俳優・西垣匠さんインタビュー 「春になったら25歳！何があっても動じない、余裕のある大人になりたい」

「３ヵ月後に結婚する娘」と「３ヵ月後にこの世を去る父」の姿を描いたドラマ「春になったら」（カンテレ・フジテレビ系）で、奈緒さん演じる主人公、瞳の結婚式を担当するウエディングプランナー・黒沢健に扮している西垣匠さん。この作品を通して感じた“生と死”や結婚について、さらに、話題作への出演が相次ぐ西垣さんが、俳優という職業にどんなふうに向き合っているのかを直撃しました。

黒沢同様、僕もキャパは狭いです（笑）

――「春になったら」もいよいよ終盤です。黒沢くんを演じてきた感想を聞かせてください。

ここまで瞳さんと一馬（濱田岳）さんが結婚式を挙げる、挙げないというやりとりが続き、６話でついに黒沢の感情が爆発してしまう場面がありましたが、お客様に見せる顔と、先輩の舞衣（橋本マナミ）さんの前で見せる顔は違うだろうと考え、そのギャップを表現することが今作で挑戦してみたいお芝居だったので、演じていてすごく楽しかったです。

――黒沢くんがプンプンしている様子が「かわいらしい」とネットニュースになっていましたね。

本当ですか！？　６話の出演はその１シーンだけだったので、そうやって話題にとりあげていただけることはとても嬉しいです。

――その場面で舞衣さんから「キャパが狭すぎる」と一蹴されていましたが、西垣さん自身のキャパはどうですか？

僕自身、すごくせっかちで、まわりからも「めちゃめちゃせっかちだ」と言われます。例えば、観たい映画があったとして、自分だけだったら最も近い上映時間の回に即行って、観られるじゃないですか。だけど、友だちと行くのなら、何時にどこで待ち合わせして、この回の上映を予約するなどとやりとりしなければならない。その時間が苦手なんです。だから、黒沢と同じようにキャパは狭いかもしれません（苦笑）。

――結婚式場で働いている黒沢くんだけに、かっちりとしたファッションが新鮮です。

前髪を上げているので視界が良好です（笑）。昨年の10～12月に出演した「時をかけるな、恋人たち」（カンテレ・フジテレビ系）でもスーツを着た役柄でしたが、ヘアスタイルが違うことで僕の気持ちも新鮮ですし、プロデューサーさんから「雰囲気がまったく違うね」と言っていただけて、自分でも気に入っています。

終盤は黒沢の成長に注目してほしい

――本作は、死に向かう雅彦（木梨憲武）さん、人生の門出を迎えようとしている瞳さんと一馬くん、命の誕生に立ち会う瞳さん、最期を送り出す岸（深澤辰哉）くんと、様々なシチュエーションが描かれていますが、作品を通して思うこともあったのではないでしょうか。

自分の家族がそのような状況にあるわけではありませんが、雅彦さんを通して「もし、父が同じような状況になってしまったらどうしよう」と考えたことはありました。結婚については、同級生や友だちで結婚する人たちもチラホラ出てきた状態で、正直まだ実感はわきません。でも、今まで想像したこともなかった“生と死”や未来について考えるきっかけになったので、この作品に携わることができて本当によかったです。

――タイトルにちなんで「春になったら」したいことはありますか？

今、ちょうど「土曜はナニする？」（カンテレ・フジテレビ系）内のコーナー、「イケドラ」の撮影をしていまして、その中で車を運転するシーンが登場したので、春になったらお花見ドライブに行ってみたいです。

――毎回、感動の物語が展開されていますが、クライマックスは号泣必至ですね。

７話で黒沢と雅彦さんが初めて対面し、彼も人として、そして、ウエディングプランナーとしてどんどん成長していきます。最終話の台本はまだいただいていないので、結末がどうなるのかわかりませんが、瞳さん、雅彦さん、一馬さんらの生き方から何を感じとれるか、僕自身も楽しみです。

25歳までに俳優で食べていけなかったら辞めようと思っていた

――大学生の時に芸能活動を開始した西垣さんですが、卒業時に芸能の道へ進むか、それとも就職するか、迷いはありませんでしたか？

就活のエントリーシートも書いていましたし、どちらに進むべきかかなり迷いましたが、今、諦めてしまったら後悔するのはどっちだろうと考えた時に俳優業がどうしても頭から離れなくて、チャレンジしてみようと思って飛び込みました。

――まわりが就活に励む様子を見ながら、考えることもあったのではないでしょうか？

当時の僕は、焦りは正直ありませんでした。芸能の道に進んで、ダメだったらしようがないと思っていましたから。その時、自分の中で期限を設けたんです。というのも、まだ“一人前の俳優”にもなっていないのに、この仕事で生きていくと決めるのは時期尚早、そういう覚悟はもっと先に進んでからでいいと考えたので。25歳までにこの仕事だけで食べていけなかったら、俳優を辞めて、改めて就活すればいいという心境でした。

――俳優業においての転機について聞かせてください。

180度ガラッと変わるというより、自分の中で少しずつ変化しているといいますか、作品ごとに毎回、転機になっている気がします。「もっとこういうことをしたらよかったな、こういうふうにもできたな」と、その都度新たな発見があって、中でも、ドラマ「みなと商事コインランドリー」（テレビ東京）と、舞台「薔薇とサムライ２－海賊女王の帰還－」の存在は大きいです。

――「みなと商事…」は人気のBLドラマで、「薔薇とサムライ」は天海祐希さんや古田新太さんら豪華キャストとの共演でしたね。

「みなと商事…」という作品は多くの方が愛してくださり、パート２まで制作することができましたし、パート１でつくり上げた土台があるうえで、自分の演じた役がどんなふうにより成長していけるか試されているようなプレッシャーもありました。「薔薇とサムライ」は初めての舞台で、錚々たる先輩方に囲まれながら、毎日たくさんのことを勉強させていただいたので、お芝居に向き合う姿勢など変わったと思います。

「楽しいから現場に行きたい」という気持ちがモチベーション

――仕事をするうえで大事にしているものは何ですか？

まずは楽しむことです。自分が楽しみながら仕事をしていないと、その作品を見てくださる方たちは楽しんでくれないと思うので、試行錯誤しつつ、一生懸命に役作りすることを念頭においてやっています。

――季節が春になったら、25歳の誕生日を迎えますね。どんな大人になりたいですか？

いやぁ、早いですねぇ（笑）。どんな大人……キャパの広い大人になりたいです。狭すぎますからね、僕も黒沢も（笑）。余裕って、大人の色気みたいなものにつながると思うんです。何があっても動じないといいますか、「いいよ、いいよ」みたいに受け流せる余裕。焦らない、慌てふためかない、そんな人がカッコいいですね。

――現在の原動力は何でしょうか？

先ほどお話したことと同じになってしまいますが、現場が楽しいから（仕事に）行きたいと思うんです。新しい台本をいただいた時には「よし、頑張ろう！」と意欲がわいてきて、それがモチベーションになる。「今日はこういうことができたらいいな、どういう発見があるのかな」と想像しながら現場に向かう……の繰り返し。そのワクワクが原動力です。

――夢や目標に向かって奮闘する同世代の皆さんへメッセージをお願いします。

これは僕の個人的な考えなのですが、今、全力で頑張ったら叶えられるのが目標で、どう頑張っても手が届かないものが夢だと捉えています。そして、努力に努力を重ねて目標を成し遂げられた時には、かつて遠い存在だった夢が目標へと変わっている。夢をもつことはすごく大事だけれど、夢をゴールとするのであれば、その途中にある目標に向かって、ひたむきに努力することが、結果的に夢を叶えることにつながるのではないでしょうか。一緒に頑張っていきましょう！

編集：ぽっくんワールド企画
撮影：河井彩美
取材・文：荒垣信子