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2017年05月11日

マルチな才能を持つ人は身につけている!? 「飽きる力」と「切り替えの速度」(名越康文)

マルチ 才能 星野源 名越康文 タウンワークマガジン

俳優・ミュージシャン・小説家としてマルチに活躍する星野源さん。その多彩さが人気の要因のひとつですが、いくつもの分野で才能を発揮するためには、元々いくつものことに同時に情熱を燃やすことができたからこそ今があると思います。そんな星野源さんのように、同時に複数のことに夢中になる方法について、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)に答えていただきました。

マルチな人には「飽きる力」がある

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若い頃、僕が憧れた人物の一人に、ジャン・コクトーという人がいます。コクトーは絵画や音楽、小説、詩、評論など、様々な分野で活躍した人ですが、そのどれをとっても一流、という人でした。また、先日亡くなったプリンスも、僕の人生に大きな影響を与えたアーティストですが、作曲家であり、歌手であり、ダンサーであり、楽器奏者であるという、非常にマルチなミュージシャンだったと思います。

そういうマルチな活躍を見せる人がいる一方で、一つの分野で突き詰めて、成果を発揮する人もいます。僕はそのどちらの在り方も魅力的だと思っていますが、せっかくご質問をいただいたので、ここではあえて「マルチに活躍する」人の資質について、少し考えてみましょう。

ご質問をいただいてすぐに、僕の頭に浮かんだのは「飽きる力」です。マルチな人に共通しているのは、実は「飽きる力」だと思うんですね。

「飽きっぽい人」というと、ネガティブな印象を持つかもしれませんが、意外に、マルチな才能を発揮する人には、ある種の「飽きっぽさ」がある。それこそ「人生をかける」ぐらいの勢いで何かに取り組んでいたはずなのに、次に会うと全く違う(ように見える)ことに、全力を注ぎ込んでいたりするわけです。

周囲から見ると、そういう人は移り気で、一つのことに集中できないように見えるかもしれませんが、実は、何かに集中することと、何かに飽きるということは、表裏一体の能力なのです。

「移り気である」ということは、必ずしも「集中力がない」ことを意味するわけではありません。音楽を聴いていて、飽きてきたら、本を読み、本を読むのに飽きてきたらゲームをする。そういう人の中には、「集中する対象」を次々に変えているだけで、一つひとつの物事に対しては、驚くほど高い集中力を発揮しているケースが少なくないわけです。

人は「一度にたくさんのこと」などできない

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「飽きる力」という切り口から、マルチに活躍する人を観察してみると、彼らは必ずしも「同時にいろんなことをやっている」わけではない、ということに気がつきます。マルチと言われる人たちも、結局は一度にひとつのことにしか、集中することはできない。ただ、彼らは「短時間の間に、集中する対象を切り替える」ことが得意なんですね。だから「いろんなことをやっている」ように見えるんです。

そもそも、人間は、「一度にたくさんのことをやる」ようには作られていません。空海は「人間は一度に3つのことしか同時にできない」と言っています。その3つとは「身」「口」「意」、すなわち、身体を動かすこと、言葉を発すること、心に思うことの3つです。そして、その3つをバラバラではなく、もしも統一して働かせることができれば、巨大な力を発揮することができる、と言っています。

つまり、空海は「あなたの持つ力をフルに発揮したければ、身体も、言葉も、心も、一つにしなければいけない」と言っているわけですね。

マルチな人は切り替えの「速度」が速い

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では、「マルチに活躍する人」というのはダメなのかというと、実は彼らも、この原則から外れているわけではないのだと僕は考えています。つまり彼らは実は「たくさんのことを一度にやっている」わけではないのです。一度には一つのことにしか集中していない。ただし、それが終わった瞬間に、次のタスクに切り替えることができる。それが「マルチな人」の秘密だと思うのです。

よって、マルチタスクの要諦は、切り替えの「速度」にあります。時々、テレビで、いわゆる「スーパー主婦」が登場することがあります。ぼんやりと眺めていると、彼女たちは洗濯物や料理、掃除や片づけを「同時」にやっているように見えます。

しかし、よくよく観察すると、すごいスピードで家事をこなしている人ほど、一つ一つの家事を、丁寧にやっているんですね。ただ、洗濯から料理、掃除から片付けとタスクが切り替わる瞬間がめちゃくちゃに早い。だから、たくさんのことを「同時にやっている」ように見えるのです。

切り替えの速度を高める訓練

マルチ 才能 星野源 名越康文 タウンワークマガジン
集中の対象を切り替える速度というのは、天性のものもありますが、実はある程度、訓練によって鍛えることも可能だと僕は思います。

実際、僕はもともと、それほどこの「切り替え」が得意なタイプではなくて、少し前の作業の時の気分を引きずってしまいやすいところがありました。しかし最近は、だいぶ切り替えスピードがアップして、「今、ここ」に集中できるようになってきました。

その役に立っているかな、と思うのが、「水浴び」です。数年前から、毎朝お風呂で水浴びをしているのですが、朝起きた時のぼんやりとした気分が、冷たい水を浴びることによって一気に覚醒する、その「一瞬で切り替わる」感覚を毎朝体験していると、だんだんと切り替えの速度が上がってきたな、と感じるのです。

水浴びをしていて感じるのは、気持ちを切り替えるには、ある程度の「勇気」が必要だということです。僕らは無意識のうちに、気持ちを切り替えることを嫌っています。なぜなら、今のままでいる方がズルズルとして楽だからです。気持ちを切り替えるには、その無意識の壁を打ち破る、それなりの勇気が必要なのです。ちょうど、冬の寒い日の朝に、頭から冷たい水をかぶる時と同じような「よし! やるぞ!」という決意が必要なのですね。

皆さんも、日常の中で「切り替えの速度」を高めることを意識してみてください。それこそ、仕事を始める時、本を読み始める時、切り替えの速度を意識するようにする。それだけでも、ずいぶんたくさんのことをこなせるようになってくると思います。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。