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2015年01月05日

人間は刺激にイゾンする生き物?

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テレビでおなじみの精神科医・名越康文(@nakoshiyasufumi)が心の悩みにズバッと答える! この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

価格が高いほどエステは「痛い」?

以前、とある人から「10万円以上のエステと10万円以下のエステをはっきり分けるのは「痛み」である」という話を聞いたことがあります。

「高いエステほど痛い」

これは、心理学的にも、非常に興味深い話だと思いました。

もちろん、痛いだけで効果がなければお客さんもつかないわけですが、高い料金を取って、お客さんに納得してもらうには、「痛み」があったほうがいいというのは、なるほどな、と思ったんです。

どういうことでしょうか? それは僕らがみんな「刺激依存症」であることと、関係しています。

みんな、傷つきたがっている?

僕らはみんな、本音のところでは「世界でいちばん傷つきやすいのは自分だ」と思っています。でも一方で、「傷つきやすさには個人差がある」というのもまた、実感でしょう。傷つくことによってすごく苦しむ人と、そこからぱっと明るく気分を切り替えることができる人がいる。

僕らの心はそもそも、何によって傷つくのでしょう。人間関係を筆頭に、いろんなことが思い浮かぶと思いますが、突き詰めると僕らは「刺激」によって傷ついているということがわかります。

刺激があるからこそ、僕らは辛かったり、悲しかったりする。もちろん、うれしかったり、楽しかったりすることもある。しかしいずれにしても僕らの心は常に、刺激によって動かされている。

問題なのは、「それがよい刺激なのか悪い刺激なのか」ということとはまったく無関係に、僕らの心は「刺激」を求めるということです。もっといえば、体や心に悪い刺激だとわかりきっていても、まったく刺激がない状態よりは、刺激があるほうを選択してしまいがちなんです。

心は刺激依存症

僕はいろんなところで瞑想をお勧めしています。それを聞いて「ちょっとやってみようかな」と思って取り組んでみる人はけっこういますが、ほとんどの人が必ずといっていいほど続かない。そこで「なぜ止めてしまったのか」と聞いてみると、瞑想がまったくうまくいかないから止めたというよりも、むしろ瞑想が少し上手にできだしてから、止めてしまっている人が多いんです。

不思議ですよね。

でも、これは「心が刺激を求める」という仮説に立つと、説明できるんです。瞑想がうまくいくと、心から刺激が減ります。そうすると心は「これはまずい」と大慌てで瞑想をやめさせようと、あの手この手で邪魔をしてくる。だいたい、こういうパターンで、瞑想を止めてしまうんだと思うんです。

それくらい、僕らの心は、刺激を渇望している。刺激がなくなることに対する恐怖心というのはかなり本能的なものです。だからこそ僕らは、無感覚の恐怖よりは悪い刺激で苦しむことを選ぶのではないでしょうか。

卑近な例でいえば、ネットの書き込みで悪口を書かれているのを1回見ると、もっと見たくなるということもあります。これ、見る前から「悪い刺激」ってわかりきってるじゃないですか。傷つくとわかっていてもなお、僕らは刺激を求める生き物なんです。

僕らの心は「もっと怒りたい」「もっと傷つきたい」と思っている。一言で言えば「刺激依存症」なんですね。

刺激依存症から抜け出すために

「高いエステは痛い」理由は、そうじゃないと、お客さんが納得しない、満足しないからだと思います。

おそらく、強い刺激を受けているとき、僕らの心はものすごく生きている「実感」を覚えるのでしょう。エステの場合でいえば、痛ければ痛いほど「納得の強度」は上がっていく。刺激が強ければ強いほど、生きる実感を覚えるんです。

だから、針を刺すとか、しみるとか、刺激が強いエステのほうが、高い料金を取っても納得してもらいやすい。

しかし問題は、そうやって刺激によって得られた「生きる実感」が本物かどうかということです。残念ながら、「単に心が刺激に振り回されているだけ」という可能性は高いわけです。

本当は、そんな強い刺激によって振り回されていない時のほうが、僕らは繊細に物事を感じ取ることができるし、何事においても高いパフォーマンスを発揮できるはずです。しかし僕らはついつい、より強い刺激を求めてしまう。

僕らが落ち込んだり、舞い上がって何か失敗をしでかしているときには、たいてい強い刺激によって心が揺さぶられているときです。にもかかわらず、僕らは強い刺激を受けることを好き好んで選ぶ。そうすることによって、静かな心の状態、本来の自分のありようから、どんどん遠ざかってしまうんです。

僕らの心が常に刺激を求めていること、言い換えれば、僕らの心は「傷つくことを求めている」という認識から出発することが、これからの時代、すごく重要になってくると僕は考えています。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。