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2019年04月16日

【コラム】心には「伝わること」と「伝わらないこと」がある(名越康文)

名越康文 精神科医 心理 コラム タウンワークマガジン 夜間飛行

自分の気持ちを相手に正確に伝えたい。翻って、相手が伝えたいことや気持ちを正確に理解するにはどういう方法や心構えが必要なのか。TVなででおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)に答えていただきました。

「気持ち」や「思い」が伝わることはない

私たちはよく、「心が伝わる」とか「気持ちが通じる」という言い方をします。しかし、気持ちや感情というのは、残念ながら、直接的に伝わったり、通じあったりすることはありません。もちろん、言葉を介せばある程度、情報を伝えることは可能です。「私はいま、とっても怒っているんです!」といわれれば、まあ「ああ、この人は怒っているんだな」ということはわかりますよね(笑)。

でも、こちらの「気持ち」自体は、直接的には、相手に伝わってはいないんです。相手は、こちらの発した言葉や表情から「こんな気持ちなんじゃないかな」と想像しているだけです。それは、こちらの心の中にある気持ちとは全く違っているかもしれません。

逆に言えば、もしも口もきいていないのに、目の前の人が何を考えているか、何を感じているのかがわかる、という人がいたとしたら、それは十中八九、妄想だと思ったほうがいい、ということです。

では、何かが伝わったり、通じあったりするということの全てが妄想なのかというと、そういうわけではありません。気持ちや考えは、互いの心には伝わらない。
でも、心に伝わるものもある。それは「空気」や「雰囲気」です。

心に伝わるのは無意識レベルのメッセージ

名越康文 精神科医 心理 コラム タウンワークマガジン 夜間飛行
たとえば目の前の人が持っている「明るさ」とか「暗さ」、あるいは「こちらに関心を向けている」か「無関心」か、そういうことは、ある種の「雰囲気」として心に伝わるんですね。それは、科学的には証明することは難しいかもしれないけれど、こうしたものが心に「伝わる」ということは、感覚的、経験的には、みなさん同意されるんじゃないでしょうか。

この「空気が伝わる」ということを「思考が伝わる」ということとごっちゃにする人がいます。でも、僕の心理学では、ここは明確に線を引いておきたいんです。言い換えれば、心に伝わるのは、意識レベルではなく、無意識レベルの情報だという言い方をしてもいいかもしれません。

たとえば、イタリアンレストランを訪れて、看板や、窓ごしに見える店内を見ただけでも、「ああ、ここは雰囲気のいい店だな」ということは感じますよね。そういうことが、対人関係において、いつも起きている。

心が受け取っているのは、「値段がいくら」「一人前の量はこれくらい」「食べログの星がいくつ」といった表面的な情報ではなく、「なんとなく雰囲気がいい店だな」というような、無意識レベルの情報のほうなんです。

顔を見た瞬間に「あ、何かあったな」とわかる

名越康文 精神科医 心理 コラム タウンワークマガジン 夜間飛行
一番よく診療を行っていたころ、僕は日に30人くらいのクライアントと接していました。それくらいの人数になると、一人12、3分の診療が限界だったんですが、2週間に1度お会いするだけで、入ってきた瞬間に「あ、これは何かあったな」ということがわかるようになった。

こういうことを言うと「やっぱり名越先生は、相手が何を考えているかわかっちゃうんですね」という人がいる。でも、繰り返しますが、これは「気持ち」や「考え」が伝わっているからわかるわけじゃないんです。僕だって、相手が何を考えているかはわかりません。でも、会った瞬間に「いつもとは何かが違う」ということは、どういうわけか、伝わっているんですね。何か問題が起きたな、とか、今までとは違う流れに入ったな、ということがわかってしまう。

言語とは違う、無意識レベルのメッセージとして、心に伝わってくる「何か」がある。カウンセラーは、それを受信しないと、仕事にならないんです。

ただ、この無意識レベルのメッセージを受信するためには、ある程度、心が落ち着いた状態でいる必要があります。もしもカウンセラーが、1ミリでも前のめりに「この人を治してやるぞ」とか「この人の悩みを全部わかってあげよう」という思いを抱いていると、そういう無意識レベルのメッセージがことごとく伝わらなくなってしまうんですね。

常にニュートラルでなければ、無意識レベルの心の情報は、受け取れない。つまり、僕が繰り返し述べているように、波が静まった水面がさまざまなものを映し出すように、心が落ちついているときだけ、こういうメッセージを受け取ることができるのです。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
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