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2017年07月21日

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)

「忙しくて時間がない」「暇で時間を持て余している」など忙しさのレベルには差がありますが、時間を有効活用できていないと感じている人は少なくありません。こうした悩みを持つようになる心理や、改善する方法についてテレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生@nakoshiyasufumi)に答えていただきました。

集中モードに入るには「やりきった」感覚をもつこと

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)

「もっと有効に時間を活用したい」と考える人は、日頃なんとなく、<不完全燃焼>している感覚を持っている人だと思います。

思ったように仕事がはかどらない。目の前のことになかなか集中できない。何をやっても<不完全燃焼>している感じがあると、私たちは「もっと時間があれば」「時間が足りない」「時間を有効活用できていない」と考えるようになります。

そういう不全感を解消するためにまず必要なこと。それは、とにもかくにも、「やるべきことをやりきった!」という感覚を持つことでしょう。

その感覚を抱いていれば、後の時間は、ネットでニュースを見ていても、スマホでゲームをやっていても、別に「無駄な時間を過ごしている」といった焦りは、それほど強く感じなくなるはずです。

ただ、皮肉なことに、物事というのは「やるぞ!」と身構えれば身構えるほど、うまく集中して、やりきることができなくなるものなんですね。

つまり、「時間を有効活用できない」という悩みがなかなか解消されないのは、「時間を有効活用しよう!」という焦りが、目の前の物事への集中力を妨げてしまうからなのです。

何気なくスタートを切ると集中しやすい

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)
「集中する」というと、ひとつの物事に全神経を働かせている状態だと思っている人も多いのですが、本当に人が作業を効率的に進めているときというのは、力が抜けて、静かで、自然体です。そういう「理想的な集中状態」に入るためには、まず「こうしよう」「ああしてやろう」という目的意識を一時的に忘れることが必要です。

「集中力を高めるぞ」とか「もっと効率的に時間を使おう」と思った瞬間、その効果は半減します。自分の中の「さあ、今からやるぞ!」という意識と、実際に行動するタイミングを、うまくずらしてやる。そのことによって初めて、私たちは良い集中状態に入ることができます。

僕も経験がありますが、ずっと煮詰まって進んでいない原稿があるとき「今日こそあれを仕上げるぞ!」と決意しても、たいていうまくいかない。それよりも、まったく別の作業をしている最中に、何気なく、ワードファイルに数文字でもいいから書き始めてみるんです。

そのままうまく続きそうならどんどん書けばいいし、ダメそうなら、もう一度、仕切り直す。例えば、トイレに行って、戻って席に着いた瞬間に、何も考えずにキーボードに手を置く。そうやってあまり構えず、「何気なく」スタートを切ると、どこかで必ず、集中して一気に仕事を進められる瞬間がやってくるんです。

なぜ、「何気なく」が良いのか。それはおそらく、緊張とリラックスとが、あるゾーンでバランスを保っていることで始めて、私たちの集中力というのは存分に発揮されるものだからです。

「やるぞ!」と気合を入れれば入れるほど、過緊張になります。それを良いバランスに戻すためには、普通だったら「やるぞ!」とは思わないような、ある意味<唐突><脈略のない>タイミングで、物事に手をつける必要があるんです。

相撲の立ち合いのようにタイミングが合う瞬間を待つ

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)
「何気なく」という感覚をつかみづらい人もいるかもしれません。私はよく、陸上競技のスタートと、相撲の立ち合いを比較して説明をします。

相撲で、横綱大関クラスの力士たちが、最高にタイミングが合った立ち合いをした瞬間の二人の表情を見てください。表情もすうっと静かに落ち着いて、お互いが高い集中状態にいることがよくわかります。

あの高い集中状態を生むひとつの要因が、相撲の「立ち合い」という独特のルールにあると僕は思います。行司が号令をかけるわけではなく、自分と相手とが呼吸を合わせ、お互いが「今だ!」と感じ取った瞬間に、スタートが切られる。いやより正確にいうと、今だ! という意志も消えて、いわば『無』になっている状態で動く、それが相撲の立ち合いの特徴です。

これは、あいまいな方法のようですが、人間の集中力の本質をとらえたルールだと思います。互いのタイミングが合わなければ何度も「仕切り直し」をして、何度も何度も、「スッ」と心が集中モードに入れるタイミングを計っていく。これは仕事でも、勉強でも、応用できる優れた方法論だと僕は思うんです。

陸上競技のように「ヨーイ、ドン!」と号令をかけても、私たちはなかなか、本来の力を発揮することができません。

それよりは、相撲の立ち合いのように、相手と自分の呼吸を丁寧に合わせ、ピタッとタイミングが合う瞬間がくるのを待つ。そのほうが、集中力を高めるためには、実践的なんです。僕よりも上の世代の方は、毎日のように相撲の中継をテレビで見る習慣があったと思うのですが、あれは、集中力を高める方法を学ぶのに、最良の教材だったように僕は思います。

相撲の立ち合いのように、うまくいかなければ、何度でも、仕切り直してください。そうやって、1日のうち数回でも「集中して一つのことをやりきった」という感覚を持つことができれば、時間を有効活用できていないという焦りは、消えていってくれることでしょう。

人間には「無駄な時間」も必要

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)
ところで、ここまでご説明しておいてちゃぶ台を返すようでなんなんですが、僕自身は、そもそも「時間を有効に使う」ってどういうことなんだろう? と疑問を抱いてもいるのです。

というのも僕自身、改めて振り返ってみると、ネットでニュースを見たり、SNSに食事の写真をアップしたりと、1日最低2時間ぐらいは「無駄なこと」や「必要のないこと」に使っているように思います。

でも、だからと言って僕はあまり、「時間を有効活用できていない!」と焦りを感じることはないんですよね。それはたぶん、「人間には無駄な時間も必要だ」と、僕が考えているからだろうと思います。

本来は原稿を書いたり、もっとキチンとした資料を読んでいたほうがいいはずです。

でも僕は実は、そういう「無駄な時間」が、長い目で見た時には大切だと考えているんです。

効率を追うと伸びしろが失われる

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)
目先の仕事の成果だけを考えるのであれば、毎日をなるべく有益なこと「だけ」に使ったほうがいいでしょう。でも、長期的な視野に立った場合には、日々の生活を「意味がある」ことだけで埋め尽くしてしまうは必ずしも、賢い手段とはいえない、というのが僕の考えです。

なぜなら、僕らは「無駄な時間」を過ごすことによって、「伸びしろ」を手にすることができるからです。

余計なこと、無駄なことをやっていると、焦りを覚えることもあるかもしれません。「必要なこと」だけをやっていた方が、「自分は意味のあることをやっている」と、安心できるかもしれません。

でも、「すぐに役に立たないこと」「どうでもいい余計なこと」を知り、経験しておくことによって、その人の知識には「奥行き」や「ゆとり」が生まれます。それが将来の伸びしろにつながるのです。

「余白」のある人は周りを活性化できる

時間を上手く活用できていない人の名越流・時間整理術(名越康文)
「無駄な時間」を過ごすことは、一言で言えば「人生に余白を作る」ということでもあります。

「余白」は、それ自体は別に役に立ちません。しかし、人生にゆとりができて初めて、人は「他人に貢献すること」ができるようになります。一見、役に立たないことや無駄なことをやっているように見える人のほうが、周囲の人が育っていきます。「余白」のある人は、周囲の人にとって、良い「肥やし」になることができるのです。

「え? 周囲の人の肥やしになんかなりたくない! 自分の力は自分のために使いたい」という人もいらっしゃるかもしれませんね。でも、周囲の人の力を伸ばしておくことは、長い目で見れば、あなたのためにもなるのです。

一見仕事に関係のない知識や教養、経験を身につけることによって、飲み会や会社の行き帰りのちょっとした雑談の中で、あなたの周囲にいる人の知性を、知らず知らずのうちに活性化させることができます。その結果、思ってもみないアイデアや、意外なところから支援を得られるようになるかもしれません。つまり人の能力は、それが一見個人の能力であっても思いの外、「状況依存的」なものなのです。

時間を有効活用したいと考えるのは悪いことではありません。しかし、あまりに「効率性」や「有効性」にとらわれるあまりに、人生から「余白」の時間をなくしてしまうのは、お勧めできないと感じます。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。