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2020年02月28日

【コラム】いつも「情熱大陸」のカメラクルーに囲まれている自分を想像する(名越康文)

名越康文 精神科医 夜間飛行 メルマガ 悩み相談 タウンワーク townwork

社会の中で生きていくために「コミュニケーション能力」をもっとつけたい。多くの人が持つ悩みに対して、TVなどでおなじみの精神科医・名越康文先生(@nakoshiyasufumi)に答えていただきました。

志村けんさんのように場面場面で別のキャラを立てる

人とのコミュニケーションに自信が持てないという人は、僕の講座には必ず何割かいらっしゃいます。

もちろん、その人の持って生まれた気質として、それ自体が個性というところもあるし、それを受け入れるからこそ、開かれる人生もある。そのことは、メルマガの中で、何度も繰り返していることだと思います。

一方で、そうはいっても、社会の中で生きていくためには「コミュニケーション能力を強化したい!」という思いを持つのは自然なことです。

それで、ちょっとこれは高等戦術かもしれないけれど、紹介したいテクニックがあります。「志村けんテクニック」っていうんですけどね(笑)。

志村けんさんって、「天才! 志村動物園」とかに出てるときって、すごくシャイで優しいおじさんじゃないですか。でも、「バカ殿」のときは白塗りしたり、変なおじさんになったりするわけ。じゃあどっちが志村さんのイメージか、というと、どちらも志村さんなんですよね。

でも、ちょっと冷静に、目に見える部分で比較したら、まったくキャラクターが違うということに気がつく。

あれこそが、「キャラを立てる」っていうことだと思うんですね。たとえば、僕だってまったくレベルは違いますが、「キャラを立てる」ということをやっていると思うんです。「素の名越康文」は9種(※)でオランウータンですからね。あんまり人と明るく交流するタイプじゃないんです。でも、僕はいま、毎週のように人前で講演をするでしょう? そういうときは、かなり感情豊かにお話するキャラになっている。

※参考:http://yakan-hiko.com/gather/

つまりね、そういうときの「名越康文」は、スイッチが入っている状態で、素(スイッチ・オフの状態)じゃないんです。

そういう「別人格」みたいなものを作るっていうのが、実はコミュニケーション能力の、大きな部分を占めているんだなっていうことを、最近よく感じるんです。

「キャラを立てる」ヒントになる矢沢永吉さんの上京エピソード

たとえばね、最近矢沢永吉さんのYoutubeを観ていて「はっ」とさせられたことなんですけど、矢沢さんが「I Love You OK」という曲を出して、2年間まったく売れない時期があった。「ファンキー・モンキー・ベイビー」で大ブレイクしたけれども、キャロルが解散して、その後のバラード全然売れない。というよりもレコード会社は歯牙にも掛けない、どこへ曲を持っていってもダメ、という時にね、矢沢栄吉は思い出すんですね。

昭和30年代ですかね、広島から出てくるときに、広島市内からも出たことがないような高校生が、初めて東京に出ていく。その夜汽車の中で、「これに乗ったら東京だぜ!?」って思ったんだっていう話をされるんです。当時のことだから、まるで船で太平洋に漕ぎ出すような心境だったんですね、高校生の矢沢さんは。

で、おもしろいのが、その電車に乗っているときに、まるでドキュメンタリー映画を撮っているように「そういう自分自身を見ている自分」がいたっていうんですね。そのことを「矢沢、変だよね?」って笑っておられましたけど、まるでテレビのドキュメンタリーみたいに、高校生の矢沢さんを遠くからカメラが追っていて、「この日、青年・矢沢永吉は広島から出たのであった」みたいなナレーションが聞こえてくる感じだったそうなんです。

そう、まるでテレビの「情熱大陸」みたいにね。いつのまにか、物語の中の住人になっちゃっている。これって、「キャラを立てる」ときには、すごく大切なカギになるテクニックなんじゃないか、って思うんですね。

僕も、いろいろうまくいかないことが、いまでもたくさんあります。ライブの集客がかんばしくないときとかね。そういうときに、僕もナレーションが聞こえてくるんです。「このとき、名越は考えていた」みたいに(笑)。

どこかに、カメラのクルーがいて、苦境に立たされた自分を映している。そこにナレーションが加わって、物語化される。

カメラが回っているときの人格を作っていると、だんだんとそれが人前に出る時の人格になる

実はね、占い師のしいたけ.さんも、売れる前に同じことをやっていたんだそうですよ。

将来売れた時のに「実は、苦労したあの時のフィルムが残っているんですよ」とインタビューに答えている自分を想像する。原稿が終わらないときには、後ろにクルーがいて原稿を書いている自分を撮っていて、その後ろでは音声さんが集音マイクを持っている、というような場面をイメージする。

不思議なことなんですけどね、そういうふうに、自分をいつも「舞台」に乗せておくと、だんだんと「キャラクター」っていうものが形作られてくるんです。

「名越は、ライブの集客ができずに落ち込んでいた。しかし……」みたいにね(笑)。

そうすると、かなり冷静な気持ちになれますし、やる気が起きてくるんですよ。だってすべての瞬間は、ある未来のゴールへの過程だってわかるでしょ。一本の映画の途中シーンなんですよね。

そういう「情熱大陸」的な、カメラが回っているときの人格を作っていると、だんだんとそれが、人前に出る時のベースの人格になってくる。

そこに、メルマガでも何度も紹介してきたような、対人関係のトレーニングも重ねてみてもいいですね。たとえば朝の挨拶の時だけでも「おはようございます!」って上機嫌で挨拶する。これも、実は僕にとってはまさに「変なおじさん」であり「バカ殿」なんです。つまり、素の自分じゃなく、キャラクターなんですね。

別のキャラを演じるのは、うまく社会で生きていくための王道の方法かもしれない

TOKIOの「鉄腕ダッシュ」っていう番組があるじゃないですか。ああいうのは、参考になると思うんです。TOKIOのメンバーが何かいろんな作業をしていて、そこにマイクが向けられて、照明があてられてますよね。そういう感じで、自分の日々の取り組みを、仮想のカメラクルーに撮影してもらう(ようにイメージする)。そうすると、キャラができあがってくる。

これって、実はテレビに出るタレントさんだけじゃなくて、いろんな人がやっていて、密かに成果を上げている、王道の方法かもしれないな、と思うんです。たとえばよく地元のスーパーマーケットとかでも「ああああーーえいあーえいあー!!」とか独特の節回しで、店長さんがよくわからない言葉で威勢よく声を出してるじゃないですか(笑)。

あれ、店長さんの「素」の人格かといえば、そんなわけないでしょう? あれはあきらかに別キャラを演じているんです。別キャラを演じてるから、しっかりした、大きな声が出る。ジャパネット高田の高田社長なんかもそうでしたよね。甲高い声でキャラクターを作っている。

キャラクターを作るということによって、実は、社会の中で生きる上で、自分を楽にできるんじゃないか。そういう力が出てくるんじゃないかな、って思ったので、少しご紹介してみました。

 
※この記事は公式メルマガ「生きるための対話」よりお届けします。

企画:プレタポルテby夜間飛行

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精神科医・名越康文名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。著書に『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『Solo Time 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行、2017)などがある。 2019年より会員制ネットTV「シークレットトーク」を配信中。
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