女優・広瀬アリスさんインタビュー「たくさん失敗してきたから今がある。あの頃があってよかったと、やっと言えるようになった」
明るい笑顔と飾らない人柄で人気の広瀬アリスさん。そんな広瀬さんの新年は、ドラマ「知ってるワイフ」から始まる。家事と育児に奔走するうち、次第にモンスター妻化していくヒロイン・澪(みお)をどんな思いで演じているのか、理想の夫婦の在り方、そして、26歳となった広瀬さんの仕事観をインタビューしました。
どんな関係性でも、「ありがとう」も「ごめんね」もちゃんと言葉にしないと伝わらない
――今回、演じる澪は大倉忠義さん扮する主人公・元春の妻で2児の母という設定ですが、出演のオファーがきた時の感想から聞かせてください。
これまで若くして子どもを産むという役柄はありましたが、子供がいて結婚している“お母さん”役は初めてなので、「あ、そういう年齢になったんだな」と思いました。1話の台本を読んだら、想像していた以上に壮絶な夫婦のやりとりが描かれていて、おもいっきりお芝居したいと思いました。
――2児の母を演じた感想は?
私は撮影の日、そのカットだけ、子どもたちをあやせばいいんですが、これが毎日続くとなると、世のお母さんはすごいなと痛感させられました。自転車の前と後ろにお子さんを乗せて走っている光景をよく見ますが、今回ドラマの中で私もそういうシーンの撮影をしました。めちゃめちゃ怖かったです。
――そんな澪は、夫に対してどんどん恐妻化していきますが、演じるうえで苦労したことや意識したことを教えてください。
澪はただ怒っているだけじゃないって、台本を読んでわかったんです。原作の韓国ドラマを拝見しましたが、私の役にあたる奥さんが奇声に近い声をあげていたことがとても印象的で、私もそれに近づけたいと思いました。喋るペースやトーンなども考えて、段取り、テスト、本番と合わせていったんですが、強烈なインパクトを残したかったので、おもいっきり怒鳴らせていただきました(笑)。怒りでモノを投げる時も、大倉さんめがけて投げていました。
――元春と澪の夫婦関係についてはどう感じましたか?
客観的にみて、もっとしっかり(気持ちを)言葉にしたらいいのにと思いました。「ありがとう」も「ごめんね」も「こうしてほしい」と思うことも、全部言葉にしないと伝わらないですし、「察して」はない。これは夫婦仲というより、すべての人間関係に通ずると思います。
もしタイムスリップできるなら……学生生活をしっかり過ごしたい
――元春が地雷に触れてしまったことで、澪は恐妻へと変化していきますが、広瀬さん自身の地雷はどんなことですか?
“人の話を聞かない”です。そんな時、私は相手が気づくまで、嫌味のようにずーっと大きな声で呼びかけます。バンっていきなり怒るより、追い詰めていくタイプ。普段、あまり怒ることがないぶん、私を敵にまわしたら厄介だと思います(笑)。
――どんな関係においても“地雷に触れないこと”は意識したいですね(笑)。劇中、元春がタイムスリップする場面が登場しますが、広瀬さんがタイムスリップするならどの時代へ戻りたいですか?
学生生活をもう一度しっかり過ごしたいです。中3からかなりの頻度で上京していて、卒業式前日まで東京で仕事をしていたので、もっと学生生活を楽しみたいです。
――ちなみに中学時代の一番印象的な思い出は?
体育の授業を受けている時、卒業アルバム用の写真を撮ってくれるカメラマンさんが来てくださったんです。でも、私は久しぶりに学校へ行ったので体操着を忘れてしまって、全然違う苗字が書いてある体操着でアルバムに写っているんです。それが中学の思い出です(笑)。
どんな仕事だって、やるんだったら楽しんでやりたいと心がけています
――中学生からこの仕事を始めたということですが、仕事をするうえで大事にしていることは何ですか?
どうせやるんだったら楽しくやりたいと、そこはいつも心掛けています。
――そう考えるようになったきっかけは?
以前、ハードなドラマの現場が1クール(3ヶ月)あって、その作品の主演の方はとてもお疲れだったと思うんですが、とてもフレンドリーにいろんな人に声をかけているのを見て、重い空気で過ごすよりも、楽しくみんなで「しんどいけど頑張ろうね」って言っているほうが心の負担が軽いということに気づきました。
――しんどさを感じている時、どんなふうに自分を鼓舞していますか?
やるしかないという気合いです。そして、やっていくにつれて、役柄が自分に染み込んでいくのがわかるので、その変化が楽しいです。
女優は泥くさい仕事だけど、達成感を得たくて続けている
――女優を一生の仕事と本格的に決意した時期やきっかけについて聞かせてください。
実はここ数年の話なんです。NHKの朝ドラ「わろてんか」に出演して、これで仕事のリズムが変わらなかったら、この先しんどいなって感じていたんですが、おかげさまで「よかったよ」という声をたくさんいただきました。
――女優業の醍醐味はどんなところでしょうか?
いろんな役になって、いろんな環境に飛び込んでいくことが楽しいです。正解がないお仕事なので悔しさを感じることもありますが、終わった後の達成感はなんともいえないものがあるんです。女優って、実は泥くさい仕事だと思うんですけど、その達成感を得たくて私は仕事を続けているんだと思います。
――泥くささのあまり、イヤになることも……?
毎回ですよ(笑)。撮影に入ると睡眠時間は短くなるし、忙し過ぎて、ワーッてなることもあるんですけど、終わったら不思議と忘れちゃうんです。なぜか楽しい記憶しか残って無くて、だから続けられるんだと思います。
失敗を恐れないことが大事。たくさん失敗したほうが後々強いと思う
――落ち込んだ時の対処法を教えてください。
よくネガティブな時は明るい音楽を聴いて元気になるというのがあると思いますが、わたしの場合はいっさい効果がないんです。落ち込んだ時はとことん落ち込むのが一番早いので、落ちるところまで一度落ちます。
――そんな広瀬さんを支えてくれる存在は何ですか?
私を癒やしてくれるワンちゃんです。「息子たち」って呼んでるんですけど、この子たちのために頑張ろうって思うんです。
――夢や目標に近づくため、奮闘している若い世代へアドバイスをお願いします。
失敗を恐れないことです。いっぱい失敗したほうが、後々強いと思うんですよ。泥くさく突き進んで、失敗したら失敗したでそこで学ぶ。また同じことをやってもいいと私は思っているので、それが大事なのかなって。
――広瀬さんもいっぱい失敗しましたか?
はい! もう数えきれないぐらい失敗してきました。「なんで?」という怒りなのか、哀しみなのか、そんな感情に苛まれる時期が長く続いたこともありましたが、今やっと「あの頃があってよかった」と言えるようになりました。
――いい30代を迎えるために、今は頑張る時なのかもしれないですね。
そうですね。今はがむしゃらに働こう、いろいろやってみようと思っています。
広瀬アリス(ひろせ・ありす)
1994年12月11日、静岡県生まれ。2009年、雑誌「Seventeen」の専属モデルオーディションでグランプリを受賞し、芸能界デビュー。主な出演作にNHK朝の連続テレビ小説「わろてんか」、「探偵が早すぎる」(日本テレビ系)、「トップナイフ 天才脳外科医の条件」(日本テレビ系)、「七人の秘書」(テレビ朝日系)など。「アナザースカイⅡ」(日本テレビ系)でMCを務めているほか、現在、公開中の映画「サイレント・トーキョー」に出演している。
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◆OFFICIAL Twitter:@Alice1211_Mg
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子