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2017年08月24日

ひとりぼっちになりたい君へ–つながり依存症への処方箋(名越康文)

名越康文 コラム タウンワークマガジン

ツイッターやフェイスブック、LINEといったSNSでつながることに疲れ、もっと自由に、一人の時間を満喫したいと考える人が、若い世代で増えているという調査があります。ただその一方で、仲間から孤立することを恐れ、周りの空気を読み、人目を気にする傾向も依然として強いようです。自分一人で自由な時間を求めつつも、孤立することは避けたい。そんな人に向けてテレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生@nakoshiyasufumi)にアドバイスをいただきました。

※参考 https://www.rad.co.jp/report_list/20170112/

充実した「ひとりぼっちの時間」を邪魔するもの

名越康文 コラム タウンワークマガジン
若いみなさんの間で、「ひとりの時間」を満喫しようと試みる方が増えているというのは、大変素晴らしいことだと思います。ただ、「ひとりの時間を過ごしたい」という気持ちの中に、「他人と関わりたくない」「傷つきたくない」と言った、ネガティブで、暗い感情がつきまとってはいないか、ということには、ちょっと注意が必要です。

6月に出した『SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』という本の中で、私は、仕事や人生をより豊かなものにしていく上で、いかに「ひとりぼっちの時間」が大切か、ということを書きました。そこで繰り返し、強調して述べたのは、いかにして、ひとりぼっちで過ごす時間を、明るく、充実した時間にしていくかということについてでした。

家族、友人、同僚、恋人……私たちは、さまざまな「つながり」の中で生きています。もちろん、身近な人との人間関係というのは、それ自体は、決してネガティブなものではありません。むしろ、豊かな人間関係というのは、その人の人生を、基本的には豊かにしてくれる要素と言っていいだろうと思います。

しかし、私たちが「つながり」を意識する時、そこには往々にして、ネガティブな感情が結びついています。

「実は自分は、同僚から嫌われているのではないか?」
「彼との関係は、この先も同じように続くのだろうか?」
「私はいつまで、この人と一緒に過ごさなければいけないのだろう?」

ただ単に、人と会わずに、一人の時間を過ごすだけでは、私たちはつい心の中で「誰か」との会話を始めてしまいます。そんな状態では決して「明るく、充実した時間を過ごしている」とは言えないでしょう。それに、「心の中の他人と会話している」のであれば、それは「ひとりぼっちの時間」ですらないと私は思います。

「ひとりぼっちの時間」を過ごしたければ、私たちはまず、ネガティブな感情を伴った「つながり」から、手を離す必要があります。そうすれば、ひとりぼっちの時間というのは必ず、明るく、爽やかで、充実した時間になるはずなのです。

「ひとりぼっちの時間」は「つながりの実感」をもたらす

名越康文 コラム タウンワークマガジン
ネガティブな感情を伴う「つながり」から手を離し、明るく、充実した「ひとりぼっちの時間」を過ごすこと。私はこれを「ソロタイム」と呼ぶことにしました。

「つながり」へのこだわりが強くなればなるほど、私たちは無意識のうちに、他人とのつながりを「確認」するようになります。挨拶を交わした時の相手の表情、スマートフォンのメッセージの表現やタイミング、電話の声のトーン……相手と自分とのつながりを無意識のうちに確認しようと神経を尖らせている。そんな「つながり依存」に陥りがちな私たちに、ソロタイムは、どのような効用をもたらすのか?

それは実は、「つながりの実感」を取り戻す、ということなのです。

つながりを手離すことで、私たちはつながりの実感を得ることができる。

非常に逆説的なのですが、実際にやってみれば、これは、多くの人が実感することができることだと思います。

「つながり」を確認しようともがいている間、私たちはどんどん、「つながりの実感」から遠ざかります。それに対して、ひとりぼっちで充実した時間を過ごし、「他人からの評価」や「嫌われるかも知れないという不安」から手を離すことができてくると、いつも喧嘩ばかりしていた家族や、分かり合えない相手としか思えなかった同僚に対する感謝の念が、ふっと湧いてきます。

つまり、私たちから「つながりの実感」を奪っているものの正体は、おそらく、私たち一人一人の心の中にある、他人への過剰な依存心なのです。ひとりぼっちで充実した時間を過ごすことによって、私たちはより深く、「つながりの実感」を再獲得することができるのです。

ソロタイムを過ごすコツは、対象に没頭すること

名越康文 コラム タウンワークマガジン
どうすれば、自分一人で、充実した時間を過ごすことができるのか? それには浅いレベルから深いレベルまで、様々な方法論があります。

明るく、爽やかなソロタイムを過ごすためのポイントを一つ挙げるなら、それは、<「対象」を見つけ、そこに没頭する>ということに尽きると私は考えています。

ただ、ぼんやりとひとりぼっちの時間を過ごすことができる、という人は、それほど多くはありません。手持ち無沙汰になると、私たちはつい、「つながり」に思いを馳せてしまいます。そうならないよう、何か、没入する対象を作っておくのが、ソロタイムのポイントです。

読書でも、映画でも、散歩でも、没入する「対象」は何でも構いません。とにかく「ふと気づくと、1-2時間経っていた」というぐらい、何事かに没頭した時間を過ごすようにする。

たったそれだけのことで、私たちは「つながりの実感」を取り戻し、心の奥底にある寂しさを払うことができるのです。

※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

<関連書籍情報>
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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。