松本わかな（アンジュルム）インタビュー「得意なことを伸ばすことで、人と比べてしまうこともポジティブに考えられるようになった」

幼い頃から「ハロー！プロジェクト」に憧れていたという松本わかなさん。2020年にオーディションに合格し、9期メンバーとしてアンジュルムに加入。高校生となった2023年には「発酵食品ソムリエ」の資格を取得するなどバイタリティ溢れる松本さんに、グループ加入当時のエピソードや、発売したばかりの両A面シングル「初恋、花冷え/悠々閑々 gonna be alright!!」の制作エピソードについて伺いました。

自身のパートをガムシャラに歌うことで新たな表現が出来た新曲「初恋、花冷え」

――両A面シングルとなりますが、楽曲を受け取った時の印象から教えて下さい。

アンジュルムは今まで強い女性像や、カッコいい路線の曲を歌うことが多かったので、切なさや儚さのある「初恋、花冷え」は新鮮でした。「悠々閑々 gonna be alright!!」は、自分自身がわりとキチキチとした性格なので、「ゆったりした」という意味のあるタイトルや、歌詞の「どうにかなるよ」などという言葉を受けて、気負わず楽しく歌おうと思いました。

――「初恋、花冷え」のレコーディングはいかがでしたか？

演奏の音数が少なめなのでリズムや息使いに気を使いました。ただ、私は落ちサビの部分を担当しているのですが、そこだけは「リズムを気にせず主人公になったつもりでエモく歌ってみて」と指示を受けたので、何も考えずにガムシャラに歌ったら「感情的で良かった」と褒めていただけて嬉しかったですし、新しい挑戦にもなりました。

――それぞれ、MVも公開されていますが撮影時のエピソードを教えて下さい。

「初恋、花冷え」はCGを使ったMVだったので、実際にはいない蝶を目で追いかけたりとイメージを膨らませながら撮影しました。でも、照明も雰囲気があって世界観には入りやすかったです。

――両A面の2曲はツアーでも披露されているんですよね。

はい。「悠々閑々〜」は、メンバーとアイコンタクトが取りやすかったり、ファンの方とコール＆レスポンスが出来るところがあって、ライブですごく盛り上がるので楽しいですね。「初恋、花冷え」は、切なさのある楽曲なので、ライブではしっとりとした雰囲気になると想像していましたが、イントロからファンの方の掛け声があったのが意外でした。でも、イメージを超えるという意味で、ファンの方たちと作っていけるライブの魅力を改めて感じました。

――そして、Additional Trackには「うれしいのにね、泣けちゃうわ」が収録されています。

イントロからウキウキするメロディが特徴的な可愛らしい曲で、振り付けもキャッチーですね。ダンスに「嬉しい」という手話が入っていたり、悲しさとか喜びなどをコミカルに表情でも表現しています。3曲とも全く雰囲気の違う楽曲になっているので、楽しんでもらえたら嬉しいです！

ダンスの「振り入れ」に苦戦した加入当時、好きだったことも楽しめなくなっていた

――ここからはお仕事との向き合い方について伺えればと思います。この仕事を目指したきっかけから教えて下さい。

小さい頃から「ハロー！プロジェクト」が大好きで、3〜4才の頃からDVDでライヴ映像を見ていました。少し大きくなってからは、ダンス映像を見て練習をしたり、カラオケで歌ったりして、いつか自分もアイドルになりたいと思うようになりました。

――中学2年生で加入して今年で5年目を迎えられますが、活動を始めたばかりの頃はどんな感じでしたか？

全てにおいて手探り状態で、当時の記憶がほぼないくらい目の前のことをこなすのに必死でした。オーディションで加入させてもらったので、基礎的なことも分かっていなくて、挨拶や礼儀的なことまで先輩に教えてもらったり、真似しながら覚えるという感じで毎日が勉強でしたね。それに加えて、当たり前のことですが、楽曲を覚えたり振り付けの練習があってすごく大変でした。

――なかでも苦手だったり難しかったことはありますか？

ダンスの「振り入れ」が苦手でした。加入する前からダンスバージョンの動画を見て振りは覚えていたのですが、実際に教えていただく時は鏡を前にして踊るので、覚えていた振りが全部逆向きで「どっち!?」と戸惑ったりしましたね（笑）。それに、自由に真似していた時は、動画を何度も巻き戻してスローにしたり、自分の好きなところだけを覚えたりしていれば良かったのですが、新曲の振り入れは先生に教わったことを、その場で覚えていくので、それが難しかったですね。今まで楽しんでやっていたことが、その頃は全然楽しめなくなっていました。

「継続は力なり」ひたすら練習を続けた時間で学べたことは多いです

――全員が一斉に教わるんですね。

そうなんです。先輩たちがすぐに覚えていくなかで、どんどん置いてきぼりになっていく。先輩からは「慣れていけば振り覚えも早くなるし、みんなが通る道だから」と励ましてもらいましたが、「本当に自分は先輩たちみたいに早く覚えられる日が来るのかな」と思ってしまうくらい慣れなくて。でも、リリースを重ねるたびに、少しずつ覚えられるようになっていきました。

――ご自身座右の銘「継続は力なり」にも繋がりますね。克服するためにしていたことはありますか？

とにかく練習をしました。家に帰ってから夜中まで一人で動作を確認して覚えての繰り返しでしたね。でも、やっと覚えても、次の日に新しい振りが入ってくると、また分からなくなってという日々で、あの頃にはもう戻りたくないです（苦笑）。でも、あの時間があったからこそ得られたことも多かったと思っています。

頑張るためのコツ「ここでもうちょっと頑張ったら明日の自分が報われるかもしれない」

――グループで活動していると、メンバーと比べてしまうこともあると思うのですが、そんな時はどうしていましたか？

今でも比べてしまうことはありますが、それをネガティブには捉えなくなりました。もちろん足りないところは努力しますが、それ以外の自分の得意なことだったり、個性を伸ばそうと考えるようにします。そうやってポジティブに捉えられれば、比べることも悪いことではないように思えるんです。

――すごく達観されていますね！

ありがとうございます。でも、ネガティブになって「何をしても自分はダメだ」と落ち込こむこともたくさんあります。そんな時は、今は落ち込む時期だけど、きっと1週間後とか、数ヶ月後はもうちょっとポジティブになっているだろうと考えるようにしたり、「やらない後悔」がイヤなので、何かしらに挑戦します。疲れた日も、今日はすぐに寝たいなと思った時に「ここでもうちょっと頑張ったら明日の自分が報われるかもしれない」と思うと、もう少し頑張れたりするので。

それと、ブログを毎日更新しているのですが、ファンの方からのコメントに力をもらうことも多いですね。直接お会いして話せるわけではありませんが、私にとってはコミュニケーションとなる大事な場所ですし、自分が頑張ることによって誰かが認めてくれたり、その方自身も頑張ろうと思ってくれる。それを知ると、自分が落ち込んでいても良いことはないなと思えるんです。

「練習で出来ないものは本番でも出来ない」大切にしている先輩からのアドバイス

――多忙な日々だとは思いますが、昨年は「発酵食品ソムリエ」の資格も取得されていますね。

高校生になったら何か１つ資格を取ろうと決めていました。もともと料理が好きなので、いつか料理に関する仕事もしたいのですが、ただ「料理が好きです」というよりは、なにか強みがあったほうがいいと思ったのもありますね。でも、使命感というよりは、知識を増やすという意味で楽しく取り組むことが出来ました。

――では、周囲の方からもらったアドバイスで大事にしていることはありますか？

卒業された竹内朱莉さんの言葉なのですが、加入して2年目くらいのリハーサル終わりに、加入したばかりのメンバーが呼ばれて、本気でリハーサルに取り組んでいたのかを聞かれました。そこで、頑張っていたつもりでも「そうじゃないかも…」と少しでも思ってしまった自分がイヤで、甘えていたことに気がついたんです。「練習で出来ないものは本番でも出来ない」という言葉にもハッとして、それからはリハーサルの段階から本気で取り組むようにしています。

――最後に、改めてこの活動を通して大事にしていることを教えてください。

グループで活動していることもありますが、自分は1人ではないということを忘れないようにしています。支えてくれるファンの方や、力を貸してくれているスタッフさんがいることは当たり前ではないですし、音源をリリースすることや、ライブが出来る環境に感謝して、１つ１つの事に丁寧に取り組んでいきたいと思っています。

企画・編集：ぽっくんワールド企画　撮影・NORI　取材・文：原 千夏