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2017年10月04日

【コラム】他者評価という「毒」を「薬」に変えるには(名越康文)

名越康文 夜間飛行 コラム 他者評価

「自分は本当は明るい性格なのに、周りからはそう思われない」など、自分が認識している評価と他者の評価が食い違っていると感じる人は少なくありません。こうした違和感や悩みを解消する方法はあるのか、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文先生@nakoshiyasufumi)にご意見を伺いました。

他人からの評価は羅針盤になるか?

名越康文 夜間飛行 コラム 他者評価

自己評価と他者評価が食い違っている時にどう考えればよいか。まず、これについての心理学的な基本前提というのは、「他人からの評価を、決して気にしてはいけない」ということだろうと思います。

なぜなら、そもそも「周囲が認識している自分」と「自分が認識している自分」の間には、常に乖離があり、それはどちらが正しく、どちらが間違っているというものではないからです。

自分のことを、自分自身で正しく、客観的に評価する、というのは、ほとんど不可能です。でも、だからと言って他人からの評価をやたらと気にし始めると、私たちはそれに振り回されてしまいます。なぜなら、私たちはしばしば、他人からの評価を受けた時、その評価に「すり寄ろう」としてしまうからです。

例えば、「他人の話に真摯に耳を傾けるのが、あなたの良いところだね」と誰かから褒められた。それ自体は、悪いことではありません。しかし、その評価があまりにも内面化してしまうと、「耳を傾けるべきではない場面」でも、「これが私のいいところだから」と、受容的になってしまう、ということが起こります。その結果、悪質なクレームや、無茶な要求を引き受けてしまう、ということがあるかもしれません。

他人からの評価というのは、自分を客観的に見つめる上で役立つものですが、それが常に「過去のあなた」に向けられたものである、ということには注意が必要です。あなた自身も、状況も、刻一刻と変わり続けています。

アコースティックギターの弾き語りスタイルで人気を得たボブ・ディランが、エレキギターを用いたロックにスタイルを変えた時、観客から大ブーイングを浴びました。

しかし、彼は、いくらブーイングを受けても、自分を「変える」ことをやめませんした。それはおそらく彼が、<他人からの評価>が、過去の自分に向けられたものであり、それを真に受けることがいかに、自分の表現活動において「毒」になりうるかということを、よく知っていたからだと思います。

他人からの評価というのは、それを受けた瞬間は、あなたに力を与えてくれる「薬」です。しかし、それはあくまで、その瞬間における「薬」であって、それが記憶に残ってしまえば「毒」として機能することがあるのです。

何を拠り所とすべきか


他人の評価に振り回されてはいけない。

そう思ってても、私たちはつい、他人の評価に敏感になってしまうものです。何の拠り所もなく、自分を貫く、ということはなかなか、出来そうでできないものなんです。

僕は「自分を貫く」ということができている人というのは、多分、人には見えにくいところで、強い拠り所を、ある種の「結界」として持っている可能性が高いと思います。

例えば、以前、俳優の高倉健さんは、あるインタビューで「母親に褒められたいから、俳優を辞めずに続けることができた」ということを話していました。僕はこの話を聞いた時、「高倉健さんほどの人でも、他人の評価が気になるんだなあ」と理解していました。しかし、それからかなり経ってふと、「あ、そうじゃないんだ」ということに気がついたんです。

高倉健さんのように、多くのファンの目に触れ、日常的にたくさんの「他人からの評価」にさらされる仕事をしている人は、そうした他者の視線から身を守るための、ある種の「結界」が必要です。高倉健さんにとって、お母様からの評価というのは、まさに「結界」だったのではないか、と思うのです。

高倉健さんにとって、お母様からの評価は、いつも同じ位置で動かない、北極星のような評価軸だったのではないでしょうか。ずっと子供の頃から自分のことを見ていた人からの視点を「気にかける」ことで、毀誉褒貶(きよほうへん/※)の激しい他人からの評価に右往左往しない軸を手に入れる。そういうことだったんじゃないか、と思うのです。

※ほめたりけなしたりすること。(goo辞書より)

他人を褒めるのは難しい


他人からの評価が、薬になることもあれば、毒となることもある。そういうことがわかってくると、安易に他人を評価したり、褒めるということの難しさがよくわかってきます。

よく、「部下の力を伸ばす声かけ」とか「褒めることで、やる気を引き出す」と言ったことが言われます。しかし、小さな子供に「できたね!」「すごいね!」と褒めてあげるのと、大人同士のコミュニケーションで、他人を適切に評価したり、褒めるということは、少し別だと私は思います。「相手の力を伸ばしてあげよう」という目的で「褒める」「評価する」ということは、少なくとも心理学的には、非常にハイレベルな取り組みなのです。

そして、安易に褒めることの怖さや、評価を伝えることの難しさに気づいた人は、自然と、周囲の人の言葉や評価に、振り回されにくくなります。評価や褒め言葉の「あてにならなさ」がわかってくることで、自分の軸を保ちやすくなるのです。

※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。