「誰にでもやりたいこと=心のツボがある」ティモンディ高岸に聞く、夢の見つけ方
独特の言い回しと「やればできる」でおなじみのティモンディ高岸宏行さん。野球の名門である済美野球部出身で、プロ野球のスカウトもあったが大学時代にケガをして挫折。そこからお笑い芸人へと進路変更するまでの意識の変化や、新たな夢の見つけ方を伺いました。
野球でケガをした後、裏方を経験したことで“応援”の素晴らしさに気づいた
――今回は夢の見つけ方について伺いたいのですが、はじめに高岸さんご自身がプロ野球選手を目指した後、お笑いへの道に進まれた経緯を教えてもらえますか?
中学・高校・大学とプロ野球選手を目指していましたが、大学生の頃にケガをして断念しました。地元の愛媛県は、街全体が1つになって地域を盛り上げようという意識がすごく高くて、甲子園に出場した時も街の方たちや保護者の方たちが全力で応援してくれたんです。だから、ケガでプロ野球選手の夢を諦めた時に、今まで応援してもらったぶん恩返しをしたいと思うようになりました。それとケガをした後に裏方にまわったことでも意識が大きく変わりました。
――意識が変わったとは?
高校時代はまだ「自分がプロ野球選手になりたい」という思いだけで突っ走っていましたが裏方を経験したことで、自分がマウンドに上がるということは、そのポジションに立てない他の選手たちがいる。その1人1人を含めて全員でチームとして一丸となって絆を深めるのがスポーツであり、マウンドに立つ以外にも出来ることがある。それが応援だと気付きました。
――応援することが、お笑いへの道に繋がったのはどうしてでしょうか?
いくつかのきっかけが重なったのですが、まずは中学3年の冬に、M-1グランプリ(2007年)で当時は無名だったサンドウィッチマンさんが優勝されているのを見て感動しました。それを高校に入って相方の前田と話したことで意気投合したんです。その後、大学1年の春に起こった東日本大震災でサンドウィッチマンさんが復興支援をされているのを見て、みんなを元気にしたり勇気を与えられるお笑い芸人という仕事は本当に素晴らしいと感じて。野球でケガをして夢がなくなった時に、その全てがリンクしてお笑い芸人になりたいと思いました!
――そこで前田さんに声をかけたんですね。
はい。前田はいつも助けてくれて、僕にないものをいっぱいもっていますから、前田となら楽しく出来ると思いました。
――すぐに新しい夢に意識は切り替えられましたか?
もちろんケガをした直後は落ち込みました。でも、さきほどお話しした裏方として動いた1年があって、応援の大切さを改めて感じることで変化していきました。応援には色々な方法がありますが、目の前に対峙した相手の良いところを褒めること、その人自身が気づいていないかもしれない素晴らしい部分を伝えてあげたい。それが僕なりの応援なんです。
前田は僕にとってのヒーロー。2人で組めば夢の過程も楽しいという確信があった
――お笑い芸人を目指す際、成功するか分からない不安はありませんでしたか?
前田は僕にとってのヒーローなんです! 前田とチームとして一緒に夢に向かえていれば、その挑戦は成功や失敗に関係なく楽しいに決まっているということが、自分の中では確信できていたので不安はありませんでした。
――「成功する」ではなく、その過程も楽しめると。
はい。その過程にこそ楽しみとか喜びがいっぱい詰まっていますから。「やればできる」が高校の校訓で、僕自身も好きで言っているんですけど、「やれば成功できる」ではなく、「やればベストを尽くすことができる・挑戦こそ楽しいんだよ」という意味で発信しています。
――お笑い芸人を始めて、向き不向きを感じたことはありますか?
色んな試行錯誤がありました。自分を隠してカッコつけてみたり、芸人さんはこうだという理想像を描いてみたりと色々トライしたんですけど、そのたびに相方が「高岸の良いところはここだよ」と僕の良さを伝えてくれて今の形になりました。前田は「それはダメ」という否定的な言い方は絶対にせず、アドバイスをくれるんです。そうやって変化してきた中でも“みんなに勇気を与えたい”という信念だけはブレなかったので、どのトライも結局はプラスになっています。
――それでも、落ち込むこともあると思うのですが……。
誰だってトライする時には、“絶対にうまくいく”と思ってチャレンジするわけで、失敗しようと思ってやるわけじゃないですからね(笑)。でも僕は応援する側として、「失敗だったとしてもトライをしたから、それは成長なんです!」ということを伝えたい。それは僕自身にも言えることですし、落ち込んでも0.1秒で切り替えます(笑)。
お笑いに出会っていなかったら消防士という選択肢もあった
――上手くいかないことを、人や環境のせいにしてしまうことは?
誰かのせいにしても何も変わらないし、たとえば八つ当たりをしないようにコントロールできるのは自分自身だけだと思うんです。相手や環境に変化を求めるより、一番変化させやすい自身自身を成長させていくのが、より良い方法だと思っています。
――夢を追う過程で、お笑い芸人以外の道を考えたことはないのでしょうか?
愛媛のおじいちゃんが危篤になった時に、地元に戻って介護をしながら、知り合いのツテで消防士になろうと思ったことはありました。消防士は人のために働く素晴らしいお仕事ですよね! でも親戚が、介護のために帰ってくるのであれば今の夢を追い続けなさいと言ってくれました。消防士が嫌だったわけではなく、最初に衝動を受けたのがお笑いだったという。順番が違ったら結果は変わっていたかもしれません。
夢は選びたい放題! どんな小さなことも夢につながるキッカケになると思う
――その時々にやりたいことを見つけてきた高岸さんですが、夢を見つけるためのアドバイスをお願いできますか?
夢がないということは今から選びたい放題ということなんです!! 夢というと大きなものを想像しがちですけど、夢はどこにでも落ちているものだと僕は思っていて。たとえば「今日うどんが食べたい!」とか「◯◯に行ってみたい」も夢の1つなんです。食べることも挑戦ですからね。挑戦することが経験になって夢につながっていく。だから、まずは夢を見つけようと固くならずに、自分が好きなことや楽しいと感じることにトライして動いてみてほしいなと。
――夢が必ずしも職業を指すものではないと。
はい! その楽しいことやトライのどこかに、きっと心のツボがあると思うので、自分の心をどんどん押してマッサージしてあげる。ハンバーグが食べたい→食べる→他にどんなハンバーグがあるか調べて見る。それが職業につながっていくキッカケかもしれないですから!
僕の一番やりたいことは“みんなを応援すること”
――少し意地悪な質問になりますが、もしお笑い芸人を目指す時に、相方の前田さんがいなくても今の道を進んでいたと思いますか?
全然意地悪じゃないですよ、聞き出そうとしてくださるところが素晴らしいですから(笑)。前田がいなかったらですか!? そうですねぇ、前田がいなかったら……コンビでお笑いの道を目指すことはなかったかもしれないです。そう考えると、たまたまお笑い芸人に衝撃を受けて、たまたまヒーローとなる相方がいて夢が決まるのが早かっただけで、それがなかったら僕もまだ夢を探していたもしれないです。そうだとしたら僕もきっと、今お伝えしたように色々なところに行ったり経験をして熱中できるものを探していたと思います。
――さらに続けますが、お笑い芸人という選択肢がなくなったとしたら次の夢を見つけるためにどうしますか?
きっとお笑いがなかったとしてもメディアを通して、人を応援するサポーターになっていたと思います。僕は肩書きじゃなくて、何をしたいかが一番大事だと思っています。今の僕にとっては“みんなを応援したい”というのが一番やりたいことなんです。だから、お笑い芸人という職業がなくなっても、みんなの心にビタミンを送りたいと思えば、職業は“ビタミンを送る人”でいいんです。さらにキャッチフレーズを作るなら“歩くビタミン”でどうでしょう(笑)。
――職業さえ作ってしまうという素晴らしい発想をありがとうございます。
いえいえ。素晴らしいと感じる心が素晴らしいんです! 人から得るものは多くて、もし僕1人が真っ白な空間にいたら今の自分にはなれていないと思うので、みんなを応援したいですし、その過程で誰かが夢を見つけられたとしたらとても嬉しいです。今の僕がいるのはみんなのおかげ、みんなの高岸です!(笑)
高岸 宏行(たかぎし ひろゆき)
1992年10月8日生まれ 愛媛県出身。
野球の強豪校である松山市の済美高校に入学し、投手としてレギュラーを獲得。プロ野球からのスカウトも受けるが東洋大学に進学。大学でケガをし野球の道を断念。以降、済美高校でも同期であった、前田裕太とティモンディを結成。ゆったりとしたクセのある喋り方と、人に勇気をあたえる「やればできる」といった格言が多くの人の注目を集める。現在も最速150キロの豪速球をほこり、YouTubeチャンネル『ティモンディベースボールTV』を開設。
◆ティモンディ OFFCIAL SITE: https://grapecom.jp/talent_writer/timon-d/
◆高岸 宏行 Twitter:@Timon_Chan_
YouTube ティモンディベースボールTV:https://www.youtube.com/channel/UC7M5B6wHkVRtODeNK2Q7BmQ
企画・編集:ぽっくんワールド企画 撮影:河井彩美 取材・文:原 千夏
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ずば抜けた運動神経と頭脳明晰さを併せ持つティモンディ前田裕太さん。そんな表の顔がある一方で多彩な趣味を持つ趣味人でもあります。読書、サッカー、裁縫、ネイルなど、前田さんが趣味に出会ったきっかけからのめり込むに至るまでの経緯をお聞きしました。趣味がないと悩んでいる大学生はぜひ参考にしてみてください。