局のところ、「退屈」の問題なのです。

一人でも、何かに打ち込んだり、量的に知識を増やしていくことはできるでしょう。でも一人で生きる人生には、あなたの「退屈」を吹き飛ばすほどの「新しいこと」「予想外のこと」は起きてくれないのです。

あなたが想像している以上に、退屈にとらわれる人生というのは苦痛です。「退屈」はしばしば、「みんなが私のことを軽んじている」という怒りに転じます。侮辱されている、軽蔑されている、不当な扱いを受けている……そうした他者への怒りに心を焼かれている人の多くは、実は日常に退屈している人です。

そして、退屈という魔物を退けるのに、一番有効な方法。それが、他人と関わることなんです。

恋愛を面倒くさがる前にやってみるべきこと

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ただし、あなたが面倒臭がっている「恋愛」というのは、実は対人関係の中でもなかなかハイレベルなタスク(課題)です。人付き合いが苦手というあなたには、おそらく、恋愛よりも先に取り組むべき対人関係上の課題がまだたくさんあるでしょう。

例えば、恋愛よりはずっと優しい課題ですが、「周囲の人に親切にする」ということも、なかなか重要な、対人関係上の課題です。「そんなの簡単じゃないか」と思われるかもしれませんが、相手に「なんだ、このお節介な奴は」と思わせず、自然と親切にするのはそれほどたやすいことではありません。相手や状況によって柔軟に対応を変えないと、「親切にする」ということひとつとっても、そう簡単にうまくはいかないのです。

あるいは、自分の心の中に「親切にしてやったんだから、感謝してもらわないと」というような期待を(知らない内に)持ってしまっては、せっかく親切にしたことが帳消しになってしまうぐらい、後々、心のなかを怒りに変えてしまうことが少なくありません。

相手の領域に踏み込み過ぎず、さわやかに親切にして、なおかつ、そうやって「親切なことをした自分」を次の瞬間には忘れてしまう。日々、そういう対人関係上の課題に取り組んでみる。やってみればわかりますが、これだけでも、毎日生きることに退屈しなくなるでしょう。

人間ほど、人間の予測を裏切る存在はない

もし、これくらいの日々のエクササイズがかなり「しんどい」と感じられるレベルに他人が苦手、ストレスを感じるということであれば、植物や、ペットを飼ってみる、ということから始めてみるのも一案です。人間ほどではないにしても、ペットは飼い主のいうことを聞きません。植物も、ときにあなたの思い通りに育ってはくれないでしょう。あなたがきちんと植物の様子を観察し、水をやり、肥料をあげる、といった世話をしなければいけない。

ペットや植物に予測を裏切られる日々が続くかぎり、あなたの心は決して退屈することはないでしょう。

でも、何よりも人間の心をもっとも退屈させないのは「他人」の存在です。人間ほど、人間の予測を裏切る存在はないのです。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。

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