役者・声優／岩田陽葵＆小泉萌香インタビュー「自分が自分らしくいられることが、夢を目指す上で大切だと思います」

三国時代の天才軍師・諸葛孔明が、現代の渋谷に転生するという斬新なストーリーが話題の『パリピ孔明』が舞台化。孔明と二人三脚でミュージックシーンを駆けあがっていく歌手志望の月見英子を演じる岩田陽葵さんと、英子と路上ライブで出会い、親交を深めていく“ななみん”こと久遠七海を演じる小泉萌香さんにインタビュー。作品への意気込みや、声優アーティストユニット・harmoeとしても活動するお二人に、普段、どのような思いで仕事に向き合っているかを尋ねました。

英子とななみんを一緒に演じられることがすごく楽しみ

――まずは出演が決まった時の感想から聞かせてください。

岩田：話題になっていることはもちろん知っていましたが、その時点ではまだ原作コミックスやアニメを見たことがなく、出演が決まって見てみたら、面白いのはもちろんのこと、胸にぐっとくるようなシーンもあって、出演がさらに楽しみになりました。同時に、私が演じる英子ちゃんはとても歌がうまいという設定なので、「この役を私が演じるんだ」というプレッシャーも感じました。

小泉：アニメやドラマだけではなく、知っている方が劇中のナンバーを歌っていたり、「踊ってみた」動画が話題になっていたり、いろいろなところに『パリピ孔明』が広がっているなと感じていましたが、その作品にまさか自分が出演することになるなんて、かなり驚きました。ビジュアル撮影では、スタッフさんから「ななみんに似てる」と言っていただけて、嬉しくもあり、皆さんの期待を超えられるかなという不安もあり…。でも、最後まで楽しみながら演じたいです。

――今作での共演を知った時はどのような心境でしたか？

岩田：ななみんをもえぴ（小泉萌香）が演じると知った時はピッタリだなと思いました。英子とななみんは路上ライブを通して知り合い、徐々に大事な関係性になっていくので、そんな２人を一緒に演じられることがすごく嬉しいです。

小泉：はるちゃん（岩田陽葵）とは７年ぐらい前にある作品を通して出会い、もはや家族のような、姉妹のような間柄なので、実はそれ以外の作品で共演していなかったということをすっかり忘れてしまっていたんです。関係が近いからこそ、どうなるのか逆にわからなくて、さらに今回は親友であり、ライバルのような役柄でもあるので本番が楽しみですね。

――岩田さんは小泉さんが七海を演じることについて、小泉さんは岩田さんが英子を演じることについて、役柄との共通点なども含めて聞かせてください。

岩田：ななみんは物語後半のキーパーソンとなる役柄で、英子の前で見せる姿と、自分の意志ではないけれど、アーティストとして世間に出ている姿とのギャップに苦しんでいる。そんなところを見て、「頑張れ」って応援したくなるような人物だなと感じました。さっき、もえぴがビジュアル撮影の話をしましたが、ななみんの扮装をしているもえぴを見たら「その服、家から着てきた？」というぐらい馴染んでいて、ななみんそのものでした。

小泉：英子ちゃんはすごく歌が上手なのに、人に聴いてもらえる場所がないという悩みを抱えていますが、孔明と出会ったことで本来の明るさを徐々に取り戻していきます。はるちゃんも、そこにいるだけで場を明るくしてくれるパワーの持ち主なので、英子ちゃんというキャラクターを通して、はるちゃんの魅力を見せてくれるんだろうなって思いました。

演出と脚本を手がけるNON STYLE石田明が描く世界観を表現したい

――NON STYLEの石田明さんが演出と脚本を手がけることが話題の一つですね。

岩田：石田さんが脚本と演出を担当されると伺った時から「絶対に面白い作品になるぞ」と、期待しかなかったです。台本ではセリフのかけ合いがすごくテンポよく進んでいて、思わずクスッてしてしまう場面がたくさんありました。主人公の孔明を演じられるのがユーモアあふれる藤田玲さんですし、オーナー小林役はなだぎ武さん。私は、芸達者なお二人とのシーンが多くなると思うので、必死に喰らいついていきたいです。

小泉：NON STYLEさんの漫才をめっちゃ見ていたので、まさかこんな形でご一緒できるとは思ってもいませんでした。漫才と舞台の台本とではまったく違うと思いますが、コミカルなシーンとシリアスなシーンとの差を楽しみたいです。

――タイトルにちなんで最近の“パリピ”エピソードがあれば聞かせてください。

岩田：もえぴとharmoeというユニットを組んでいるのですが、結成３周年の記念日に昔のライブ映像を見ながら自画自賛するという打上げをしたんです。ライブをしている本人たちが「ここのもえぴ最高！」みたいにノリノリで自分たちのライブを楽しんでいて、その瞬間はパリピでしたね（笑）。

小泉：最近、犬を２匹飼い始めた友人がいまして、まだまだ子犬なので何にでもはしゃいで、何にでも喜んで走り回っている姿を見て、思いっきり楽しみました。というのは、私はカエルを飼っていて、「今、暑いのかな？　寒いのかな？　楽しんでいるのかな？」などの感情がいっさいわからないので（笑）、子犬の感情表現を見ながら「いいなぁ」って。帰宅した瞬間に玄関まで走って迎えに来てくれるなんてたまらないですね。

転機は2人が出会うきっかけとなった作品のオーディション

――普段、仕事をするうえで大事にしているのはどんなことですか？

岩田：当たり前のことですが、心身ともに健康でいることです。10代の頃は多少寝ていなくても「全然いけるぜ！」みたいな感じだったのですが、20代後半を迎えた今、睡眠をきちんととっていないときつくて。昨年は腰を痛めたり、体調を崩したりすることもあって、今まで以上に体調管理をきちんとしなければと改めて実感しました。“元気があれば何でもできる”じゃないけど、心も体も元気じゃないとダメなので、そこを一番大事にしています。

小泉：ごくシンプルなことですが、何でも楽しむことを意識するようにしています。私は仕事とプライベートの境目があまりないタイプで、楽屋のテンションのまま、アフレコや舞台、ライブなどの本番に向かうことが多いんです。それがいいことなのか悪いことなのか、人によってさまざまだと思いますが、私にとってはそれがラクで。お休みも楽しいし、仕事も楽しい、人生を楽しく生きられるようにと日々頑張っています。

――これまで経験した人生の転機について聞かせてください。

岩田：大学2年生か3年生の頃、周りは就活を始めたり、インターンに通ったりしている中、私は作品のオーディションになかなか受かることができず、進路についてすごく迷っていたんです。そんな時に「今度ダメだったら諦めよう」と臨んだオーディションに合格し、その作品でもえぴ（小泉萌香）とも出会うことができました。あの時があったから今の私があると思うので、そこが大きなターニングポイントになったんじゃないかな。

――周りを見て焦ることもありましたか？

岩田：もちろん焦りましたし、私も就活相談所みたいなところへ行ったんです。それこそ『パリピ孔明』の英子ちゃんと同じように、「このまま夢を追い続けていいのだろうか」という葛藤を抱えていました。

――そんな時に自分を支えてくれたものを何でしたか？

岩田：やっぱりお芝居が好きで諦めたくないという気持ちが大きかったですね。あの時の自分に「頑張ってくれてありがとう」と言いたいです。

小泉：私もほぼほぼ同じなのですが（笑）、転機は私も同じく、はるちゃん（岩田陽葵）と出会った作品のオーディションに合格した時期ですね。私は関西出身で、大阪の大学に通っていたのですが、芸大だったので演技や声優の勉強もできる特殊な環境下だったんです。周りは俳優や声優を目指している人ばかりで、就活を考えている人も少なかった。そんな中、私は大学１年の時に現在の事務所に所属することになったので、皆より一歩先に行っていると感じていて。その頃にオーディションに落ちまくっていたら、多分芸能界を諦めていたのではないかと思います。

大好きな人たちと共有する時間が原動力

――ユニット活動を通して受けた影響や変化について聞かせてください。

岩田：ありがたいことに、今、アニメなどの声のお芝居だけでなく、今回のような舞台作品やアーティスト活動などいろいろなジャンルのお仕事をさせていただいていて、すべて影響を受けているのですが、アーティスト活動において“表現する”ということについては、日々勉強だなって実感しています。

小泉：私は声優業だけではなく、舞台作品に出演することも多かったんですけど、harmoeとして活動を始めてからはアニメのエンディング曲を歌わせていただくなど、アニメ作品に携わる機会がぐんと増えました。そこからのつながりで声優さんの知り合いがどんどん増えていき、より充実しているなと感じています。

――現在の原動力は何ですか？

小泉：大好きなお酒と誰かと過ごす時間ですね。基本的に人といることがすごく好きなので、仕事終わりに行く食事とか、舞台の打上げとか、美味しい食事とお酒をいただきながらみんなで過ごす時間が、作品を最後まで駆け抜けるためのパワーになっています。

岩田：私も気のおけない仲間と過ごす時間が好きで、舞台ではいろいろな方たちと一つの座組になって、同じ目標をもちながら作品をつくり上げていくその時間が特に大好きです。同じ思いを共有できる仲間がいるから、頑張ることができています。

――夢や目標に向かって奮闘する皆さんへアドバイスをお願いします。

岩田：まだまだアドバイスなんてできる立場ではありませんが、後悔しないような行動をとってほしいなと思います。夢を諦めなかったから今の私があるのですが、世の中には諦めずに追いかけ続けても、目標にたどり着けないということだってある。安易に「諦めないで」と言っていいのかなという思いがあるんですけど、それでも自分が一番いいと思える道を選択してほしいです。その道を突き進むもよし、新たな道を探すもよし、一番は自分が自分らしくいられることが大切じゃないかと思います。皆さんの可能性は無限大だと思うので、楽しみながらチャレンジしてほしいです。

小泉：世の中は運と縁でできていると私は思うんです。生きていると、「こんなに頑張ったのにどうしてうまくいかないんだろう」という理不尽なことも少なからずあります。努力が実を結ぶこともあれば、実らない時もありますが、それはこの世の摂理だと受け止め、どこに運が落ちているのかわからないので、人とのご縁を大切に突き進んでいってほしいです。

編集：ぽっくんワールド企画
撮影：河井彩美
取材・文：荒垣信子