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2023年08月31日

声優・八代拓さんインタビュー 「人は誰かに頼り、甘えながら生きている――そう思うことで自然と責任感が生まれる」

八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork放送中のテレビアニメ「るろうに剣心 ―明治剣客浪漫譚―」(フジテレビ)で、喧嘩屋“斬左”こと相楽左之助の声を担当している八代拓さん。もはや国民的といっても過言ではない人気作品に挑んだ心境やキャラクターの魅力を聞いたほか、八代さんの転機となった出来事、普段どのような思いをもって声優という仕事に取り組んでいるのかを伺いました。

 

“チーム剣心”は、程よい緊張感と和やかな雰囲気に包まれている

八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork――まずは出演が決まった時の心境から聞かせてください。

長く愛され続けているこの「るろうに剣心」への出演が決まってとても嬉しかったのですが、多くのメディアミックスで展開されている作品ですので、さて僕はどう左之助を演じようという、これまで経験したことのないプレッシャーを感じました。

――左之助は3話からの登場でしたが、どんな反響が届きましたか?

SNSではファンの皆さんから「今日から登場したね」というコメントをもらい、両親からは「見てるよ」と連絡がありました。僕は岩手県の出身ですが、岩手でも放送されていることが嬉しかったですね。「るろうに剣心」は歴史ある作品ゆえ、当然いろいろな意見がありますが、曲がったことが大嫌いな左之助のごとく、僕が迷ってはいけないという心境でとらえています。

――緋村剣心役の斉藤壮馬さん、神谷薫役の高橋李依さん、明神弥彦役の小市眞琴さんとの共演について聞かせてください。

他の作品でも仕事をしたことがある方々ということもありますが、わりと早い段階から“チーム剣心”みたいな一体感がありました。やはり座長である壮馬くんの存在が大きいと思います。グイグイという感じではないのですが、自然と彼の背中に気持ちを預けられるような安心感があって、その船に高橋さん、小市さんと僕が乗っているという感覚。現場では程よい緊張感と和やかな雰囲気に包まれながら収録をしています。

 

原作の先生からいただいたお手紙が、左之助を演じる心の支えに

八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork――左之助を演じるうえで意識しているのはどのようなことですか?

左之助は男性の僕から見てもカッコよく、ニヒルな笑い方や鋭い目つきから生まれる色気、シブさみたいなものもあり、ついそちらに引っ張られそうになりますが、冷静に考えてみたら、まだ十代後半。時代の違いはありますが、経験値もまだ浅いでしょうし、脆い部分もあると思うので、十代後半ならではの弱さみたいなものも怖がらずに表現しないといけないと思いました。ストーリーと共に、彼も成長していけばという思いで臨んでいます。

――今作は原作者の和月伸宏さんが完全監修として携わっていることも話題ですね。

原作の先生は、収録にもリモートで参加してくださり、僕ら声優にとって、これほど心強いものはありません。役を演じるうえで正解があるとすれば、それは先生の中にあるものですので、声優としてチャレンジしたいことはあれど、一番には先生が描くものを表現したいという思いです。収録が始まって間もない頃のイベントで、黒碕薫先生(北海道編でストーリー原案を務める)からお手紙をいただき、キャラクターへの思いと声優陣への気持ちが丁寧に綴られていて、もし、自宅で読んでいたら間違いなく泣いていました。そのお手紙が今も左之助を演じる際の心の支えです。

――今作が長く愛されている理由、作品の魅力はどんなところにあると思いますか?

もちろん、物語の面白さや魅力的なキャラクターなどたくさんの要素がありますが、長く愛されているということに着目すると、時代は違っても言葉がまったく古くなっていないという部分が大きいと思います。どの時代にも悩める人はいて、剣心たちの時代も、僕らが生きている現代もそう。戦いの最中に剣心がかける言葉って、鋭い中にも温かみがあって、かつ、芯を喰っているんですよ。そして、悩んでいる人や迷っている人の心に空いた穴へと的確に突き刺さる。剣心の言葉選び、伝え方、物事の見方は一生色あせないものだと思います。

 

尊敬する先輩の番組と、教育実習の選択を迫られ……

八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork――これまでの活動において、転機となった出来事があれば聞かせてください。

現在の所属事務所に、以前、森久保祥太郎さんという最も尊敬している大先輩がいらっしゃったのですが、事務所に所属して2年目の時、森久保さんの番組のアシスタントの話をいただいたんです。当時、僕は大学4年で教職過程を取っていて、1ヶ月間の教育実習に行かなければいけない時期で。教育実習へ行くとアシスタントの仕事はできない。事務所も「実習へ行っていい」と言ってくれましたが、その時に「代わりはいくらでもいるんだな」と気づいて。迷いに迷いましたが、自分の欲求に素直になろうとアシスタントの仕事を選びました。

――当時の選択について、今、どのような思いがありますか?

森久保さんとの仕事で学ぶものも多かったですし、その後、森久保さんがかつてDJをされていた深夜のラジオ番組をやらせていただくことになり、そこでまた素敵なディレクターさんとの出会いもあり、人生観が変わるぐらいの学びがありました。ふと、教育実習を選択していたらどうなっていたのだろうと考えることはありますが、後悔はまったくありません。今、考えるとあの選択が僕の転機だったのだと思います。

 

いつか訪れるであろう熱量との出合いを大切にしてほしい

八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork――普段、仕事をするうえで大事にしているのはどんなことですか?

まずは、自分が仕事をさせていただいていることへの感謝。そして、忘れないようにしているのは人に甘えているし、頼っているということです。何事にも真摯に取り組むことは大前提としてあって、その中で例えば、作品が生まれている理由、収録ができている理由、どの瞬間も誰かに頼っているし、甘えているから成り立っているんですよね。その心構えを常にもっておくと、自然と責任感が生まれますし、いつでも初心に戻れます。

――そう考えるに至ったきっかけがあったのでしょうか?

以前、ラジオで人生相談のコーナーをやっていた時に、リスナーから「人に甘えることができない」というメールでの相談があって、確かに自分一人で進めたほうがラクだし、誰にも迷惑をかけずに済むと思ったのですが、「ちょっと待てよ、人はそもそも誰かに頼って生きているはず。甘えられないってあるのかな?」とふと疑問に感じて。もちろん、甘える度合いはケースによって違うと思いますが、誰しも一人で生きてきたわけではないし、誰かを頼らずに生きていくのは無理なこと。リスナーに向けて喋りながら、僕自身「そうだよな」と納得することがとても多く、いろいろなことに気づかされました。

――現在の原動力は何ですか?

今、仕事がなくなってしまったらどうなるんだろうっていうぐらい、仕事が僕の原動力です。時には苦しいこともあるけれど、楽しいし、飽きない。いろんな感情を体験できる充実した日々を送っているので、すべてのモチベーションは仕事ですね。

――八代さんが教育実習に行くかどうかで迷ったように、将来について悩みを抱える世代へアドバイスをお願いします。

まだまだアドバイスできるような人間ではありませんが、自分の経験からすると、不思議なほど熱量がわく瞬間ってあると思うんです。僕の場合は声優になりたいと思っていたけれど、地元に養成所がなく、検索したところ、東京にあることがわかって即、資料を取り寄せました。あの時の行動力は、今振り返ってもすごいなと感心するものがあります。

――勢いって大事ですよね。

中には、熱量にまだ出合っていないという人もいるかもしれませんが、そういう皆さんには、いずれ訪れるかもしれない熱量との出合いに備えて、いろんな人に会ってみるとか、いろんな場所へ行ってみるとか、自分の手が届く範囲で行動してほしい。自分の心を刺激することで、熱量を感じとれるアンテナを養うことが大事だと思うんです。僕もかつて出合った熱量に感謝しているひとりなので、そんな出合いを大切にしてほしいです。

八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork

■Profile
八代拓
(やしろ・たく)

1月6日、岩手県生まれ。2013年より活動を開始。現在放送中のテレビアニメ「ポケットモンスター」(テレビ東京系/フリード役)、「アンデッドガール・マーダーファルス」(フジテレビ系/真打津軽役)に出演中。9月1日(金)公開の映画「ホーンテッドマンション」(ベン役)、9月15日(金)公開の劇場アニメ「アリスとテレスのまぼろし工場」(笹倉大輔役)、9月30日(土)スタートのテレビアニメ「め組の大吾 救国のオレンジ」(読売テレビ・日本テレビ系/斧田駿役)、10月2日(月)スタートのテレビアニメ「鴨乃橋ロンの禁断推理」(AT-X、TOKYO MXほか/シュビッツ・ファイア役)に出演する。

◆Official Site:https://www.vims.co.jp/talent_profile_detail.php?id=15
◆Official X(旧Twitter):@yashiro_taku
◆Official Instagram:@taku_yashiro_official

■作品情報
八代拓 声優 インタビュー タウンワークマガジン townwork
フジテレビ“ノイタミナ”
「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」
毎週木曜24時55分~

毎週金曜正午からPrime Videoにて先行配信
毎週月曜正午から、他配信サービスにて順次配信

公式サイト:https://rurouni-kenshin.com
公式X(旧Twitter):@ruroken_anime

©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」製作委員会

編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子

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