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2017年04月05日

会話でマウンティングしがちな人の心理とその対処法(名越康文)

名越康文 タウンワークマガジン

会話の際に自分と相手を格付けし上に立とうとすることを指して「マウンティング」という言葉があります。こうした傾向のある人の心理はどのような状況になっているのでしょうか。また、そんな人に上手に対処する方法について、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)にお話しを伺いました。

序列を作るのは「人類の知恵」

マウンティングというのは、要するに「ちょっとしたことでも他人より自分が優位に立とうとする」ということですよね。学校のクラスメイトや会社の同僚(役職も仕事も同じ)の間に序列なんかないはずなのに、どうしても上下をはっきりさせようとする人のことを言うのだと思います。

まず確認しておきたいのは、そもそも「序列をつける」というのは悪いことなのか? ということです。「マウンティング」という言葉には、そうやってことさら序列を気にする人のことを、少し揶揄するニュアンスが含まれているように思います。しかし、会社であれ、友人関係であれ、人間の集団には必ず序列はあるし、それは必ずしも「悪」ではないんじゃないでしょうか。

僕の考えでは、序列というのは、人類が社会や文化というものを形作ってくる過程で発見した「知恵」なんです。「序列が知恵」と言われると違和感を持つ人もおられるかもしれませんが、序列は、少なくとも「集団の混乱を避けるための装置」としては、非常に有効だったと思うんです。家族制度にしても、会社の上司・部下にしても、序列があることによって、大きな社会集団がうまく機能するわけです。

マウンティングというのは「自分の序列を優位にするために、集団の和を乱してしまう」ということで揶揄されてしまうわけですが、そもそも「集団の和」というのは、なんらかの序列があって初めて成り立つものなんですよね。

「序列を気にする人」は、「誰もが序列を気にしている」と信じている

名越康文 タウンワークマガジン
マウンティングという言葉の背景にはもうひとつ、「序列を気にする人」と「序列を気にしない人」との間にある、大きな認識のギャップがあると僕は考えています。一言でいえば「序列を気にする人」というのは、基本的に「他の人も本当は、序列を気にしているはずだ」と思い込んでいる、ということです。

もちろん現実には、何かとマウンティングしようとする人もいれば、そうでない人もいます。しかし、ついマウンティングをする人は「程度の差はあれ、人は誰でも例外なく、相手よりも優位に立とうとしているはずだ」と信じているし、マウンティングをしない人というのは、「ちょっとしたことで人より優位に立とうとするのは、あくまで例外的な、変わったパーソナリティを持った人だけだ」と無意識のうちに考えている。

こうした認識のギャップは、結局のところ「人間とはこういう生き物だ」という人間観や、「世界とはこのように営まれているはずだ」という世界観のギャップから生まれるものです。

両者の間にある人間観、あるいは世界観のギャップは、互いの立場をイメージすることすら困難なぐらい、大きく隔たっています。この両者の溝、ギャップを埋めるためには、心理学、とりわけ性格分類を学ぶことが欠かせない、というのが僕の考えです。

バイトや日常の人間関係に効く類人猿分類

名越康文 タウンワークマガジン
性格分類というのはしばしば、根拠がないとか、非科学的だという批判を浴びることがあります。しかし、きちんとその意義を理解し、正しく使うことができれば、ビジネスや日常の人間関係を改善していく上で、非常に大きな力を発揮することができるツールだと僕は考えています。

中でも、初学者の方に僕がよくお勧めしているのが「類人猿分類」という性格分類です。類人猿分類というのは、人間に最も近い種といわれるオランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボという4種の大型類人猿の行動傾向を元にした性格分類です。

たった4つに分類するわけですから大雑把なようですが、逆に、これくらい大まかに分類することによって、自分とは全くタイプの違う人たちの感受性や行動傾向を、大づかみに捉えやすいところが特徴です。

類人猿分類の発案者は岡崎和江さんと言って、広島県福山市に拠点を置く、食品スーパーや外食などを手がける株式会社エブリイホーミイホールディングス(以下、エブリイグループ)という会社の人材教育や研修に携わっている方です。このエブリイグループは、社員教育や人員配置にこの類人猿分類を取り入れることによって、急成長を遂げたことから注目され、最近では『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)、『とくダネ!』(フジテレビ系)などに取り上げられるなど、全国的に注目を浴びるようになっています。

類人猿分類について詳しい解説は、こちらのサイト

http://yakan-hiko.com/gather/

をご覧ください。無料診断ツールも解放されているので、一度自分や、周囲の人を診断してみるとよいでしょう。

集団内の序列を気にするタイプとの付き合い方

名越康文 タウンワークマガジン
さて、類人猿分類を少しでも学べば、マウンティングについても、捉え方や対処が大きく変わってきます。具体的に言えば、マウンティングで問題となる、集団内の序列を気にするのは、大きく分けると「チンパンジータイプ」、次に「ボノボタイプ」ということになります。

もちろん、オランウータンタイプやゴリラタイプも、序列と言うものを全く意に介さないわけではありません。しかし、序列の中で「自分が上位に行きたい」という欲求が、チンパンジーに比べると少ないのです。

しかしながら、チンパンジータイプは「他のタイプの人も自分と同じように序列に強い関心を持っているはずだ」と無意識のうちに思い込んでいます。そういうチンパンジータイプにとって、出世に関心を示さないオランウータンタイプは、「表に出さないだけで、本当はこいつだって出世したいに違いない。何を企んでいるんだろう?」というふうに見えてしまうわけですね。

逆に、自分のやりたいことだけやりたいという、ある意味での「エゴの塊」と言ってもいいオランウータンタイプが、序列に強い関心を示して行動するチンパンジータイプに出会うと、「何でこの人は、いちいち自分が上に立ち上がるのだろう?」と奇妙に感じるかもしれません。マウンティングという言葉は、こういうタイプの違いによるギャップから生じた言葉という側面が強いのではないかと思います。

人間には(少なくとも4タイプ以上の)様々なタイプがいて、それぞれの間には大きな認識のギャップが存在する。そのことが理解できると、少なくとも自分と異なるタイプと接した時に、心がざわつくことが少なくなります。

「あの人、何であんな言い方するのかなあ?」という、ちょっとイラっとした感情が、「そうか、あの人は○○タイプだから、ああいう言い方になったんだな」という認識に変わる。このことは大げさではなく、人生を変える力があります。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。

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