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2017年01月25日

「自分を過小評価してしまう」思考を克服する方法│名越康文

名越康文

自分に自信がないと感じている若者が多いと言われます。実際、自信がないことで自分を過小評価してしまい、結果、何事にもチャレンジできなかったり、マイナス思考になってしまっている人は少なくないようです。こうした思考から抜け出す方法について、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にお話しを伺いました。

自分の枠を捨て去る勇気を持つために


僕たちは誰しも、「自分はこんな人間だ」「自分の実力はこんなものだ」という認識の枠組みを持っています。それはたいてい、実際にその人の身体や心が備えている可能性よりも、小さな枠組みです。「今の自分に自信を持つ」ということは、その小さな枠組みに満足し、安住することです。

しかし、本当の自信とは、その小さな枠組みを破った時にこそ、手に入るものなのです。

人は、自信があるから、チャレンジできるのではありません。チャレンジするからこそ、人は本当の意味での「自信」を身につけることができるのです。ずっと親と一緒に行動していた子供が、生まれて初めて自分一人で買い物をした時の達成感を思い浮かべてください。自分の枠組みを破る経験こそが、その人に自信と、何かにチャレンジしようという勇気を与えてくれるのです。

「今の自分に自信を持つ」ということは、今の自分の「小さな枠組み」を過大評価することにほかなりません。でも本当の自信が欲しければ、どれほど小さくても、自分の認識の枠組みを破り続けることが必要なのです。
 

我を忘れるような体験をする


いつも自信を持ち、人生を輝かせている人は、自分の小さな枠組みを打ち破ることをいわば「日常」にできている人なのだと思います。そういう人にとっては、自分の小さな枠組みを打ち破ることは、(それなりの怖さはあっても)気持ちのいい、楽しい体験です。だからこそ、どれほど成功しても、今の自分にこだわることなく、新しいチャレンジができるのです。

ただ、自分の枠組みを壊すことに慣れていない人にとっては、そもそも自分がどんな枠組みにとらわれているのかすら見えにくいし、どこから取り掛かっていいか、わからないかもしれません。

しかし、自分の枠組みを打ち破るためにやるべきことは、実は非常にシンプルなんです。それは「我を忘れるような体験をする」ということです。

「バンジージャンプ」ってありますよね。足に紐をくくりつけて、高いところから飛び降りる。「自分の小さな枠組みを破る」というのは、イメージとしてはバンジージャンプに近い。といっても、バンジージャンプそのものをやる必要はありません。僕だって嫌です(笑)。でも、日常の中で、自分にとって「精神的なバンジージャンプ」になるのはどういうものかということを探してみるのは、自分の殻を破るうえで、大きなヒントになるはずです。

たとえば、女の子と喋ったことのない男子中学生が、初めてクラスの女子に声をかけること。あるいは、漫画しか読んだことのない高校生が、初めて文字だけの本を読んでみること。それくらい小さなことであっても、その人にとっての精神的なバンジージャンプを、日常の中に取り入れることが大事です。

自分の枠組みを打ち破ることで、私たちは一回り大きな自分になることができます。そういう「自己拡張」の瞬間に、僕らは本当の意味での「自信」を得ることができるんですね。ですから、取り組むのは何でも構いません。勉強でも、スポーツでも、生花でも、盆栽でも構わない。とにかく何かに集中し、没頭し、そして何かをやりとげた瞬間の達成感が、自己拡張をもたらしてくれるのです。
 

自由にならないものが集中をもたらす


自分の枠組みを打ち破るためには、対象に没頭し、我を忘れる必要があります。では、我を忘れるためには、どういうことに取り組めばいいか。それは突き詰めれば、「自分の自由にならないもの」に向き合う、ということなんだと思います。

たとえば同じ映画を観るにしても、映画館で観るのと、DVDで観るのでは、おそらく前者の方が、圧倒的に没入できると思うんですね。自宅でDVDや、スマートフォンで動画を見ている時というのは控えめに申し上げても、7割ぐらいの人が途中でSNSを確認するなど、あまり作品世界に没入できない状態になっていると思うんです。

これが映画館になると、一度映画が始まれば、最後まで椅子に座って、見続けることが強制されますよね。これは一見不自由で、受動的な状態に見えます。ところが不思議なもので、人はこういう状態に置かれた方が、主体的に「映画」というものに没入し、「我を忘れる」ことができるんです。

自分の思い通りになるものに対して、僕らは没頭することができない。不思議な話ですけど、これは本当のことです。自分の思い通りにならないものだからこそ、僕らは夢中になることができる。ままならない、自由にならないものだからこそ、僕らはそれに没頭し、自分の枠組みを破ることができるんです。

なぜ、自分の思い通りになるものに対して、私たちは没入することができないのでしょうか? 言い古された言い方を許していただければ、私たちは常に「他者に出会う」ことを求めているからではないかと思います。自分が好き勝手にできるもの、自由にできるものは、どこまで行っても「今の自分」の延長線上にある。そこに安住する限り、自分の殻を破ることができないということを、僕らは心のどこかで感じています。

他者とは常に、違和感と、恐怖を引き起こす存在であり、それと同時に、自分の殻を打ち破ってくれる可能性をはらんだ存在です。

自分に自信がなくて、新しいことに挑戦することが恐ろしいと感じているあなたは、そのことに気づいている分だけ、大きな「チャンス」があると考えてください。そして身近にある「ちょっと怖い/恥ずかしい」けれど、やってみたいことに、チャレンジしてみてください。そのチャレンジこそが、自分を成長させ、自信をつかんでいくきっかけとなるはずです。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。

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