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2015年04月14日

日本の伝統産業を次世代につなげたい/株式会社和える代表取締役 矢島里佳さん

日本の伝統産業を次世代につなげたい/株式会社和える代表取締役 矢島里佳さん【私の仕事Lifeの転機】

日本の伝統産業の職人の技術を活かした赤ちゃん・子ども用品を企画・開発・販売する株式会社和える。同社の起業時、代表取締役の矢島さんは大学在学中だった。なぜ伝統産業なのか、なぜ子どもたちに向けて発信するのか。矢島さんの思いとこれまでの経緯をうかがった。
株式会社和える代表取締役 矢島里佳さん

矢島里佳(やじまりか)/東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科4年時の11年3月、株式会社和えるを設立。幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、子どもたちのための日用品を日本全国の職人とともにつくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。14年7月、初の直営店『aeru meguro』をオープン。

伝統産業×子ども。自分がやりたいことをできる就職先がなかった

子どもが持ちやすいようデザインされた、小石原焼のこぼしにくいコップ、肌にすっとなじむ本藍染のタオル、手漉き和紙のボール…。東京・目黒にある直営店『aeru meguro』には、日本全国の職人とともに作られた現代的なデザインの赤ちゃん・子どもの日用品が並ぶ。
「『こぼしにくいコップ』は、2歳児の小さな両手で持つときも、大きくなって片手で飲むときも持ちやすいようにと考えて作りました。幼いころから手になじんだコップで、大人になって親子でお酒を飲む…。 “ホンモノ”に日常的に触れて育ち、日本の昔ながらの伝統産業の魅力を知る人たちが10年後、20年後に今よりもっと増えてくれたらという思いで、aeruブランドを立ち上げたのです」と話す矢島さん。中学高校時代に茶華道部に入ったことから日本の伝統に興味を持ち、大学生になると自ら企画を持ち込んで全国各地の伝統産業の職人を取材して回った。その時に、日本の伝統産業に魅せられたことが起業のきっかけだ。
「職人さんたちはみんな熱い思いと高い技術を持っているのに、ものが売れない。過去30年で職人さんの数も3分の1まで減っていました。どうしてだろうと考えた時、私自身、幼少期に日本の伝統産業品に触れたことがないまま大人になっていたことに気が付きました。日本に生まれながらにして、日本の伝統を知らない世代が大人になっているのです。それならば、生まれたそのときから知ってもらえる環境を創出すればいいんだ。そう考えて、赤ちゃん・子ども向けの伝統産業品を作って、次世代に日本の伝統をつないでいこうと思いました。ただ、最初から起業しようと思っていたわけではありません。伝統産業×子どもという自分のやりたいことをやっている会社があればと就職活動もしましたが、めぐり合えず、それならば自分でやろうと思ったのです」

自分の起業アイデアを世に問おうと、ビジネスコンテストに応募

徳島県から 本藍染の 出産祝いセット

第一号商品の『徳島県から 本藍染の 出産祝いセット』。江戸時代からの手法で薬品を使わず染められており、肌にも優しい。「タオルを触った赤ちゃんが握って離さず、商品の質の高さにお父さまやお母さまが気づいてくださることもあります」

起業を思い立った矢島さんが踏み出した一歩は、ビジネスコンテストに応募すること。
「自分のアイデアが社会で通用するのかをまず試して、ダメならまた別の道を考えるつもりでした」
大学3年生の2月に「学生起業家選手権」に見事優勝。賞金50万円と、起業応援金100万円を得て、大学卒業を控えた2011年3月に株式会社和えるを設立した。
「東日本大震災の5日後に自分で登記申請をしました。起業応援金をいただける期日が3月末だったので、もともとこの時期にと決めていたのです。当時は会社を立ち上げたものの、商品を一緒に作る職人さんもデザイナーさんも決まっていませんでした」
起業後1年をかけて開発した第一号商品は、徳島県の本藍染で染め上げた産着、フェイスタオル、靴下が入った『徳島県から 本藍染の 出産祝いセット』。Webサイトでの販売を始めて商品数を少しずつ増やし、広報活動も地道に行ったものの、売り上げが大きくは伸びず、起業2年目には資金が底を突いてしまった。だが、「和える」のコンセプトに賛同してくれた知人から資金を借りるといった周囲の協力を得て危機を乗り切った。
「職人さんたちに支払いを待っていただいたこともあります。申し訳なくて、情けなくて、二度とこんな状況にならないようしっかりと経営をしようと心に決めました」

誰かのためにやることは続かない。自分が惚れ込んだからこそ経営危機も乗り超えられた

和える店舗

店舗は「和えるのお家」をイメージして設計。店舗スタッフには自分の家にお客さまを迎えるように接客するようお願いしている。「スタッフには、自分の言葉で商品の魅力を伝えてもらうようにしています」

経営が好転したのは、起業3年目を迎えたころ。朝のテレビ番組で商品が取り上げられたのをきっかけにメディアの取材が増え、売り上げも少しずつ伸びていった。起業4年目の2014年7月には念願の直営店『aeru meguro』もオープン。2015年秋には京都にも直営店を開く予定だ。
「経営面はまだまだ課題もありますが、現在まで続けられたのは周りの人たちに助けてもらえたから。会社というのは社会の役に立つ何かがある限り、ぎりぎりのところで助け舟がくるのかもしれません。きっと、社会の役に立っている間は続けさせていただけるのだと思いました。ただ、誰かのためにという思いだけでは実は続かない気がしています。私自身の原動力は本当にシンプルで、自分が伝統産業に惚れ込んだから。職人さんたちの技術や人柄、先人の知恵の深さや果てしなさ。そこに惚れ込んだからこそ、どんなことも乗り越えられてきたのだと思います」

ものを「売る」のではなく、「伝える」職人でありたい

「『和える』はものを売るのではなく、伝える職人でありたい」と矢島さんは言う。「ものづくりの過程を知る人が伝えてこそ説得力がある」という思いから、商品開発は職人、デザイナーとタッグを組んで必ずゼロから一緒に行う。伝統産業をテーマとした講演活動や職人の技を紹介するイベントの企画をしているのも、「伝えること」が自分たちの役割と考えているからだ。
「ただし、伝統産業ならすべてを伝えるべきとは思いません。私たちが伝えるべきものを選ぶ判断基準は、矛盾がないかどうか。妥協していないか。語るときに矛盾のあるものは、生まれてきても人々に愛されないと思います。逆に、これはと思うものは10年かけても、20年かけてもその魅力を伝えていきたい。気の長い話に聞こえるかもしれませんが、急がばまわれです。『和える』の商品で育った子どもたちが大人になり、新しい文化を生み出していってくれたら何よりも嬉しいです」
 

矢島さんの好きな言葉:三方よし
編集部より>>
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文:泉彩子/撮影:刑部友康