声優・前田佳織里さんインタビュー 「モットーは“人にやさしく”。先輩方に受けた恩を、いつか後輩へと受け渡したい」
テレビアニメ「老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます」(ABC・テレビ朝日)で、主人公のミツハが転移した異世界、ゼグレイウス王国で出会った第三王女・サビーネの声を担当している前田佳織里さん。作品への意気込みや、今作の主題歌で念願のアーティストデビューを果たした心境のほか、声優という職業への思いを聞きました。
サビーネは純粋無垢だけど、小悪魔的な部分ももっているお姫様
――物語は、事故で家族を失った少女・ミツハが、現代と異世界を行き来できる能力を突然もってしまうという内容ですが、前田さん自身が異世界へ転移したら、どのような行動に出ると思いますか?
いきなり異世界へ転移しちゃったら、まずパニックになると思うんですけど、とりあえず優しそうな人に声をかけて、泊めてもらうかもしれないです!
――道に迷ってしまった時、優しそうな人に声をかけることに近いですね。
私、道を尋ねられることがすごく多くて、特にお年寄りの方から話しかけられることが多いんですが、私も異世界に行ったら、まず出会った誰かに「助けて~」って頼み込むと思います。
――サビーネの印象を聞かせてください。
天使のような可愛らしさと純粋無垢な面をもちながら、実はちょっとあざとかったり、小悪魔的な部分があったりするんですけど、だからといって、腹黒さをまったく感じさせず、すごく自然に振る舞える女の子だなと感じました。自分から「〇〇やって」と言わなくても、相手に「この子のために何かをしてあげたい」と思わせ、「じゃあ、私がやりますよ」と人を動かす力を持っているような女の子ですね。
――天性の人たらしですよね。
ミツハも人たらしの部分を持っていると思うのですが、サビーネの人たらしと、ミツハの人たらしは、またちょっとタイプが違うんですよね。ミツハは、家族を亡くすなど大変なことがあった中で、たくさん考えた末に生きていくために努力をし、そうなっていったのかなって。だけど、サビーネの場合は生まれ持った周りの人を動かす才能というか、人を振り回すことも多いけれど、どこか憎めない女の子だと感じています。
主題歌で念願のアーティストデビュー!ターニングポイントのような曲に
――サビーネを演じるうえで意識したのはどのようなことですか?
天真爛漫な女の子ですが、王女様なので世間知らずなところがあって、ミツハと出会うまで知らなかった、庶民的なものに興味を抱く好奇心旺盛な部分をきちんと表現したいと考えました。あとは、彼女のあざとさが、作品を見てくださる方から決して悪い子に見えないよう、キュンとしていただきたいと思い、そのバランスを大事にしながら演じました。
――参考にしたキャラクターや人物などはいますか?
昔、飼っていたチワワがお姫様みたいな性格で、とても頭がいいワンちゃんだったんです。私よりも年上だったせいか、私の子守をしなきゃいけないと思っていたらしく、幼い私がどこかへ行こうとすると、吠えて止めてくれるようなワンちゃんでした。犬なのに、猫みたいに気分屋なところがあって、構わないと拗ねちゃう子でしたが、「この子のためなら何でもやってあげたい」と思わせるワンちゃんで、なんとなくサビーネちゃんと似ているんです。
――今回は、オープニング主題歌「光ったコインが示す方」を歌うことも大きなトピックですね。
そうなんです!この度、アーティストデビューすることになりまして、主題歌を歌わせていただく、大変光栄な機会にめぐり合えました。まずは、これまで応援してくださった皆様に感謝の気持ちを伝えたいですし、歌は私にとって原点なので、大きな夢がひとつ叶いました!そして、レコーディングの時から今までにない歌い方を模索するなど、新しい1歩をふみ出すことができた、ターニングポイントのような曲です。
――ミツハは一人で生きていくため、金貨を8万枚貯めることを決意しますが、前田さん自身が将来に備えて貯めたいものはありますか?
ぬか漬けってずっと保存できるものですか?永久に保存ができるのならば、毎日かき混ぜて、この世で一番おいしい最高級のぬか漬けを作りたいって考えちゃいました(笑)。と言いつつ、積み重ねたいものは、やはり人脈ですね。友だちは大人になると疎遠になってしまうこともあるけれど、大事にしていきたいです。人生って本当にたくさんの出会いがあります。一つ一つの出会いを大切に、心から信頼できる人や仲間との絆をどんどん蓄積していきたいです。
「前田さんがいると場が和む」という言葉に喜びを感じます
――声優の活動を始めて5年、仕事をするうえで大事にしているのはどんなことですか?
私は“人にやさしく”という言葉が大好きなんです。ドラマ「人にやさしく」(2002年・フジテレビ)のタイトルなのですが、あのドラマを見たことがきっかけで、人にやさしくすることって本当に大切だなと子どもながらに感じました。お仕事の現場において「前田さんがいると場が和む」と言っていただけると喜びを感じますし、いい行いをするとまわりも幸せになる。ですから、どんな時でも人にやさしく――そんな思いをもって仕事に向き合っています。
――「やさしくされた」、もしくは「やさしくした」印象的なエピソードはありますか?
親からも「人にやさしくするって大切だよ」と言われていましたし、私自身も誰かにやさしくしてもらって、感激したことが多々ありました。声優になりたての頃、うまくいかないこともたくさんありましたが、現場で何もできない私を助けてくださった先輩方がたくさんいて、そのたびに涙が出そうになるぐらい嬉しかったんです。「いつか恩返しがしたいです」とお伝えすると、「恩返しは自分にではなく、後輩にやってあげて」と言っていただくなど、素敵な先輩たちの背中を見てきたので、私もそうできる人になりたいなと思っています。
声優になると決意した後、人生設計の年表を作成
――素敵なやさしさのループが続いているんですね。多忙な日々を支える原動力は何ですか?
ライブが私の原動力です。作品において、以前は「前田さんにやらせてみよう」と挑戦的な意味で声をかけていただいていたのが、今は「ぜひ前田さんに」と任せていただくことがありがたいことに増えてきて。声のお芝居とステージに立つことは別ものだと思われがちですが、私はステージで得たものはお芝居に活かせる、お芝居で得たものはステージに活かせるという考え方なので、どちらもとても大切。ステージに立つ私を見て、ファンの皆さんが喜んでくださることが私の大きなパワーです。
――前田さんと同じように、夢や目標に向かって奮闘する若い世代へアドバイスをお願いします。
「声優になりたい」と考え始めた頃、何をどうしたらよいのかまったくわからなかったのですが、自分の人生設計の年表を作成した時に「何歳までにデビューしたいからその年齢までに何をして、そのためにはこのスキルが必要」などを逆算して、書き出しました。若輩者の私がアドバイスをすることはおこがましいですが、自分の過去を振り返って、「あの時、いろいろな作品にふれておけば。ゲームをやっておけば。もっと旅に行っていれば」ということがたくさんあります。自分の“好き”を増やすことが何かにつながるかもしれませんし、まったくの別ものだと考えていたことが、突然つながるケースもあると思うので、焦らず、好きなものを見つけていってほしいです。
前田佳織里(まえだ・かおり)
1996年4月25日、福岡県生まれ。「2016声優アーティスト育成プログラム・セレクション」でグランプリを受賞し、翌年、アニメ「100%パスカル先生」で声優デビュー。主な出演作に「アイカツスターズ!」(双葉アリア役)、「ウマ娘 プリティーダービー」(ナイスネイチャ役)、「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」(桜坂しずく役)、「フラ・フラダンス」(オハナ・カアイフエ役)、「おにぱん!」(桃園桃役)など。
◆Official Site:https://maedakaori.jp/
◆Official Twitter:@kaor1n_n

「老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます」
(ABC・テレビ朝日系)
1月7日(土)スタート
18歳でありながら、中学生に見られてしまう童顔小柄な少女・ミツハは、両親と兄を事故で失い、天涯孤独に。ショックによる大学受験失敗、両親の保険金を狙う輩。進学か就職か、家の維持費や生活費など、数々の出費に頭を抱える。これからの生活に悩んでいたミツハはある日、謎の存在から「こちらの世界」と「異世界」を行き来できる能力を与えられる。そこから彼女が思いついた将来設計は、二つの世界で10億+10億の合計20億円<8万枚の金貨>を貯めるというものだった。
公式サイト:https://roukin8-anime.com/
©FUNA・講談社/「ろうきん」製作委員会
編集:ぽっくんワールド企画
撮影:井野友樹
取材・文:荒垣信子