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2025年05月27日

カレー沢薫の「日々、なりゆき、運任せ」│仕事のやる気まち問題

カレー沢 コラム タウンワークマガジン townwork現在5月中旬でありGW(ガッデムウイーク)が終わって一週間たった。

フリーランスにとってGWは関係がない上にどこも人が多くなるリアルガッデム期間なので、GWが終わっても特にダメージはなく、むしろ5月7日に謎のライフ回復が起こるほどだ。

だがフリーランスが会社員より元気なのは連休明けぐらいのものである。

つまり今は年に十数回しかない「フリーランスより目に光がない会社員」を観測できる時期だ。

特にGW明けは社会へ巣立ったはずの若鳥が大量Uターンしてくる貴重映像が見られるチャンスである。

私も双眼鏡片手に明け方からSNSに張り込み、トレンド欄に「退職代行」や退職代行会社の名前が飛来するのを待ったのだが、なんと私が観測した限りではそれらの名がトレンド入りすることがなかった。

今年の若鳥たちの多くはGW明けを乗り越え、すっかり変わった面構えで無事会社にたどり着いてしまったのかもしれない、何ごとにも「不作の年」というものはある。

だが「今年のUターン勢はGW前にターンし終わっていた」という説もある。

だとしたら観測時期を誤った私のミスであり、5月に桜を見に行くようなマヌケだったということだ。

確かにGW明けという憂鬱を抱えてのGWなど赤錆ウイークでしかない、明るい気持ちでGWを迎えたいなら、GW前に会社を辞めておくのは当然である。

病(ビョウ)は治療よりも未然に防ぐことのほうが大事なのだ、五月病を発症する可能性が高いと分かっていながらストレス源の一つである仕事を辞めずに5月に突入するのは自己管理能力に欠けているとしかいいようがない。

一か月で新入社員の退職届を受け取らなければいけない管理職の心情は置いておいて、未来を担う若者たちが病(ビョウ)を未然に防ぎやすくなったというのは良いことである。

元々日本人は真面目で勤勉、または不真面目で勤勉じゃない奴に対する攻撃性が凄まじいせいか「健康」と「仕事」の優先順位を間違えがちなところがあった。

現在でも「明日仕事だから」を理由に何かを辞退したり早く切り上げたりする人は多いだろうし、それは真面目でいいことだが、そういう発想が行き過ぎた結果「明日仕事なので」と言って点滴をつけたまま病室を脱走しようとする奴が現れるのだ。

仕事は最優先事項ではない、GWに布団と背中が溶接されているような状態ならば行くべきではなく、無理やり剥がして行った方が予後が悪い。

しかし、それほどではないがGW明けに「やる気」を失っている人も多いと思う。

辞める気がないならやる気はなくてもやるしかないのだが、そんな状態で仕事をするのは苦痛である、仕事にやる気を失った時、どう対処すべきだろうか。

まず、やる気を失ったらその状態を「正常」だと設定し直すところから始めよう。

やる気がある状態を「正常」に設定してしまうから、やる気がなくなったことを「不具合」と感じてしまうのだ。

数十年働き続けることを普通とされている我々である、そんなハード設定で挑んだら詰みがちになるのは当然だ。

「仕事」自体がFC版ドラクエ2に並ぶ超高難易度ゲームなのだから、己に課すプレイヤー設定ぐらいはイージーにしてもいいだろう。

そもそも「仕事はやる気でやるもの」と錯覚をしているから、やる気の増減に心身が振り回されるのだ。

信じられないかもしれないが「勤労」は「義務」なのである、私も聞くたびに「マジで言っているのか」と思うが、憲法の割と早い段階に書かれているのでどうやらガチのようである。

労働にやる気の有無は最初から無関係のようで、あろうがなかろうがやらざるを得ないらしいのだ。

この労働に対する解釈に異論がある場合は臆せず指摘してほしい、私も間違いであってほしいと思っている。

つまりやる気のなさを理由に仕事を渋るのは機動隊にビンタで応戦するぐらい無駄な抵抗であり、最終的に「やりたくなくてもやらなければいけない」という結論に達するので、いかに早く抵抗を諦めて取り掛かるかが重要になってくる。

実際やる気というのは取り掛かってしまえば出るものであり、取り掛かるまでが最難関なのだ。

ただこれは「やる気がない」というより「やる気を出すのが面倒くさい」の状態だ。

出せる気力と体力がそもそも枯渇しているのなら義務より休む方が先であり、むしろ休むのが義務と思って欲しい。

しかし、やる気充電ために休養が必要なことに異論はないのだがその期間があまりに長くなりすぎると「回復はしているが社会に対して気まずい」という理由で復帰がしづらくなることもある。

気まずいというのは、中学のころ一瞬つきあった相手と20年ぶりに再会、みたいなエモい話ではなく端的に言えば社会に対する「恐怖」である。

休んだことにより、起き上がって一歩踏み出す勇気が必要になってしまうのだが、社会側も休養に入った者が恐怖を感じず復帰できるように寛容でなければならない。

間違っても、面接最初の質問が「この空白期間なにしてたの?」であってはならない。

カレー沢薫
1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神”と崇められる人気作家。
X(旧Twitter): @rosia29

【カレー沢薫の「日々、なりゆき、運任せ」】

▶第4回 お金をとるか、時間をとるか
▶第3回 推し活仲間との温度差問題

【カレー沢薫さんのその他の記事】
▶カレー沢薫の「バイト丸わかり図鑑」

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

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